インドの仮想通貨市場はどうなる|全面禁止?仮想通貨を採用?

インドの仮想通貨市場を振り返る

世界2位の人口を誇る超大国インドは2020年現在、13.53億人が暮らしているが、インド中央銀行と政府は、仮想通貨に対して保守的な考えを持ち、市場の成長に歯止めをかける法律の導入も検討している。

今回、約13億人という大国が仮想通貨市場に対してどのようない影響力を持ち、現状の法整備や仮想通貨に対する見解を示しているか振り返っていく。

インドは仮想通貨に対して消極的

まず初めに、インドにおける仮想通貨の立場について。

インドの中央銀行であるインド準備銀行(Reserve Bank of India=RBI)は2018年4月、同国の金融機関および、仮想通貨関連サービスを提供する事業者に対して、仮想通貨に関連したサービスの提供を一切禁止する通達を発表した。この禁止令の背景には、租税回避やマネーロンダリングへの対策、セキュリティ、テロ資金などを踏まえた国民および事業者に対する安全性を保護することが目的である。

だが当然、市場関係者はこの仮想通貨に関する規制に対して再三の異議を申し立てたが、限界な規制方針を曲げることはなかった。もちろん、この規制は仮想通貨取引所にも影響を与え、実質的な「仮想通貨取引の禁止」がインドをはじめ全世界に広まった。

2018年4月時点の禁止対象

  • 取引口座の維持・登録
  • 仮想通貨の取引・決済
  • 仮想通貨売買に関する口座開設&資金移動

しかし、仮想通貨に関するの禁止令が通達されたものの、仮想通貨自体の取引量は依然として増加の一途を辿っていた。実際に発表直後、ビットコインの平均取引量は、5,250ドルから9,270ドルに大幅上昇。

この増加の要因について、インドの仮想通貨取引所BuyUcoinのShivam Thakral CEOは以下のように述べている。

政府の規制措置によって、国内の銀行を介して仮想通貨が取引できない場合でも、仮想通貨対仮想通貨の取引プラットフォームで取引することはできる。
新たな投資家が我々の取引所に参入しており、仮想通貨価格が上昇するにつれて、既存の投資家も利益を取り戻し始めています。

インド国民にとって仮想通貨は「重要な存在」

このように市場の投資家は、仮想通貨に対して前向きな姿勢を貫いている。そもそもインドにおいてビットコインや仮想通貨は重要な交換手段であることを忘れてはいけない。

事実、世界銀行は、2019年に海外労働者が自国に送金した受取額の国別ランキング(引用元:https://www.jetro.go.jp)によると、インドが822億300万ドルで世界トップの送金金額を誇っている。もちろん国民が多いことも要因であるが、それだけ海外送金に対する需要があることが見てわかる。

表 在外労働者が自国に送金した受取額の国別ランキング(2019年)

つまりインドでは、24時間365日 送金可能かつ、大量の資金を最低限の手数料で送金できるビットコインや仮想通貨の需要が高いことは明白である。

また昨今の新型コロナウイルスの影響により、リモートワークやインターネット環境下における作業が多くなることから、仮想通貨への関心も高まっており、自身のパソコンやスマートフォンを使用した送金の需要は増加の一途を辿っている。

規制の手を緩めないインド政府・銀行

2018年10月:インド仮想通貨取引所Unocoin共同創設者が逮捕

インドで初めて仮想通貨ATMを商業施設に設置した仮想通貨取引所Unocoin(ウノコイン)の共同創設者Harish Bv氏が2018年10月、逮捕された。その理由は、インドにおける仮想通貨の取引の促進を違法に行ったことが要因となっている。

2019年4月:インド政府が仮想通貨取引の全面禁止を検討

2019年4月、インド政府が仮想通貨取引を完全禁止する草案を検討していることが報じられた。これは「あらゆる種類の暗号通貨の販売、購入および発行」という内容であったが、実際には全面禁止までは至らなかった。報道時点では、経済省(DEA)、中央直接税委員会(CBDT)、中央間接税および税関(CBIC)、投資家教育保護基金局(IEPFA)を含む委員会によるフィードバックに基づいて行われていた。

2019年7月:インド省庁間委員会が、仮想通貨の全面禁止を提案

2019年7月、インドの省庁間委員会(IMC)は、国内においてすべての仮想通貨(それに関わる全て)の全面禁止を提案した。この提案は、あらゆる形態で仮想通貨の販売、保持、マイニングなどに関わった場合、1年から10年の懲役刑、最高2億5000万ルピー(約3.6億円)の罰金という厳しい罰則が科せられるというものだった。

【転換期】インド中央銀行の仮想通貨禁止命令を撤回

ここまで仮想通貨ユーザーおよび、投資家に対して厳しい姿勢を見せてきたインドだが、2020年に突入し、大きな転換期を迎えた。

インド最高裁判所は2020年3月、インド準備銀行(RBI)が事実的に仮想通貨を禁止した命令について、この制限を撤回するように要請したのだ。これは前述した2018年4月6日のインド準備銀行による、インドでの仮想通貨取引を事実上禁止の完全撤回である。

そして現在、インド最高裁判所の要求によって、これまで制限されてきた事業者やプロジェクトは、仮想通貨の取引に関して個人または事業体の取引やサービスなどができない状況であったがそれが覆った。実際に2018年4月の禁止令はインドに存在する法律では仮想通貨を正式に禁止できず、正式なルールや法律が定まっていなかった。

インド中央銀行の仮想通貨禁止命令を撤回

2020.03.04

それでも諦めないインド中央銀行|仮想通貨全面禁止を検討・計画

インド最高裁判所によって事実的に禁止されてきた仮想通貨サービスの提供だが、インド準備銀行(RBI)は2020年3月7日、インド最高裁判所が要請したRBIの事実的な仮想通貨を禁止する命令の撤回について「再審」するよう計画していることが報じられた

またこの報道の3ヶ月後となる2020年6月には、インドが仮想通貨を全面的に禁止する法律を検討していることが、地元メディアによって再び報じられた。これはインド省庁間で協議された後、内閣で法案を議会へ提出される見通しである。もし法律が成立した場合、仮想通貨の保有や売却、さらには譲渡でさえ違法になるという。

しかしこの検討は本当に法的に採用されるかもしれない。2020年8月4日、インド政府当局の匿名関係者はインド政府の2省と、インド準備銀行が、仮想通貨を禁止する法的枠組みに積極的に取り組んでいることがまたしても報じられた。この取り組みは前回の検討同様に、仮想通貨取引を禁止する法律を通過させる準備を行い、電子情報技術省、法務省および、インド準備銀行(RBI)の間で、仮想通貨を禁止する法律の枠組みに関する協議が始まっているというものだ。

匿名の関係者によると、「仮想通貨取引関連企業と、取引する銀行のためのRBIからの全面禁止のような方法より、違法性を明確に定義する」と語っており、インド国内はもちろん、仮想通貨界隈全体で、批判の声が相次いでいる。

インド政府、仮想通貨解禁に向け踏み出すも再度全面禁止法案の検討か

2020.08.06

仮想通貨市場のインドに向けた動き【国内外】

  • 仮想通貨取引所クラーケン、インド市場に参入へ
    米国を拠点とする大手仮想通貨取引所であるクラーケンは、仮想通貨取引サービスに関するインド市場での事業を拡大する予定であることを明らかにした
  • バイナンス、インドのブロックチェーン企業を支援する基金設立
    世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスとインドの暗号通貨交換WazirXは、インドでのブロックチェーンスタートアップの開発と成長をサポートすることを目的とした共同イニシアチブを発表した。
  • 仮想通貨取引所OKEx、インドでの取引所サービスを開始
    マルタを拠点とするデリバティブ取引所であるOKExは、インドの仮想通貨市場に注目し、取引手数料ゼロでピアツーピアの仮想通貨取引所をインドに立ち上げたことを発表した。
  • リップルCEO「インドの豹変にがっかり。新興産業を阻害している」と批判
    リップル社のBrad Garlinghouse(ブラッド・ガーリングハウス)CEOは、「インド政府の仮想通貨取引を禁止する新しい法律を導入計画」に関する記事をツイッター上で引用し、インド政府の仮想通貨取引に対する対応について、失望をあらわにした。
  • インド仮想通貨利害関係者、解禁を避けた新たな規制枠組みを提案
    BuyUcoin(バイユーコイン)率いるすべてのインドの仮想通貨取扱い業などに関連する企業関係者が集まり、インドで初となる仮想通貨を規制する最初のフレームワークを提案した。

今後のインド仮想通貨市場は?

ここまでの内容をベースにすると、「インド中央銀行&政府 vs インド最高裁判所」という構想になっている。

また、電子情報技術省、法務省、インド準備銀行などが、仮想通貨取引の禁止に向けた法律について協議を行っていることから、執筆時点(2020.10.8)でインドの仮想通貨に対する規制や法整備は、報道ベースではあるが、全面禁止になる可能性が非常に高い。

インド国内外の仮想通貨に対する需要は十分であり、関連するサービスを提供する事業者によって生み出される税収や雇用増加が見込まれる反面、マネーロンダリングやテロ資金の懸念は完全に払拭できないため、規制や法整備によって事業者と国の両意見が採用されることを願うばかりである。

ABOUTこの記事をかいた人

NEXTMONEY

NEXT MONEY運営です。 「話題性・独自性・健全性」をモットーに情報発信しています。 読者の皆様が本当に望んでいる情報を 日々リサーチし「痒いところに手が届く」 そんなメディアを目指しています。