米国、ロシアのランサムウェア関連仮想通貨取引所とルーブル建てステーブルコイン発行企業に制裁

米国がロシアの仮想通貨取引所とルーブル建てステーブルコイン発行企業に制裁を科すイメージ

米国がGarantexとその後継Grinexを標的に制裁

OFAC(米国財務省外国資産管理局)は、ロシアの仮想通貨取引所Garantexと、その後継とされるGrinexに制裁を科した

両取引所はランサムウェア攻撃などの違法取引に関与していたとされ、米国の国家安全保障を脅かす存在とみなされている。

Garantexは2019年に設立され、Conti、LockBit、Black Basta、NetWalkerなどの脅威グループに関連する1億ドル(約146.8億円)以上の取引を処理していた。2022年には重大なマネーロンダリング(資金洗浄)対策違反でライセンスを失い、制裁対象となった。その後も活動を継続し、2025年3月には米シークレットサービスが同社サイトを押収し、約2,600万ドル相当のUSDTが凍結されている。

閉鎖直後に設立されたGrinexは、凍結資産を元顧客口座に戻すためにロシアルーブル連動のステーブルコイン「A7A5」を導入。このトークンは、モルドバの実業家イラン・ミロノビッチ・ショア(Ilan Mironovich Shor)氏とロシア国営防衛銀行Promsvyazbank(PSB)が共同所有するA7 LLCによって発行されており、OFACによって新たに制裁対象に加えられた。

A7A5は2025年にキルギスでローンチされ、ルーブル建てステーブルコインの中で最も利用される存在へと急成長した。オンチェーン分析会社のレポートでは、送金総額は最大412億ドル(約6兆円)、時価総額は約5億2,100万ドル(約765億円)に達している。取引はGrinexやMeerを中心に、TRONやEthereum上の分散型取引所でも流通している。OFACはA7 LLCや子会社、さらに発行に関与したOld Vector LLCも制裁対象に指定した。

国際的な制裁回避対策の強化

今回の制裁には、Garantex共同創業者セルゲイ・メンデレーエフ(Aleksej Besciokov)氏や最高商務責任者アレクサンドル・ミラ・セルダ(Aleksandr Mira Serda)氏を含む幹部が名指しされた。セルダ氏はマネーロンダリングや制裁違反などの容疑で米司法省に訴追され、バージニア州の裁判所は逮捕状を発行している。

依然逃亡中の同氏に対して、米国は最大600万ドル(約8.8億円)の報奨金を提示している。幹部の一人アレクセイ・ベシオコフ(Aleksej Besciokov)氏はインド滞在中に逮捕された。

関連企業とウォレットの指定

制裁リストにはロシアとキルギスに拠点を持つ関連企業6社や複数のウォレットアドレスも含まれる。

OFACは、制裁対象団体に関連するビットコイン(Bitcoin/BTC)、イーサリアム(Ethereum/ETH)、トロン(Tron/TRX)のウォレットアドレスも併せて記載。米司法省はドイツおよびフィンランド当局と共同で、Garantexに関連する複数のドメインを凍結している。さらに、分析企業はGrinexとGarantexで同一の運用インフラが使われていると指摘し、両者のつながりが裏付けられた。

国家安全保障と業界への影響

米国財務省は、ロシアがウクライナ侵攻後の経済制裁を回避する手段として仮想通貨の利用を強めていると警告している。

特にテザー(Tether/USDT)が容易に凍結されることから、A7A5のようなルーブル建てステーブルコインが代替手段として利用されてきた。今回の制裁はこうした流れを封じる狙いがあり、単なる個別の執行ではなく国際的な制裁回避網を断ち切る広範な取り組みの一環とされる。関係者は、仮想通貨を悪用した資金洗浄やランサムウェア活動は国家安全保障を脅かすだけでなく、合法的な業界全体の信用を損なうと強調している。

雪の中に埋もれたテザー(USDT)コイン。テザーによるロシアの仮想通貨取引所ガランテックスでのUSDT凍結を象徴するビジュアル。

テザー(Tether)、制裁対象のロシア取引所ガランテックスで2,700万ドルのUSDTを凍結

2025.03.07

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム