インターポールへの赤色通告要請の背景
アルゼンチンの弁護士が、仮想通貨リブラ(LIBRA)の作成者ヘイデン・デイビス(Hayden Davis)氏に対し、インターポール(国際刑事警察機構)へ赤色通告の発行を要請し、仮想通貨業界の法的措置として注目を集めている。
デイビス氏は、Kelsier Ventures(ケルシアーベンチャーズ)のCEO(最高経営責任者)を務め、リブラの作成に深く関与した人物だ。検察官は、彼が逃亡する可能性があるとして、拘束の必要性を強調している。
地元メディアの報道によれば、グレゴリオ・ダルボン(Gregorio Dalbon)弁護士は、リブラの投資家数千人に影響を与えたとして、デイビス氏の身柄確保を求め、インターポールに赤色通告を提案した。同弁護士は、クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernández de Kirchner)元アルゼンチン大統領の汚職事件の弁護も担当した実績があり、今回のリブラ事件でも、同様に強硬な姿勢を示している。
ミレイ大統領との関係と投資家への政府の対応
ダルボン氏は、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領の妹カリーナ・ミレイ(Karina Milei)氏がリブラ創設に関与している可能性があると指摘。事件は政治的な側面も帯びている。
リブラはソラナ(Solana)ベースのミームコインとして注目を集め、2025年2月14日の発行直後、ミレイ大統領がXで言及したことで急騰。最高時価総額は40億ドル(約5,953.8億円)を超えた。しかし、その後数時間で急落し、多くの投資家が損失を被った。
このスキャンダルは、アルゼンチン政府にも波紋を広げており、ミレイ大統領の支持が計画的なものだったのか、それとも彼自身が騙されたのかが議論の的となっている。また、デイビス氏がミレイ氏に金を払い、大統領にX上でリブラに関する情報を拡散させたとするメッセージが流出。しかし、デイビス氏は支払いを否定し、記録も残っていないと主張している。
仮想通貨業界に与える影響と今後の展開
本件により、仮想通貨規制の強化が進む可能性がある。アルゼンチンでは近年、詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)対策として規制を強化しており、今回の赤色通告要請もその流れの一環と見られる。
当局は既に1億ドル(約148.8億円)相当の仮想通貨を凍結し、資金の動きを監視している。インターポールがダルボン弁護士の要請を承認すれば、デイビス氏は加盟195カ国で逮捕される可能性がある。ただし、レッド・ノーティス自体は逮捕令状ではなく、各国が対応を判断することになる。
デイビス氏の資金移動と批判
調査によると、デイビス氏は3月上旬に複数回の資金移動を行い、仮想通貨を法定通貨へ換金したとの報告がある。
また、リブラチームはMeterora poolを通じて手数料収益を得ており、既に2,100万ドル(約31.2億円)の利益を獲得。さらに500万ドル(約7.4億円)の請求可能な残高があると報告されている。
voidzilla『the LIBRA interview(日本語訳:リブラインタビュー)』より動画引用
※動画は全編英語で放映されており、日本語訳が必要な場合は、画面右下に表示されている「字幕」アイコンをクリック。次に、右隣に表示されている「設定」アイコンをクリックし、表示されたメニューの中から、「字幕」⇒「自動翻訳」⇒「日本語」の順に設定する事で、大まかな日本語訳が表示されます
リブラ事件はアルゼンチンの金融・政治情勢を揺るがしており、投資家の損失、政府の対応、デイビス氏の動向が今後の焦点となる。この件についてデイビス氏は、YouTuberスティーブン・フィンデイゼン(通称コーヒージラ)とのインタビューで次のように擁護。
リブラは詐欺ではなく、失敗したプロジェクトだった
しかし、彼とKelsier Venturesはリブラの発売で1億ドル近くの利益を得たことが判明しており、批判の声は収まっていない。