Coinbaseデラウェア離脱しテキサスへ再法人化 企業移転の新たな潮流に

テキサス州旗とCoinbaseロゴが並ぶビル街の風景。Coinbaseのテキサス再法人化を象徴する画像。

デラウェア州の法的不安定を背景にCoinbaseがテキサスへ移転を決定

米国最大級の仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)は、長年法人登記地としてきたデラウェア州を離れ、テキサス州で再法人化する計画を明らかにした。

日本語訳:
今日コインベースはデラウェア州を離れ、テキサス州で再設立することを決定しました。この決定は決して軽々しく下したものではありません。お客様、従業員、そして株主の皆様にとって最善の策を常に講じていきます。

事業運営や株式の取引形態は維持したうえで、法的予測可能性とガバナンスの安定性を確保するための判断とされる。

デラウェア州の法環境への信頼低下と企業流出の連鎖

コインベースはSEC(米国証券取引委員会)への届出で、デラウェア州からテキサス州への登記地移転を示した。

背景には、デラウェア州衡平法裁判所による近年の不安定な司法判断がある。同裁判所は長らく迅速かつ一貫した企業紛争処理で評価されてきたが、役員報酬制度をめぐる注目判決などを通じて判断の予測可能性が揺らいだとされる。

象徴的な事例が、大手電機自動車メーカーのTesla(テスラ)のイーロン・マスク(Elon Musk)CEO(最高経営責任者)の巨額報酬パッケージを無効とした2024年の判決である。この判断は企業側の警戒感を強め、a16z(Andreessen Horowitz;アンドリーセン・ホロウィッツ)やディラーズなど、複数企業がデラウェア州外への再法人化を選ぶ動きを後押しした。

コインベースの最高法務責任者ポール・グレワル(Paul Grewal)氏は、かつてのデラウェア州は予測可能な裁判結果と取締役会判断への尊重で知られていたと述べつつ、現在は企業にとって選択肢が狭まっていると指摘した。同社は、株主や顧客、そしてオンチェーン・エコシステムの参加者にとって安定した法的枠組みを確保することを重視している。

「Dexit」を象徴する再法人化の動き

テスラやスペースX、ロブロックス、トリップアドバイザーなど、デラウェア州を離れる企業は増加しており、「Dexit」と呼ばれる流れとして広がっている。コインベースも、デラウェア州で進行中の訴訟を抱えるなかでガバナンス再設計を進め、将来の事業展開を見据えた拠点移転に踏み切った形となる。

テキサス州の企業法改革と仮想通貨フレンドリーな環境

移転先のテキサス州は、企業誘致に向けた法整備を進めてきた州の一つである。

上院法案29号は、取締役や役員が長期的視点に基づくビジネス判断を行いやすいよう、ビジネス判断ルールを成文化している。州の姿勢はブロックチェーン領域でも積極的で、2020年以降に20億ドル超の仮想通貨関連投資を呼び込んだとされる。

テスラ、スペースX、アンドリーセン・ホロウィッツ、ドロップボックスなどがテキサス州を登記地とする企業に加わり、同州の競争力を押し上げている。コインベースのブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)CEOとグレワル氏は、今回の判断が顧客、従業員、株主にとって最善であると説明し、リモートワーク体制の維持とともに安定したガバナンス環境を整える考えを示した。

企業が登記地を選ぶ基準は変化しており、税制だけではなく、司法判断の予測可能性やイノベーションを阻害しない規制姿勢が重視されつつある。コインベースの再法人化は、こうした変化の象徴的な動きといえる。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム