2026年に向けてデジタル資産企業の全面監督体制を構築
ブラジル中央銀行は、国内の仮想通貨関連企業を正式な監督対象とするため、三つの決議(519号、520号、521号)を承認した。
急速に拡大する市場の整理と安全性の確保が目的で、各規則は2026年2月2日に発効する。すでに事業を行う企業には同年11月までの移行期間が設けられた。
ブラジルは2024年から2025年にかけて約3,188億ドル(約49.4兆円)相当の仮想通貨が移動したとされ、世界有数の市場となっている。ステーブルコインを含むデジタル資産の利用は、投資だけでなく決済にも広がっており、急成長で生じた規制の空白を埋める必要が指摘されていた。
市場拡大と不正利用の増加が促す規制強化
ブラジルでは、デジタル資産の一般利用が加速する一方で、不正行為も増加した。2025年7月には主要プロバイダーがサイバー攻撃を受け、約1億4,000万ドル(約216.9億円)が流出する事件が発生している。
中央銀行は、仮想通貨の利用を制限する意図はなく、安全性と透明性を整えるための制度化と説明している。
新たな枠組みでは、取引所、カストディアン、ブローカーなどのVASP(Virtual Asset Service Provider:仮想通貨サービスプロパイダー)が中央銀行の認可を得て事業を行う仕組みが導入された。顧客資産の分別管理、ガバナンス、内部統制、サイバーセキュリティ、マネーロンダリング(資金洗浄)対策など、従来の金融機関に近い基準が求められる。
同時に、国内で事業を行う企業の許可申請プロセスも標準化され、外国為替ブローカーや証券販売業者の規則も再整備された。すべての仮想通貨企業は2026年2月までに営業許可を申請し、新基準に適応する必要がある。
仮想通貨取引の一部が外国為替扱いとなる新制度の影響
決議521号では、特定の仮想通貨取引が正式に外国為替および国際資本取引と同一視される。
対象となるのは、国際送金、海外での決済、自己管理ウォレット間の送金、法定通貨ペッグ資産の売買などで、企業には送金経路や所有者情報の管理が義務づけられる。未認可の企業が海外向けの仮想通貨送金を行う場合、1取引あたり10万ドル(約1,550万円)の上限が設定された。2026年5月以降、該当するすべての取引は中央銀行への報告対象となる。
こうした規制強化により、事業者の運用負担は増すものの、合法的な企業としての信頼性向上、銀行との連携強化、市場の透明性向上が期待される。これまで法的な不透明性で参入を躊躇(ちゅうちょ)していた機関投資家が参加しやすくなる可能性もある。
規制整備と並行し、議会では国家準備金として約190億ドル(約2.9兆円)をビットコイン(Bitcoin/BTC)に充当する計画も議論されている。法案はまだ立法プロセスの初期段階にあるが、承認されればブラジルは国家レベルでビットコインを保有する主要国の一つとなる可能性がある。























