コインベースがステーブルコイン企業BVNKの20億ドル買収をキャンセル

コインベースがBVNK買収を撤回したことを象徴するデジタル金融イメージ

コインベースが最終交渉に入っていたBVNK買収計画から撤退

米・仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)は、英国のステーブルコイン決済企業BVNKの約20億ドル規模の買収交渉を最終局面で取り下げた。

ステーブルコイン分野での競争が高まる中での撤退となり、同社の戦略に注目が集まっている。BVNKは金融機関やフィンテック企業向けにステーブルコイン決済とクロスボーダー送金の基盤を提供するロンドン拠点のスタートアップで、規制に準拠した決済インフラ企業として存在感を高めてきた。コインベースはステーブルコイン決済強化と欧州での立ち位置拡大を目的に買収を検討し、競争入札を経て独占交渉権を取得していた。

交渉は最終段階まで進んだものの、最終的に両社は買収を進めないことで合意した。コインベースの広報担当者は「BVNKの買収について協議した結果、両社は先に進まない判断をした」と述べている。買収が成立していれば、2024年にストライプがBridgeを約11億ドル(約1,704億円)で取得した取引を大きく上回る規模で、ステーブルコインインフラ企業の買収としては最大級となる見込みだった。

BVNKにはマスターカード(Mastercard)も買収の関心を示していたとされ、ステーブルコイン決済基盤を巡る競争は決済大手を巻き込みながら激しさを増している。

コインベースの事業戦略とステーブルコイン市場の競争環境

コインベースはステーブルコイン収益が第3四半期に全体の約20%を占めるまでに成長しており、USDC発行企業Circle(サークル)とのパートナーシップを軸に事業の多様化を進めている。

BVNKの買収は、欧州でのMiCA準拠インフラの獲得につながる可能性があったとみられる一方で、同社は今後もUSDCを中心としたステーブルコイン戦略を継続していく可能性が高い。同社はここ1年でM&Aを積極的に進めており、8月には仮想通貨デリバティブ取引所Deribit(デリビット)を約29億ドル(約4,493億円)で買収した。スポット取引依存を下げ、デリバティブ、決済、機関投資家向けインフラの拡充を図る戦略は継続している。

ステーブルコイン市場ではマスターカードやビザ(Visa)がトークン化決済の取り組みを加速し、DBSやスタンダードチャータードなど大手銀行もトークン化関連サービスを導入している。グローバルな決済とオンチェーン決済が融合する流れの中で、BVNKのような決済インフラ企業は引き続き買収対象として注目される可能性が高い。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム