仮想通貨Omisego(オミセゴー/OMG)は2017年7月、日本人企業家の長谷川潤氏がCEOを務める企業「OMISE」が発行した仮想通貨です。日本人にとっても親しみやすそうな名前をしているオミセゴーですが、中身を構成しているOMGブロックチェーンはかなり複雑な仕組みを導入しています。
今回は、東南アジアを中心として活動しているオミセゴーについて詳しく解説していきます。
目次
オミセゴー(OmiseGo/OMG)の最新価格・相場・チャート・評価
オミセゴー(OmiseGo/OMG)の特徴・詳細とは?
東南アジアを中心としたプラットフォーム「OMISE」を展開し、それに伴って「OMG」というトークンを発行している「OmiseGo」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?
OmiseGOプロジェクトの基盤となっている、OMGブロックチェーンの特徴は大きく4つ、分散型取引所・流動性提供者メカニズム・クリアリングハウスメッセージネットワーク・ブロックチェーンゲートウェイになります。
- 分散型取引所
- 流動性提供者メカニズム
- クリアリングハウスメッセージネットワーク
- ブロックチェーンゲートウェイ
分散型取引所(DEX)
分散型取引所とは、ブロックチェーンで取引や資産移動などを管理する取引所です。英語ではDecentralized Exchanges であることから、DEXと略することもあります。DEXのメリットとしてセキュリティがあげられます。
人の手で管理するとコインチェックの資金流出の原因ともなったネットワークに接続した状態のままで資金管理、あるいは資金管理権限者による意図的な資金流用などの危険性があります。
分散型取引所であれば設定された通りに資金管理を行うため、中央管理による資金管理よりもセキュリティが高いと言われています。取引においても機械的に適合する相手を探し出すため、透明性が高いです。
逆に分散型取引所のデメリットはサポートの少なさです。管理者がいないため、ログインIDやパスワードを忘れてしまうとログインできなくなってしまう恐れがあります。
また現状では分散型取引所を利用する人の数も多いとは言えず、取引相手を上手く見つけられるかどうかという問題も抱えています。
2018年12月現在、海外には既に分散型取引所がいくつか存在します。
イーサリアムをプラットフォームとしたイーサデルタ、ビットシェアーズをプラットフォームとしているオープンレジャー、ウェイブスプラットフォームによって開発されたウェイブスライトクライアントなどが分散型取引所です。
流動性提供者メカニズム
2つ目の流動性提供者メカニズムにある流動性とは、一言でいうと取引の成立のしやすさを意味します。
例えばビットコインと日本円の取引をしようとしても、一方は1BTC=45万円、もう一方は1BTC=40万円を要求したら取引の成立は難しいでしょう。しかし双方が1BTC=45万円前後であれば、お互いの譲歩により成立する可能性が高まります。
取引を検討している人が多く、互いの考えている取引額が近いと流動性が高くなります。逆に取引を検討している人が少なかったり、互いの考えている取引額に大きな幅がある場合は流動性が低くなるわけです。
流動性が低いと取引が成立しなくなり、最悪仮想通貨取引所から上場廃止されることもあります。
最近では2018年11月に流動性が少ないことを理由に、海外の仮想通貨取引所であるOKExが30を超える数の仮想通貨が上場廃止、あるいは通貨ペアの減少を行っています。また仮想通貨の中には、宣伝も兼ねて流動性を高めるために無料で配布するエアドロップを実施する銘柄も存在します。オミセゴーも2017年9月にエアドロップを実施したことがあります。
クリアリングハウスメッセージネットワーク
3つ目のクリアリングハウスメッセージネットワークとは、ビットコインのようにスマートコントラクトを導入していない仮想通貨にもスマートコントラクト機能があるように取引する方法です。
分散型取引所ではスマートコントラクトによって取引を成り立たせているため、本来ビットコインなどのスマートコントラクトのない仮想通貨を取引することはできません。
しかし、オミセゴーではクリアリングメッセージネットワークを使うことで、スマートコントラクトのない仮想通貨でも分散型取引所で取り扱えるようにしています。
ブロックチェーンゲートウェイ
最後のブロックチェーンゲートウェイとは、オミセゴーを仲介することで他の法定通貨あるいは仮想通貨の取引を可能にするというものです。
例えば一方が日本円でビットコインを買いたいと考えており、もう一方はビットコインを売りたいものの米ドルで支払って欲しいと考えていたとします。本来ならばこのような取引は成立しません。
しかしオミセゴーを途中で挟むことにより、日本円を米ドルへと換金してくれるわけです。このようなシステムを可能にしている理由は、OMGブロックチェーンとイーサリアムのブロックチェーンが協力体制にあるためです。
取引や決済といった部分はOMGブロックチェーン上で行われていますが、送金はイーサリアムブロックチェーン上で管理されています。
この他の特徴としてオミセゴーはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
【PoS】コンセンサスアルゴリズム
コンセンサスアルゴリズムとは取引や送金を行うたびに発生するトランザクションの承認、及び確認方法のことを意味しています。
コンセンサスアルゴリズムで代表的なシステムは、ビットコインなどが採用しているPoW(プルーフ・オブ・ワークス)でしょう。PoWは最も早くトランザクションを承認した人に報酬が支払われる、自分の好きなトランザクションをマイニングできるなどが特徴です。
これらの特徴によりPoWは、電気代の消費が多い、マイナーが少ないと特定の人物あるいは少人数によってマイニングが支配されるなどの問題も抱えています。
PoSはPoWとは異なった特徴を持つコンセンサスアルゴリズムです。報酬は真っ先にマイニングに成功した人の独り占めではなく、対象となる仮想通貨の所持数量や所持日数によって変動するように設定されています。
また処理するトランザクションはシステムの方から割り振られるため、自分で処理するトランザクションを選ぶことは出来ないというのも特徴のひとつです。
なおPoSではトランザクションの処理をマイニングとは呼ばずにメルティング、あるいは鋳造と呼びます。しかしマイニングの方が単語として浸透しているため、マイニングと呼ばれることも少なくありません。
オミセゴー(OmiseGo/OMG)の強み
Wallet(ウォレット)
オミセゴーの強みのひとつは、イーサリアム(ETH)の提供しているプラットフォームによって開発されたERC20トークンであるということです。
ERC20はプラットフォームの名前になります。ERC20トークンの特徴は、個別の仮想通貨であっても同様の方法で個別に管理することが出来るところです。ERC20トークンにはオミセゴー以外にも複数存在します。ICOで約40億米ドルもの資金を調達したイオス、マルタを拠点にしている仮想通貨取引所バイナンスで手数料の支払いなどに使われるバイナンスコインなどもERC20トークンです。
ERC20に対応しているウォレットであれば、オミセゴーもイオスもバイナンスコインも全て保管可能であることを意味します。加えてそれぞれの仮想通貨の保管枚数を別々に管理することが出来るわけです。
ERC20に対応しているウォレットとして代表的なものとしては、オンライン上でもオフライン上でも仮想通貨の管理が出来るマイイーサウォレットやイーサリアムのプラットフォームで開発されたdappsゲームでも使われているメタマスクなどがあります。
また元々ERC20で開発された仮想通貨は、イーサリアムのブロックチェーンを自分たちの仮想通貨のブロックチェーンのようにして使うことが可能です。
そこでERC20トークンの中には開発初期はイーサリアムのブロックチェーンを利用し、後々オミセゴーのように独自に開発したOMGブロックチェーンのように独自ブロックチェーンに乗り換えるという仮想通貨も複数存在しています。
ERC20トークンの例として挙げたイオスも、イーサリアムのブロックチェーンから独自のブロックチェーンに移行した仮想通貨であり、バイナンスコイン(BNB)は独自ブロックチェーンの開発を進めています。
アドバイザー
OMGブロックチェーンには複雑ながらも画期的な機能が複数搭載されています。
このような機能を搭載することが出来た理由のひとつに、イーサリアムの開発者であるヴィタリク・ブテリン氏がオミセゴーのアドバイザーとして就任していることが挙げられます。
またヴィタリク氏は、自身のツイッターでオミセゴーについて触れたこともあります。この時の呟きは、オミセゴーの相場が大きく高騰するほどの反響を得ています。
ヴィタリク氏以外にもイーサリアムの共同創業者であるガヴィン・ウッド氏、ビットコインでも導入が検討されているライトニングネットワークの共同創業者であるジョセフ・プーン氏などもオミセゴーに関わっています。
提携パートナー
オミセゴーは東南アジアで決済サービスを提供しているOmise(オミセ)の子会社オミセゴーの発行している仮想通貨です。そのため東南アジアではオミセの知名度は高く、東南アジアを中心に複数の組織・団体と提携パートナーとなっています。
韓国のクレジットカード会社シンハンカードと覚書を提携しています。タイのマクドナルドとも提携しており、オンライン上での商品注文の円滑化や決済サービスが導入されます。
決済以外の提携を交わしているところも少なくありません。
【マクドナルドと業務提携開始!】タイのマクドナルドがOmiseのオンライン決済システムを導入いたしました! #Omise https://t.co/aKe7uy7F3D pic.twitter.com/fq74G5jS9C
— Omise Japan (@OmiseJapan) 2017年9月28日
タイの政府機関であるETDAとは国民IDの開発提携、シンガポールで乗り物の管理を行っている企業マスヴィーグルレジャーとはシンガポールのタクシー等の管理を目的にオミセゴーで提携しています。
特にETDAとの提携の影響は大きく、発表された2017年8月にはオミセゴーの相場が高騰しました。
東南アジアでの拡大
オミセゴーがメインターゲットとしているのは東南アジアの市場です。
オミセゴーのホワイトペーパーによると、東南アジアの人口の73%が銀行などの正規の金融サービスへのアクセス権を所持していないアンバンクドと呼ばれる人々です。
日本では給料を銀行支払にしたり公共料金を銀行口座から自動引き落としにしたりと、銀行口座を持っていることが前提となっているサービスが複数存在します。
しかし東南アジアの多くの人々は金融機関に口座を持っていないため、このようなサービスを受けることができないわけです。同様の理由からクレジットカードなどのカード類も普及していません。
そのためオミセゴーでは、日本なら銀行口座を通じて行われるような公共料金を含む各種支払いや給与の振込にも対応しています。
OmiseGoの評価まとめ
OmiseGoの将来性
オミセゴーで特徴的なことは、発行体であるオミセが既に東南アジアで十分な認知度を得ていることです。そのため将来的にオミセゴーは、東南アジアのインフラの一部として認識される可能性は十分にあります。
逆に何かのきっかけで突発的に広がるという可能性は少ないでしょう。
タイの政府機関であるETDAとの提携が発表された2017年8月やヴィタリク氏がオミセゴーを応援しているとツイッターで公表した2017年12月に相場は高騰しています。
しかし高騰後は徐々に下落していっているため、安定とは程遠い状況にあります。オミセゴーが本当に東南アジアに住む人にとって欠かせない存在になるまでには、まだ長い時間がかかるでしょう。