テゾス(Tezos/XTZ)の特徴・詳細とは?

Tezos(XTZ)とは、2014年から始まったプロジェクトであり、2017年7月にICOを行って約232億円を調達した仮想通貨です。

ビットコインや、イーサリアムの弱点を補うように開発されたのが、分散型アプリケーションのプラットフォームである「Tezos(テゾス/XTZ)」です。これまで議論されてきたスケーラビリティ問題や、マイニングに関する問題を解決するために開発されました。

創業者は、Arthur Breitmen氏とKathleen Breitmen氏であり、メンバーにはゴールドマンサックスやアクセンチュア、モルガンスタンレーなどさまざまな経歴を持つ人が集まっています。

今回はTezosの特徴や、今後の将来性についてまとめています。

テゾス(Tezos/XTZ)の最新価格・相場・チャート・評価


テゾス(Tezos/XTZ)の特徴・詳細とは?|ICOで約232億円を集めた大型仮想通貨プロジェクト

テゾス(Tezos/XTZ)とは?

Tezosとは、イーサリアムのような分散型アプリケーション(DApps)のプラットフォームです。2014年からスタートしたプロジェクトで、現在は最終試験のベータネット(betanet)で運用されており、メインネットの公開が期待されています。

Tezosは2017年7月にICOを実施し、約261億円(65,703XBT、361,122ETH)を調達したことでも話題になりました。資金管理はスイスにある「Tezos Foundation」という組織が行っています。

開発チームには、元ゴールドマンサックスのArthur Breitman氏と、Kathleen Breitman氏をはじめとする、その他アクセンチュア、モルガン・スタンレー、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで働いていた経験豊富なメンバーが揃っています。

「Tezos」はギリシャ語で、「スマート・コントラクト」を意味する言葉です。その名の通りスマートコントラクトを実装しており、しかもイーサリアムを超える次世代のスマートコントラクトとも言われています。

分散化したブロックチェーン構築

Tezosの最大の強みは、ブロックチェーンのガバナンス部分が分散化されていることです。従来のブロックチェーン(ビットコインやイーサリアムなど)では、取引の承認であるコンセンサス部分においては、分散化が成功していました。言い換えると、取引の承認権限が世界中のユーザーに分散されているということです。

コンセンサスの分散で、資産家や大企業などの一極集中が避けられる画期的な技術だと注目されていましたが、どのような方針でブロックチェーンを開発していくか、というガバナンス部分の分散化は難しいとされていたのです。

Tezosはその「ガバナンス部分」の分散化を提唱したブロックチェーンであり、プロジェクトの推進の可否や内容を、ユーザーが決めることが可能となっています。

具体的には、「Tutarchy」と呼ばれる投票システムを採用しており、ユーザーの投票によって様々な決定ができる仕組みになっています。

プログラミング言語「OCaml」

また、Tezosでは東京大学理学部情報科学科の学術的研究で用いられているプログラミング言語「OCaml」を採用していることでも注目を集めています。フランスの研究所「INRIA」が開発した関数型プログラミング言語で、不具合やバグが生じにくいという特徴があります。

比較的新しいプログラミング言語なので、まだまだ扱える技術者は少ないですが、わかりやすく、読み書きしやすいという強みがあるそうです。また、C++と同じ程度の高速処理で、セキュリティにも強いと言われています。

特にTezoxでは、不具合の修正やシステムの開発は、採用された場合に報酬を得られるという仕組みを採用しています。そのような理由からも、多くの技術者が開発に携わることが予想されますので、簡単でわかりやすいプログラミング言語が注目されたということです。

ビットコインの弱点を克服した次世代通貨

Tezosの開発は、ビットコインやイーサリアムの弱点を克服するという目的で行われました。特に注目されていたのは、スケーラビリティ問題と、ハードフォークによる分裂の問題です。

ビットコインでは、ブロックサイズの上限が小さかったため、取引数が多くなるにつれて送金詰まりが発生するという問題が起きてしまいました。マイナーは高い手数料の取引から承認していく傾向にあるため、送金詰まりが起こると同時に手数料の高騰化も招く事態となってしまいます。

ハードフォークによるアップデート

この問題を改善するためには、システムの根本的なアップデートであるハードフォークを行う必要がありました。しかしハードフォークを行えば、ブロックの永続的な分岐が起きる可能性があり、通貨が分裂してしまう危険性があります。

実際、ビットコインは2017年8月にブロックサイズを拡大するためのハードフォークを行い、ブロックチェーンが分裂。新しい通貨として、ビットコインキャッシュが誕生しています。

このような事態を避けるために、Tezosではプロトコルを3つに分割し、システムの修正にハードフォークを必要としないブロックチェーンを構築しました。

3つのプロトコルとは、ネットワークプロトコル、トランザクションプロトコル、コンセンサスプロトコルです。それぞれのプロトコルを独立させることで、アップデートをしてもブロックチェーンが分岐しないよう互換性を持たせることに成功したのです。

ハードフォークによる通貨の分裂リスクがないということは、それだけ通貨としての価値も安定しているということです。たとえばイーサリアムの場合、過去に大量のETHが盗まれるという「TheDAO事件」によってハードフォークを余儀なくされ、イーサリアムとイーサリアムクラシックに通貨が分裂してしまいました。

通貨が分散することで価値が分散する可能性があり、通貨の価値が暴落、片方の通貨が消滅してしまったりする可能性もあります。Tezosでは通貨分裂のリスクは一切ない、次世代の仮想通貨だと言えます。

DPoS(Delegated Proof of Stake)を採用

Tezosでは、コンセンサスアルゴリズムにDPoS(デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク)を採用しています。

コンセンサスアルゴリズムと言えば、ビットコインやビットコインキャッシュのPoW(プルーフ・オブ・ワーク)が有名です。各ブロック生成ごとに、ハッシュ関数による一定の計算を行い、計算が早かったマイナーが発言権(ブロックを生成する権利)を得られるという仕組みです。

PoWとPoSとの違いとは?

PoWでは、計算速度が重要な鍵を握るため、大きな資産を持つ企業などにマイニング報酬が集中してしまうというデメリットがありました。また、計算には大きな電力も必要なため、世界的な環境問題にまで発展しています。

そこで開発されたのが、PoWのような計算は必要とせず、通貨の所有枚数によって生成者が決められる「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」です。イーサリアムは現在PoWを採用していますが、今後のアップデートでPoSに移行する予定になっています。

PoSの考え方を基礎としつつも、自分の保有するトークン分の投票権を誰かに委任することができるという新しいアルゴリズムです。

承認作業をする時間や知識がなかった場合、これまでは不参加という選択肢しかありませんでした。しかしTezosでは、その作業をほかの人に任せることができ、時間や知識がなくてもネットワークに参加することができるようになりました。

さらに、Tezosが採用しているDPoSは、Liskや、Steem、EOSでも採用されているシステムで、投票の権利を代理人に委任(Delegated)できます。つまり、承認者に選ばれたとしても、権限そのものを他人に譲渡することが可能ということです。

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Formal Verificationの採用

Tezosでは、イーサリアムでも採用されているスマートコントラクトが実装されています。スマートコントラクトは、日本語では「賢い契約」と直訳されます。

ブロックチェーンに契約を記載することで、その内容を自動的に実行することができるというもの。またそれを応用して、契約だけではなくいろいろなコンテンツのデータをブロックチェーンに記録することも可能な技術です。

よく例えられるのが、自動販売機です。お金を入れてボタンを押すと自動的に商品が出てくるように、スマートコントラクトでも同じようなことができます。ブロックチェーンにあらかじめ契約の内容を記録しておき、特定のアドレスに通貨が送金された場合にその内容を自動的に実行するというシステムです。

Tezosでは、そのスマートコントラクトの確実性をさらに高める「Formal Verification」と呼ばれる技術が開発されています。Formal Verificationには、スマートコントラクトで記録された内容を実証する機能があります。

このシステムは「プルーフ・チェッカー(証明検査)」と呼ばれ、スマートコントラクトが正しく実行されているか、正しい契約が記録されているか、数学的な視点から技術者が検証を行う仕組みになっています。

スマートコントラクトのプログラミング言語には「Michelson」という、Formal Verificationを容易にする言語が採用されています。エラーが許されない重要な場所で利用されることを想定して開発された言語で、まさにスマートコントラクトの内容証明にはうってつけの言語が採用されているということです。

テゾス(Tezos/XTZ)の評価まとめ

日本では、TezosJapanが「Telegram」と呼ばれるチャットツールによって、コミュニティ活動を行っています。現在、Tezosはメインネットの運用はされていませんが、ICOで65,703XBT+361,122ETHを調達したという実績はあるので、間もなくの開始だと言われています。

公式サイトのロードマップによると、2018年の3Q(7~9月)に開始となっていますが、現時点では遅れているようです。

訴訟問題について

その原因として、Tezos開発チーム内部の対立と、投資家からの訴訟によるものが挙げられます。ことの発端は、Tezosの主要開発者であるArthur Breitman氏とKathleen Breitman氏が、ICOの資金などを管理する「Tezos Foundation」のトップであるJohann Gevers氏の解任を求めたことです。

それに対しGevers氏は「Breitman夫妻がスイスの法律の穴をついて、Tezos Foundationを乗っ取ろうとしている。また、それが原因でTezosプロジェクトが遅れている。」と述べていました。

この対立により、実際にTezosの開発は大幅に遅れてしまいました。ICOで配布されるはずだった通貨も配布されず、そのICOに投資をした投資家たちが集団訴訟を起こしてしまったのです。ICOの解釈について証券取引法の判例になるものなので、その結果によって今後のICOに大きな影響を及ぼす可能性があり、世間では大きな注目を集めていました。

そもそもICOへの投資は、投資家の無償投資が基本です。それに対してトークンの配布やサービスの付与はありますが、これに対して法的な拘束があるわけではないのです。つまり、ICO発行者は必ずしも投資家に対してトークンの配布やサービスの付与をしなくてもいいということです。

しかしそれは始めから「トークンの配布やサービスの付与をしない」と明言していた場合のことであり、「トークンの配布やサービスの付与をする」と明言していた場合、投資家に対する詐欺にあたる可能性があります。

この訴訟については、2018年8月に支払い請求が裁判所において正式に却下され、事態が収束したようです。プロジェクトは大幅に遅れてしまいましたが、今後正常に開発が進められる予定です。

テゾス(Tezos/XTZ)の今後

Tezosでは、今後「リング署名」や「ゼロ知識証明」の導入が検討されています。

リング署名とは、匿名性の高いアルトコインとして有名なMoneroが採用している仕組みです。トランザクションが一旦プールに集められ、複数の秘密鍵と公開鍵がリング状になって送信されるため、誰が誰に送金したのかわからなくなるというシステムです。

またゼロ知識証明は、ZCashというアルトコインで採用されている管理方法です。自分が鍵を持っているということを、鍵を相手に提示せずに証明するために数学的証明を応用したシステムになっています。

たとえば、自分が「A」という鍵を持っていたとして、Aを持っている人しか知らない情報を相手に提示することで、自分がAを持っているという証明になるということです。

リング署名やゼロ知識証明は、その通貨の匿名性を大幅に高めることができます。ビットコインやビットコインキャッシュなど匿名性の低い通貨では、誰が誰に送金したのかはっきりわかりますが、このシステムが採用されている通貨では、第三者がそれを知ることがほぼ不可能に近いのです。

匿名性の高い通貨はプライバシーを守るというメリットがありますが、犯罪に利用されやすいというリスクもあります。闇市での取引や、マネーロンダリングに利用される可能性があるということで、その導入には賛否両論です。

実際日本では、金融庁により取引所の規制が行われており、匿名性の高い通貨を取扱う取引所は認可されない傾向にあります。つまり、今後これらのシステムを採用するのであれば、日本の国内取引所での採用を期待するのは難しいかもしれません。

ただし、Tezosはビットコインやイーサリアムの弱点を克服した通貨です。今後ビットコインやイーサリアムに問題が起きた場合に、Tezosが大きな注目を集める可能性があります。