米国財務省によるイラン暗号資産ネットワークの遮断措置
OFAC(米国財務省外国資産管理局)は、イランに対する経済制裁を一段と強化し、同国の主要な暗号資産取引所BitBank(ビットバンク)、その開発企業、および関連する幹部らを制裁対象リスト(SDNリスト)に追加指定した。
今回の措置は、イランによる国際金融システムへの不正アクセスや制裁回避行為の阻止を目的とした、財務省の主導する大規模取締キャンペーンOperation Economic Outcast(オペレーション・エコノミック・アウトキャスト)の一環として実施されたものだ。
制裁の対象となったのは、BitBankの運用プラットフォームを開発・提供してきたPishtaz Simorgh Electronic Trade Company(Dot One社の子会社)のほか、暗号資産ネットワークの運営・資金移動に関与したとされるホセイン・アリ・ザケル・ホセイン氏、モハンマド・マフディ・ザケル・ホセイン氏、セイエド・アデル・ヘイダリ氏の幹部3名だ。
米当局はこれらの組織および個人を、イランの実業家ババク・ザンジャニ(Babak Zanjani)氏の支援・支配下にあるデジタル資産ネットワークとして特定している。
革命防衛隊への資金流出と不正送金のスキーム
OFACの調査結果によると、BitBankは少なくとも2024年以降、イラン国内向けにデジタル資産取引サービスを提供してきた。しかし裏では、制裁対象機関であるイランのIRGC(イスラム革命防衛隊)や、すでに米国の制裁リストに記載されている海上輸送・港湾関係企業Hormuz Safe Marine Services Authorityとの不適切な資金移動を仲介していたと指摘されている。
具体的には、2026年6月から7月にかけて、ザンジャニ氏らの手によりBitBankを経由して数億ドル規模に上るビットコインが動かされ、最終的にIRGCの資金源や制裁回避活動に充てられたとされている。過去に石油公社の資金横領罪で国内判決を受けた経歴を持つザンジャニ氏は、自身のSNSや関連事業ネットワークを通じてBitBankを精力的にプロモーションし、実質的な支配力を及ぼしていたと見られている。
資産凍結と法的な取引制限の影響
大統領令13902号に基づく今回の指定により、米国の法域内にある対象者の株式や所有権が50%以上に達する事業体を含む資産は即座に凍結され、米国の個人および法人とのあらゆる取引が禁止される。正当なライセンスや特定の除外規定が適用されない限り、これらの制裁対象者との取引を継続した事業者や法人は、民事・刑事を問わず厳しい罰則の対象となるリスクを負うことになる。
スコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官は、「ブロックチェーンや暗号資産などの高度なテクノロジーを利用したとしても、イラン政権による制裁回避の試みを隠し通すことはできない」と強調し、イラン政府やその軍事組織を支援するあらゆる事業者に対して容赦なく制裁を行使する姿勢を明確にした。
強まるイラン暗号資産セクターへの包囲網
米国政府は2026年半ば以降、イラン国内の暗号資産インフラに対する圧力を急ピッチで高めている。すでに主要取引所であるNobitex(ノビテックス)、Wallex(ウォレックス)、Bitpin(ビットピン)、Ramzinex(ラムジネックス)やその経営陣に対して立て続けに制裁を発動してきた。特にNobitexは、同国における暗号資産流入の過半を占め、海外プラットフォームとの仲介やステーブルコイン決済の拠点となっていた経緯がある。
今回BitBankおよびザンジャニ氏関連の暗号資産ルートが遮断されたことで、イランのデジタル資産セクター全体に対する米国の監視網は一層強固なものとなった。財務省は今後も、国際的な決済手段としての暗号資産の悪用を監視し、同様の制裁回避行為を徹底的に追及していく方針だ。
























