欧州中央銀行総裁がバイナンスのEU進出・ライセンス取得を阻止

バイナンスのEU進出にラガルド総裁がライセンス取得阻止へ働きかけ

WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の報道によると、ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁が、世界最大の暗号資産取引所バイナンス(Binance)によるEU(欧州連合)での事業ライセンス取得および市場参入を自ら阻止したことが明らかになった。

バイナンスはEUのMiCA(暗号資産市場)規制に基づき、ギリシャのHCMC(資本市場委員会)を通じてライセンスを申請していた。MiCAに基づくライセンスは、加盟国1カ国で承認されればEU全域での事業展開が可能となる重要な権利だ。審査は技術的段階を通過し、6月初旬にはマネーロンダリング(資金洗浄)対策担当者も承認の意向を示すなど、交付は目前に迫っていた。

しかし、ラガルド総裁はギリシャのキリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相との会談で直接この件に言及し、ライセンス付与に強い反対を表明。ECB自体にはMiCAライセンスの承認や拒否に関する正式な法的権限はない。そのため、本来は各国の規制当局や財務大臣が判断すべきプロセスに対し、ECB総裁が個人的かつ政治的な影響力を行使して決定を覆させた形となり、法務専門家などから波紋を呼んでいる。

阻止の背景にあるコンプライアンス懸念とデジタル・ユーロ構想

ラガルド氏がバイナンスの参入を拒絶した背景には、主に2つの強い懸念が存在する。

1つ目は、同社の過激な過去と金融犯罪への関与である。バイナンスおよび創業者のジャオ・チャンポン(趙 長鵬:Zhao Changpeng)氏は2023年、米国においてマネーロンダリング防止法違反などの罪を認め、43億ドルという史上最大規模の罰金を支払う和解に達した。

ラガルド氏は以前からビットコイン(Bitcoin/BTC)を「マネーロンダリングに使われる極めて投機的な資産」と断じ、厳しく批判してきた経緯があり、有罪判決を受けた組織のEU参入を看過できないと考えていたと見られる。

2つ目は、欧州の金融主権とデジタル・ユーロを守るという戦略的狙いだ。ECBは現在、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)であるデジタル・ユーロの開発を推進している。ラガルド氏は、巨額の取引高を誇るバイナンスが欧州市場で台頭すれば、ユーロ建てステーブルコインではなく米ドル連動型ステーブルコインの利用が爆発的に広がり、欧州の金融自律性が脅かされることを危惧していた。

締め出しが続くバイナンスと今後の欧州戦略

ギリシャ当局による承認が見込めなくなったバイナンスは、最終的にギリシャでの申請を取り下げざるを得なくなった。同社は1,500人規模のコンプライアンスチームを整備したことをアピールし、報道に対して反論を試みたが、状況を打開することはできなかった。

さらに、アイルランドやラトビアなど他のEU加盟国においても、組織構造の複雑さや過去の制裁歴を理由に申請が却下されている状況だ。競合のコインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)がすでにEU域内での正式な認可を獲得して拠点を築く中、Binanceは市場からの孤立に直面している。

現在、同社はすでに限定的な登録を行っているフランスのAMF(金融市場規制当局)との協議に希望を託しており、他国でのMiCAライセンス取得に向けた模索を続けている。しかし、欧州金融界のトップであるECB総裁が強硬な反対姿勢を示したことで、同社にとってEU市場全域への本格参入に向けた道のりは極めて険しいものとなっている。

 

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