成人人口の6割に影響――Ueno Bankの業務整理と全貌
パラグアイ中央銀行(BCP)は、国内最大級のデジタル銀行Ueno Bank(ウエノ銀行)に対し、全会一致で業務整理手続きの開始を決定し、通知した。同行の財務調整を行った結果、自己資本比率が規制基準である12%の半分未満となる5.56%にまで急落し、支払い能力を大幅に欠いていることが発覚したためである。
Mensaje del Presidente de la República, Santiago Peña, al pueblo paraguayo. https://t.co/RBz6IfFV9L
— Santiago Peña (@SantiPenap) November 5, 2026
パラグアイ共和国大統領、サンティアゴ・ペーニャからパラグアイ国民へのメッセージ。
2021年の設立以来急速な成長を遂げた同行は、同国の成人人口の約60%に相当する294万人の顧客口座を抱えていた。しかし今回の決定により、デジタルバンキング機能や預金の引き出し、送金を含むすべてのサービスが即座に停止され、約300万口座が事実上の凍結状態に陥っている。さらに、公的年金機関からの約3億8,000万ドル(約600億円)をはじめとする計8億ドル(約1,261.5億円)超の公的資金や、南米サッカー連盟(CONMEBOL)の運用資金まで凍結される事態となった。
一連の問題を巡り、同行のフアン・マヌエル・グスタレ(Juan Manuel Gustale Cardoni)頭取や親会社Grupo Vázquez(グルポ・バスケス)のミゲル・バスケス(Miguel Vázquez)社長ら幹部8名が背任などの疑いで警察に拘束された。当局による摘発が進む中、首都アスンシオンでは生活資金を失った預金者や年金受給者らによる激しい抗議活動が巻き起こっている。
大統領辞任と政治的混乱――利益相反の追及と弾劾の動き
金融危機の拡大に伴い、パラグアイ政治も激震に見舞われた。サンティアゴ・ペーニャ(Santiago Peña)大統領は、事態の責任を取る形で辞任を表明。ペーニャ大統領は2025年3月までグルポ・バスケスのビジネスパートナーを務めていた過去があり、金融機関の不祥事を巡って利益相反や組織的隠蔽、年金基金の不正流用への関与が議会から強く追及されていた。
下院において弾劾に向けた議論が進み、与党内での支持も失ったことを受けて、ペーニャ氏はビデオ声明を通じて退陣を発表した。声明の中で同氏は「国の安定、社会の平和、民主的な制度を守るための決断である」と強調し、預金者保護を最優先課題に挙げた。憲法の規定に基づき、議会が正式に辞任を承認すれば、ペドロ・アリアナ(Pedro Alliana)副大統領が2028年までの残り任期を引き継ぐことになる。
中央銀行総裁の辞任や大統領の退陣にまで発展した今回の問題は、同国史上まれに見る大規模な政財界の危機へと発展している。
P2P市場でUSDTが13%高騰――法定通貨への不信と避難需要
銀行口座の凍結によって流動性を失った預金者や事業者が代替手段を求めた結果、国内の暗号資産市場には急激な歪みが生じた。暗号資産取引所Bybit(バイビット)のP2P(個人間取引)市場では、米ドル連動型ステーブルコインであるテザー(Tether/USDT)の提示価格が高騰している。
ある売り手は、中央銀行が公表した公式基準レートである1ドル=6,144.02グアラニーを約13%上回る「1 USDT=6,942グアラニー」というプレミアム価格を設定。これは、法定通貨や国内金融システムに対する急速な信認低下を受け、一時的な資産退避先としてデジタル資産を確保しようとする動きの一環と見られている。
市場関係者によると、凍結口座の資金で直接暗号資産を購入することはできないが、外部に利用可能な資金を持つユーザーが資産保護や支払い手段の確保に走ったことで、市場の提示価格にバラつきが生じた。現地取引所X4Tの経営陣も、自国通貨安と金融不安が相まり、給与支払いや債務決済のための暗号資産需要が急速に高まったと指摘している。
預金者保護と今後の払い戻しプロセス
混乱の収束に向け、中央銀行は預金保険制度に基づく前払い対応を開始した。第1段階の払い戻し対象として、
・預金総額が1,000万グアラニー以下
・未返済の債務がない
・他行に有効な口座を所有しているという3つの要件を満たす顧客に対し、最大1,000万グアラニーまでの全額払い戻しが進められている。
パラグアイの制度上、金融機関の破綻時に保護される法定保証額の上限は、預金者1人につき2億2,830万グアラニー(約585万円)と定められている。中央銀行は初期対応の完了後、監督当局による最終的な精査を経て、順次より大きな口座残高を持つグループへの返還手続きを進める方針を示している。
大規模な公的資金の回収や金融システム全体の安定化に向け、新政権と規制当局には迅速かつ透明性の高い対応が求められている。
























