SECがトークン化された株式取引のオンチェーン展開に規制緩和を付与
SEC(米証券取引委員会)は、ブロックチェーン技術を活用した株式のオンチェーン取引を促進するため、適格なプラットフォームに対して5年間の条件付き「イノベーション特例(適用除外)」措置を導入した。
この決定により、デジタル資産を主流の株式市場へ組み込むための新たな規制上の道筋が切り開かれようとしている。今回の新たな指針では、TSV(トークン化証券取引所)という新カテゴリーが創設される。これにより、通常の1934年証券取引所法における「取引所」の定義や、流動性プールに資金を提供する業者の「ディーラー」定義から5年間除外されることになる。
TSVは、許可制AMM(自動マーケットメーカー)や専用の流動性プールを介して、トークン化されたNMS(全米市場システム)銘柄の買い手と売り手を接続するが、利用に際しては以下のような厳格な条件や安全策が設けられている。
・銘柄と取引量の制限:
対象となる株式銘柄や処理可能な取引量には一定の制限が課される。
・発行体の権利と通知:
発行企業の関与なしに株式をトークン化する場合、事前に書面での通知が必要となり、発行体が拒否した場合は上場できない。また、株主が本来持つ権利の維持が求められる。
・スマートコントラクトの要件:
スマートコントラクトは公開され、監査可能であり、パーミッションレス(誰でも参加可能)なブロックチェーン上で稼働する必要がある。
・市場の連動と対象外:
原資産となる株式の取引が主たる取引所で停止された場合、当該トークンの取引も停止される。なお、実際の株式に裏付けられた資産のみが対象であり、株価に連動するだけの合成デリバティブは除外される。
5年間の試験期間と背景にある法整備の停滞
この特例措置の有効期間は公表後5年間とされており、この期間を通じて規制当局は取引状況を監視し、将来の政策策定に向けたデータを収集する。即時発効すると同時に、修正の可能性や今後の進め方について一般からの意見募集も行われている。
今回の大きな決断の背景には、業界で期待されていた包括的法案「CLARITY法」が上院で十分な賛成を得られず停滞したという事情がある。法案の足踏みが続く中、SECが独自の権限を行使する道を選んだ形だ。
ナスダック、NYSE、DTCCなど、すでに大手金融機関やインフラ企業もブロックチェーンを活用した決済・取引インフラの構築に動いており、市場全体の関心が高まっている。
既存証券と暗号資産プラットフォームの競争激化
今回の規制緩和により、コインベース(Coinbase)などの暗号資産ネイティブ企業が米国市場でのトークン化株式の取り扱いを本格化させる見通しだ。これにより、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)傘下のE*Trade(イー・トレード)やチャールズ・シュワブ(Charles Schwab)といった既存の大手証券会社との間で、直接的な競争が激化する可能性がある。
一方で、SEC当局者は、米国の公開企業がどの程度の関心を抱いているか未知数である点を認めている。SECの暗号資産タスクフォースを率いるヘスター・パース(Hester Peirce)委員は、対象範囲が限定されたものであると強調し、過度な期待を抱かないよう注意を促している。
株式のトークン化が定着すれば、24時間体制の取引や即時決済、小口保有の拡大といったメリットがもたらされる一方、詐欺や市場操作を禁じる法律は引き続き全面的に適用される。今回の5年間の特例措置は、投資家保護や公正な市場基準を担保しつつ、責任あるイノベーションを育むための試金石となる。
























