ロシアに本拠を置く仮想通貨取引所であるWEX(ウェックス)が約93000ETH(約20億円)の資金を仮想通貨取引所Binance(バイナンス)を利用して、資金洗浄していたようである。
WEXでは利用者の資産であるBTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)の出金を7月から閉鎖しており問題視されていた。
WEXは利用者に対し充分な説明がなく出金を停止しており、今月被害者たちがロシアの当局に対し、本件についての申し立てを行い、Webサイトでは”WEX詐欺”の被害者の会のホームページも開設されている。
WEXのアカウントの監視を行っていた被害者団体からの申告を受けて、 Binanceでは今年の8月〜10月に掛けて25回以上にわたり、総額約93000ETHを移動した二つのアカウントを25日に凍結していたことを公表した。
またツイッターなどでWEXのCold Wallet(コールドウォレット)から大量の仮想通貨を資金洗浄されていることを指摘されると、BinanceのCEOであるCZ氏は以下のようにコメントしている。
the identified accounts are frozen, please report to law enforcement and have a case number. We will work with LE. This is part of centralization we hate too, dealing with other exchange's mess (we don't even know the details). But we will do what we can. https://t.co/tgyYI5ptqx
— CZ Binance (@cz_binance) October 30, 2018
指定された口座は法的執行機関に報告し、凍結した。私達はLE(法的執行機関)と協力して対処にあたる。
これは他の取引所が混乱する、私たちが最も嫌いな中央集中化の一部だ(詳しくはわからない)。
だけど最善は尽くす。
WEXのインフラストラクチャーの元となっているのは、2017年7月にMt.Gox(マウント・ゴックス)から盗まれたBTCを資金洗浄していたことから、米国当局から営業の停止を命じられたBTC-Eである。
またBTC-Eの元運営者であるAllexander Vinnik(アレクサンダー ヴィニック)氏は15年前に世界中を驚かせたMt.Gox事件から流出したBTCを保持していた容疑でギリシャで逮捕されている。そのような過去を変えようと、BTC-Eを買収し、再出発する形でWEXとなった取引所は一時順調に進んでいるように見えていたが、取り引きペアにおける価格の分離が生じてしまっていた。そして今回、WEXが資金洗浄をしている疑いがさらに高まった状態となったわけである。
今回の件に関して全面的に協力をみせたBinanceや、米国NY州のBitlicense(ビットライセンス)を取得済み取引所であるコインベースを皮切りに、多くの仮想通貨関連事業者が仮想通貨の悪いイメージの払拭に尽力してきてる。実際、仮想通貨やBTCのイメージはMt.Gox事件の直後やシルクロードが話題になっていた数年前と比べて、大幅に向上していると言ってもいいだろう。
日本ではコインチェックの事件などがありながらも、先月の24日に金融庁がJVCEA(日本仮想通貨交換業協会)に対し、自主規制団体としての認定をしており、世界各国の政府からも仮想通貨及びブロックチェーンを正当な業界として規制をしていく姿勢をみせてきいる。しかし、今回のような事件は信頼性を高めようと努力している仮想通貨企業に泥を塗る行為と何らか変わりないと言えるだろう。
仮想通貨業界では、WEXのように一部の企業が築くイメージとの差別化を図りながら正当性のある印象及び、ブランド力を高めていく必要があるだろう。そういった意味で言えば、BinanceのCEOであるZhao Changpeng氏が規制当局に対しての「全面的協力の姿勢」をみせていることは評価に匹敵すると言えるだろう。
各国が仮想通貨や仮想通貨関連事業者に対しての規制を設け、法的な枠組みの作成をこなっている中で、今回のような事件は仮想通貨業界全体にとって非常にマイナスとなると言えるだろう。ほとんどの仮想通貨利用者及び、事業者が正しく仮想通貨を利用しているのに対し、一部の悪質な利用者たちのせいで仮想通貨業界全体に悪影響を与える現状は改善しなければいけない問題の一つと言えるだろう。今後仮想通貨関連事業者に対しての、認証制度や、仮想通貨を悪用するものに対しての罰則制度が各国の政府によって定められていくことで、今回のような事件は起こらなくなっていくのではないだろうか。