ウクライナ政府、国家準備資産にビットコインを加える法案を発表
ウクライナ政府は、国家準備資産にビットコインなどの仮想通貨を含めることを認める法案を提出した。
これは同国の金融政策における大きな転換を意味し、中央銀行によるデジタル資産の保有と運用を可能にする歴史的な一歩とされている。議会で提出された法案「請求書カード13356号」は、仮想通貨を国家戦略の一環として財務管理に組み込むことを目的とするもの。特に注目されるのは、ビットコイン(Bitcoin/BTC)がウクライナ国立銀行の外貨および金準備に追加される点だ。
この法案は、ヤロスラフ・ジェレズニャク(Yaroslav Zheleznyak)議員率いるホロス党の議員団によって提出され、同議員は、仮想通貨の準備金化はウクライナの国際的義務に抵触しないと説明している。法案が可決されれば、NBU(ウクライナ国立銀行)は仮想通貨の準備金化に関して「時期・方法・量」を独自に決定できるようになる。
また、議会の公式ポータルでは、同法案が公開されており、仮想通貨が国家財政の一部に位置づけられる方針が明示されている。
ウクライナが進めるビットコイン準備金構想
仮想通貨の国家準備金への組み入れは、単なる法制度の整備にとどまらず、ウクライナの経済回復と安定に直結する国家戦略でもある。
実際、同国は2024年12月時点で46,351 BTCを保有しており、その多くが戦時中に寄付や募金によって集められたもので、寄付の総額は48億ドル(約6,869億円)に上り、国際的な支援の中核を担った。
また、法案の提出には民間セクターからも支持が集まっている。バイナンス(Binance)の東欧地域責任者であるキリル・ホミャコフ(Kirill Khomyakov)氏は、今回の動きを歓迎し、仮想通貨に関する法的枠組みの整備に向けた重要なステップになると評価した。
他国との対比と中央銀行の反応
ビットコイン準備金の導入に関しては、他国の中央銀行は慎重な立場を保っている。
ECB (欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は、デジタル資産は流動性や安全性の面から準備金として適切でないとの見解を示している。また、スイス、チェコ、ポーランドなども同様に仮想通貨を準備金として採用していない。
それでも、ウクライナはビットコインの国家利用を先導する存在として注目されており、今後の議会審議や法的枠組みの整備に国際社会の関心が集まっている。
社会の反応と今後の展望
今回の法案提出はSNSでも広く反響を呼び、X上では専門家やアナリストがウクライナの動きを称賛しており、「国家による仮想通貨導入は予想以上に加速している」との声も見られた。
ウクライナ国立銀行は現時点でビットコインの保有に関する声明を出していないが、法案が成立すれば今後の対応方針が示されると見られる。仮想通貨を国家財政に取り込む動きは、マクロ経済の安定と金融技術革新を両立させる試みでもあり、ウクライナのモデルが他国にも波及する可能性がある。