国境をまたぐ不正と仮想通貨市場の保護強化
SEC(米国証券取引委員会)は、国境を越えた金融詐欺や仮想通貨のパンプアンドダンプに対応するため、新たにクロスボーダー・タスクフォースを立ち上げた。
I'm pleased to announce the formation of the Cross-Border Task Force. This new task force will consolidate SEC investigative efforts and allow the SEC to use every available tool to combat transnational fraud. https://t.co/loDtj1CClV
— Paul Atkins (@SECPaulSAtkins) September 5, 2025
クロスボーダー・タスクフォースの設立を発表できることを嬉しく思います。この新たなタスクフォースは、SECの捜査活動を統合し、SECがあらゆる利用可能な手段を活用して国境を越えた詐欺行為に対抗することを可能にします。
初動では、オフショア企業による米国連邦証券法違反の疑いを優先し、市場操作への関与を精査する。投資家保護を強化するため、国内外の当局やCFTC(米商品先物取引委員会)との連携も進める方針である。
SECの越境タスクフォースの狙い
タスクフォースは、外国拠点の企業による市場操作やポンプアンドダンプ、ランプアンドダンプのスキームを優先的に調査する。
フォレンジック市場(※1)分析や国際協力を組み合わせ、資金の流れと責任主体の特定に取り組む。SEC内部では執行部、企業財務部、取引・市場部、国際問題部が連携してリソースを統合する。
ラテン語で“法廷の”という意味を持っており、仮想通貨に関連した不正・不法行為や詐欺の解明、証拠収集、分析をする事
捜査対象は発行体にとどまらない。監査人や引受人など、米国資本市場への不正アクセスを可能にするゲートキーパーも追及する。仲介の段階で不正を抑止し、越境構造の悪用を困難にする狙いである。ポール・S・アトキンス委員長は「米国資本市場へのアクセスを求める世界中の企業を歓迎する」としつつ、「国境を利用して投資家保護を妨害し回避しようとする企業、仲介業者、ゲートキーパー、搾取的なトレーダーは容認しない」と述べた。執行部のマーガレット・A・ライアン氏は、この取り組みが証券法の執行能力を強化し、国際的な不正から投資家を守ると強調した。
仮想通貨市場の詐欺事例と今後の展望
ソラナ(Solana)上のいわゆるCR7トークンは、一時時価総額が500万ドル(約7.3億円)を超えた後にゼロへ暴落した。
過去の別バージョンでは1億4,300万ドル(約210.5億円)の流出が発生したとされ、小規模トークンに対する誇大宣伝と投げ売りの典型例となった。LIBRAでは、開発チームが流動性プールから8,700万ドル(約128億円)を引き出し、スナイパートレーダーが1億700万ドル(約157.5億円)を現金化したことで価格が約94%下落。規模の大きい案件でも流動性の急速な毀損(きそん)が起こり得ることを示す事例である。
規制連携と制度整備
SECとCFTCは2025年9月29日(月曜日)に共同の円卓会議を開催し、規制の調和と機関間の連携強化を議論する予定である。
必要に応じて情報開示ガイダンスや規則変更の検討も視野に入れる。執行と制度整備の両輪で越境詐欺への対応力を高める狙いだ。タスクフォースは、海外拠点の不正行為とそれを支える仲介網の双方を対象に、捜査の網を広げる。投資家は、より協調的な機関横断の調査体制の構築と、開示や規則面の強化による保護の向上を見込める。今回の施策は、仮想通貨を含む国際市場の秩序維持に向けた一歩である。