自民党・山本氏「デジタル通貨の発行には、法律改正が必要」

自民党・山本氏「デジタル通貨の発行には、法律改正が必要」

自民党の山本幸三金融調査会長は12日、日本銀行が構想する中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行するためには「日銀法改正」が必要であり、もしその法律を改正する際には金融政策の目的を踏まえて議論すべきであると、ロイターのインタビューに語った。

また日銀法改正の必要性を語った山本幸三金融調査会長は続けて、米連邦準備銀行(FRB)のような雇用の最大化とともに物価の安定性を日本銀行の金融政策の目標として明記する必要があると言及し、具体的に「2%のインフレ目標を盛り込むことが望ましい」と述べている。

今回の発言は、先日、日本銀行が公開した個人や企業など幅広い利用を想定したCBDCへの取り組み方針に関するレポートが大きく関係しているようだ。日本銀行は9日、現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画がないとした上で、発行・流通・還収の基本機能に関する検証を行う「概念実証フェーズ1」を2021年度の早い時期に開始することを目指しているとレポートに記載している。

しかし山本幸三金融調査会長は、CBDCの実証実験を「今年中に始めるべき」と言及しており、他国や民間銀行との競争に危機感を覚えているようだ。実際に山本幸三金融調査会長は、「日本銀行は、円を弱体化させる可能性があり、独自デジタル通貨を発行する民間企業に追い抜かれる危険性がある」と述べ、次のように早期のCBDC実証実験を進めるべきであると語っている。

民間からあまりにも便利なものが出てくると、人々は通貨単位としての円が必要なのかどうか疑い始めるかもしれない。そうならないようにしなければならない。これは根本的に日本の通貨主権を守ることだ。

日本銀行のCBDC発行計画は、他国から大きな遅れを取っていることは事実である。既に中国は先日、中国中国広東省深セン市が主導となり、中国人民銀行が発行するデジタル人民元を国民に限定的に配布し、個人のスマートフォンを使用して、中国人民銀行と連携した実証実験を開始している。

このデジタル人民元の実証実験は現段階で、総発行枚数1,000万元(約1億5,700万円)が配布され、抽選で1人あたり200元(約3,200円)が配布されており、個人のスマートフォンから専用アプリをダウンロードして使用することができる。また国民は既に専用アプリを使用して買い物などでデジタル人民元を使用している。

中国深セン市、約3,200円相当の「デジタル人民元を配布」で実証実験を開始

2020.10.12

もし本当に日本銀行が現時点で、実証実験を開始しておらず、リサーチや検証の段階で止まり、大手の民間銀行が現金(紙幣)よりも便利なデジタル通貨を既に構想・実証実験をしている場合、国民は日本円の必要性を感じることがなくなる可能性が十分にある。