日本銀行、中央銀行デジタル通貨への取り組み方針を発表

日本銀行、中央銀行デジタル通貨への取り組み方針を発表

日本銀行は10月9日、現時点で中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する計画がないとした上で、決済システム全体の安全性と効率性を確保する観点として、個人や企業など幅広い利用を想定したCBDCへの取り組み方針を発表した。

日本銀行が発表したレポートは、中央銀行デジタル通貨は大きく分けて「ホールセール型CBDC」と「一般利用型CBDC」の2種類に分類され、個人や企業など幅広い利用を想定した場合の「一般利用型CBDC」について記載されている。この「一般利用型CBDC」を導入する際に期待される機能や役割について、以下の3つの項目を重要視しているようだ。

  • 現金と並ぶ決済手段の導入
  • 民間決済サービスのサポート
  • デジタル社会にふさわしい決済システムの構築

これらは、法定通貨が流通が大幅に減少することはないとした上で、もし今後、民間のデジタルマネーが現金が有する機能を十分に代替えできない場合には、現金に代わる決済手段として「一般利用型CBDCを提供することが考えられる」と記載。また「現金に需要がある限り、日本銀行は現金の供給についても責任を持って続けていく」と続けた。

この一文に込められた背景には、現金の流通がなくなることはないため、CBDCを発行することはないという意味合いになる。しかし、日本銀行は今年1月、6つの主要な中央銀行と協力して電子マネーやCBDCの潜在的な可能性を調査することを目的とした共同研究を行うグループを立ち上げており、デジタル通貨に関する研究は着実に進められている。

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2020.10.09

また「今後の取り組み方針」についても記載されており、実証実験、制度設計面の検討、内外関係者との連携を中心にCBDCの可能性について研究を続けているようだ。特に実証実験については、これまでリサーチが中心の検討だったのを見直し、実証事件の実施を通じて、「CBDCの基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証する」のだという。

さらに日本銀行は、これらの実証実験を行う上で、必要と判断したときには、既に中国などが実施しているパイロット実験を要否について検討するようだ。

  • 概念実証フェーズ1
    システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証を行う。
  • 概念実証フェーズ2
    フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する。
  • パイロット実験
    概念実証を経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れて検討していく。

上記の概念実証フェーズ1については、2021年度の早い時期に開始することを目指しているようであり、もし仮に、CBDCの導入を検討する場合には、システム面、制度面はもちろん、広範囲かる大規模な取り組みが必要になるため、銀行やノンバンク決済事業者、ITや法律の専門家、関係当局などと協力して、様々な知見から検討に活かすと記載されている。

今回のレポートでは、現時点でCBDCの研究については、リサーチ段階にしか至っておらず、基本構築やパイロット実証は当然のこと、実証実験すら行われていないことが分かった。これは世界の中央銀行から大きく遅れを取っており、「概念実証フェーズ1については、2021年度の早い時期に開始することを目指している」という項目を待つしかないようだ。