仮想通貨の代表的銘柄のひとつにイーサリアムがあります。ブロックチェーン上で将来的な支払いを約束できるスマートコントラクトや各種トークンを作成できるプラットフォームなど、イーサリアムには通貨として以外にも様々な機能を持ち合わせていることが特徴です。
2018年12月現在でもイーサリアムは開発が続けられており、時価総額でもビットコインに続く2位と人気のある仮想通貨です。
しかしイーサリアムの根本的な機構を見直して差別化を狙うLISK(リスク)、ADA(エイダ)、NEO(ネオ)などの仮想通貨も存在します。今回はそんなイーサリアムと似た性質を持ちつつも差別化を狙う仮想通貨リスクについて解説します。
目次
リスク(Lisk/LSK)の最新価格・相場・チャート・評価
リスク(Lisk/LSK)の特徴・詳細
リスク(Lisk/LSK)とは|その目的について
リスクとはイーサリアム同様にスマートコントラクトなどの機能を併せ持った仮想通貨です。2018年12月現在の時価総額ランキングは30位前後になります。
マルタの仮想通貨取引所バイナンスが取引量の30%強を占めていますが、ロシアの取引所であるヨービットや中国系の取引所であるコインエッグなどでも取引されています。日本でもビットフライヤーがリスクを取り扱っています。
リスクはイーサリアム同様にプラットフォームの作成を目的とした仮想通貨です。プラットフォームとは新しいアプリやソフトを開発するための基礎となるもので、開発されたアプリやソフトの評価によってプラットフォーム自体の評価も左右されることになります。
EthereumとLiskの違い
イーサリアムとリスクにはプラットフォーム作成にもデフレ対策に関して大きな違いがあります。
イーサリアムもリスクも2018年12月現在では発行上限は設定されていませんが、リスクだけにはブロックが300万個生成されるごとにマイニングの報酬が減っていくように設定されています。
初期のマイニング報酬は5LSKでしたが、2018年11月に4LSKに減少しています。2019年11月には3LSK、2020年11月には2LSKと、1LSKになるまで減り続ける設定になっています。
JAVAスクリプトを採用
イーサリアムでは開発言語にSolodity(ソリディティー)を採用しています。逆にいうとソリディティー以外ではイーサリアムのプログラムを書くことはできません。
これに対しリスクではJAVA(ジャバ)を開発言語としました。
ジャバの特徴は、仮想通貨以外でも使用されていることが多いというところです。スマートフォンのアプリなどでもジャバで動いているものは多く存在しています。それだけ広く普及しているのでジャバを扱えるプログラマーの数も多く、仮想通貨業界以外からのプログラマー流入を期待できるというのが大きな強みです。
逆にジャバのデメリットとして、実際にプログラムを書く前に具体的な全体像を描く必要があるという問題点があります。
どのように起動するのか、どんな拡張機能があるのかをイメージしておく必要があります。また複数人のグループで開発に取り組む場合は、グループ間で最終的な全体像の共有をしておくことも重要になってきます。リーダーが他のグループメンバーに対して、全体像のイメージを伝えなければなりません。
しかしジャバは全体像が難しいため、他の人に説明するのは更に難易度が上がります。このような理由から、あまり初心者向けとはいえないプログラミング言語です。
Liskを支える3つの仕組み
スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、将来的なお金の支払いを約束する機能です。契約と説明されることもあります。イーサリアムによって初めて導入された機能ですが、2018年12月現在ではリスクを始めとする複数の仮想通貨に導入されています。
スマートコントラクトのメリットは、手数料が抑えられることです。本来正式な契約を交わすためには、契約書・印鑑・印紙など複数の道具を揃える必要があります。場合によっては仲介役として弁護士の同席が必要になる場合もあるでしょう。
しかしスマートコントラクトであれば、このような道具を揃えることも関係者が一同に集まる時間の調整をする必要もありません。これが大きな強みとなります。
dApps(分散型アプリケーション)
まだ一般的とはいえないスマートコントラクトですが、課金を前提としたゲームアプリの中には既にスマートコントラクトを導入したものも少なくありません。ゲーム業界では元々ブロックチェーンによるデータ管理が検討されていました。スマートコントラクトを導入していないゲームであっても、ゲーム内のアイテムやお金といったデータをブロックチェーンで管理しているゲームが存在しています。
更にイーサリアムやリスクなどのプラットフォームを使い、ブロックチェーンによって自立的に管理されたアプリケーションをつくることも可能です。
こういったアプリケーションはdapps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)と呼ばれています。
dappsゲームの特徴は、使用したプラットフォームの仮想通貨をゲーム内でも使用するところです。イーサリアムのプラットフォームで作成したdappsゲームならば、ゲーム内でもイーサリアムが基本通貨になります。同様にリスクのプラットフォームで作成したdappsゲームの場合は、リスクがゲーム内で流通することになります。
このようなゲーム内での仮想通貨の取引もスマートコントラクトによって管理されています。
サイドチェーン
ブロックチェーンは分岐することはあるものの、正しいとされる鎖は一本だけです。他の鎖は途中で途絶えるか新しい仮想通貨として使用されるかのどちらかになります。
しかし鎖が一本だけだと全ての負荷が一本の鎖に押し付けられることにもなります。特にイーサリアムは通常の仮想通貨としての役割だけではなく、スマートコントラクトやdappsなどのプラットフォームとしての役割も担っています。それだけイーサリアムには負荷がかかっているわけです。
実際イーサリアムのネットワークは混雑が目立ってきており、負荷軽減の方法として何種類かの方法が検討されています。そのひとつがサイドチェーンです。
サイドチェーンとは、実際にトランザクションのデータを残しておくメインチェーン以外にデータ処理を行う予備チェーンのことです。リスクでは既にこのサイドチェーンを導入しており、負荷軽減に役立てています。
DPoS(Delegated Proof of Stake)
リスクの採用しているコンセンサスアルゴリズムはDPoS(Delegated Proof of Stake)という独特のものを採用しています。日本語では委任性PoS、委任性プルーフ・オブ・ステークなどと訳されています。
PoSとはオミセゴーやパックコインなどに採用されているコンセンサスアルゴリズムで、所有している数量や所有している年数によってマイニング報酬(正確にはメルティング報酬)が増加するという仕組みです。ビットコインなどで採用されているPoW(プルーフ・オブ・ワークス)では、2018年12月現在でもマイニングの電気代が問題になっています。これはマイナーが好きなブロックをマイニングできること、最初にマイニングに成功した人しか報酬が貰えないことが原因です。
マイニング競争が激しくなり、報酬を得られていないマイニングが多く存在しています。
これに対してPoSでは、マイニングを行う場所がマイナーごとに割り振られます。そのため競争が発生せず、効率よくマイニングを行うことが可能です。このような仕組みにより電気代の節約をしているわけです。
DPoSとはPoSを参考に、保有量によって報酬が変化していくというコンセンサスアルゴリズムです。保有量の多い人ほど得られる報酬は多いですが、保有量の少ない人でも一定の報酬を得ることは出来ます。
DPoSの特徴は2段階で生成するブロックの承認を行っていることです。1段階目で実際にブロックの承認を行う人を選出、2段階目では1段階目で選ばれた人によってブロックを生成していきます。なお似たように2段階での承認システムとしてネオの採用しているDBFT(delegated Byzantine Fault Tolerance )があります。委任性ビザンチン耐障害性コンセンサスメカニズムなどと訳されています。
DPoSとDBFTの違いは生成されたブロックの承認方法です。DPoSの場合、不正が行われたと思われる怪しいブロックがあれば分岐させることでブロックチェーンを維持していきます。
これに対してDBFTでは、ブロックを繋げる段階で選出者からの承認が必要になります。そのためDBFTでは分岐が生まれないようになっています。
リスク(Lisk/LSK)の評価まとめ
リスク(Lisk/LSK)のこれまでの実績
リスクは複数の企業と提携しています。その中でも最も知名度のあるのはマイクロソフトアジュールでしょう。
マイクロソフトアジュールとは、マイクロソフトの提供するクラウドサービスです。2010年から正式にリリースされています。ブロックチェーンやIoTの研究を行うチェンジオブシングスなどとも提携し、開発力を高めています。
IoTとはInternet of Thingsを頭文字をとったもので、パソコンやスマートフォン以外のものもインターネットに繋ぎ情報のやり取りを綿密に行うことを目的としています。
この他にも仮想通貨両替所のシェイプシフト、オンラインマーケティングを行うエキスパンドオンラインともパートナーシップも締結しており、仮想通貨としてのリスクの普及にも尽力しています。
リスク(Lisk/LSK)の今後
リスクは日本国内でもビットフライヤーが取り扱っているなど、2018年12月段階でも比較的知名度のある仮想通貨です。少数ではありますが日本国内で決済として認めている店舗も存在しています。
今後更に普及していくためにはプラットフォームとしての有用性を世間的に認めさせる必要性があるでしょう。
現段階の仮想通貨は全般的に投機対象でしかありません。有用なプラットフォームを生み出し、社会的にどれだけ利用価値があるのかを証明する必要があります。同時にプラットフォーム間の競争の中でも優位性、あるいは差別化をしなければならないでしょう。2018年12月段階でのdappsを見ると、やはりイーサリアムが最も普及しています。
プラットフォームの開発を目標としている仮想通貨はイーサリアム、エイダ、ネオなど複数あります。この中でリスクがどのような立ち位置を目標としているのか明確にしなければならないでしょう。