テザーによって仮想通貨は操作されていない=調査レポート
経済政策研究センターの新たな研究によると、価格の安定した仮想通貨(ステーブルコイン)はビットコインや他の仮想通貨の価格を押し上げている体系的な証拠は見当たらないと調査結果を発表した。本調査はカリフォルニア大学のバークレー校のリチャード・K・ライオンズ氏と、ワーウィックビジネススクールのガネーシャ・ヴィスワナート・ナトラジ氏の両名によって行われた。
仮想通貨の高いボラティリティに左右されない安定したコインの需要は過去2年間で劇的な増加を見せており、2019年にはビットコイン(BTC)とテザー(USDT)の取引合計は、BTC/USDの取引量を上回ると推定されている。しかしテザーは集団訴訟の問題に直面しており、ドル準備金によって1対1で裏付けられてないことや、親会社であるBitfinex(ビットフィネックス)がビットコイン価格の上昇を促進するためにテザー社と共謀した疑いが持たれている。
両名はステーブルコインであるテザーを発行することで主要仮想通貨への価格に影響を及ぼすのか測定したところ、そのような影響はみられなかったという。
「我々の結果は、価格操作が行われた可能性を排除するものではありませんが、発行データの集計に基づくと、系統的な効果はありません。」
このことから調査結果ではテザーを含むステーブルコインの発行は、価格へ介入するような効果を伴わず、為替レートの分散化されたシステムとして機能しているという見方を支持する意向を示した。一方でテザーはビークル通貨として他の仮想通貨の影響を受けており、安定したコインとして避難所のような役割を持っているという。
「仮想通貨市場にリスクの色が色濃く出ている場合、一部の投資家はより優れた価値の仮想通貨に交換することを選択するだろう。ポートフォリオのリバランスはテザーなどステーブルコインが最小限の仲介コストでこの機能を提供する。」
2018年の初頭にビットコイン市場が崩壊する中テザーの価格は、1.05USDドルで取引され、5セントのプレミアムが発生したことでビットコインからテザーへの取引の流れが発生している。また2020年3月に仮想通貨市場が大きく下落した時期もテザーとの間で類似するようなプレミアムを確認できたという。
これらのことからステーブルコインは仮想通貨価格にインフレ効果をもたらすことは無く、デジタル経済を安定させるビークル通貨としての役割を持っていると結論づけた。
「コインの発行がクリプトカレンシー価格に影響を与えるという体系的な証拠は見当たらない。むしろ、安定したコインの発行が内生的に二次市場レートのペグジットレートからの乖離に反応し、安定したコインがデジタル経済のセーフヘブンとしての役割を一貫して果たしているという代替的な見解を支持する証拠となっている。」