テザーが早ければ年内にも米国版USDTステーブルコインをローンチへ
世界最大のステーブルコインUSDTを発行するテザー(Tether)社は、2025年末までに米国市場向けに新商品を展開する計画だと、パオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)CEO(最高経営責任者)が明らかにした。
同CEOは、2025年4月30日(水曜日)のCNBCとのインタビューで、早ければ年内に米国でステーブルコインのローンチを計画していると述べた。ローンチ時期については、米国議会におけるステーブルコイン関連法案の進捗状況次第だと述べている。同社は、法執行機関と積極的に協力し、USDTが米国経済にもたらすメリットを強調することで、米国規制当局の支持を得ようと努めている姿勢を明らかにしたうえで、次のように語っている。
われわれは、米国がこれまでに生み出した最高の商品、つまり米ドルを輸出しているに過ぎない。
テザー社の主力ステーブルコインであるUSDTは、時価総額約1,500億ドル(約21.6兆円)を超え、世界のステーブルコイン市場で66%のシェアを占めており、既に米ドルの最大の「輸出国」であるとアルドイノ氏はCNBCに語った。
USDTの普及はUSDCと比較すると限定的
米国におけるUSDTの普及は、競合であるサークル(Circle)のUSDCと比較すると依然として限定的だ。
USDCは、特に2024年11月のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の大統領選挙勝利以降、米国内で普及が加速。さらに、同社は完全な独立監査を受けていないという問題に直面しており、同CEOは、このギャップを埋めるために取り組んでいると述べた。
同社は最近、サイモン・マクウィリアムズ(Simon McWilliams)氏をCFO(最高財務責任者)に迎え、4大監査事務所の監査法人による監査の実施を推進。現在の報告形式は、イタリアに本拠を置くBDO Italiaによる四半期ごとの監査報告書となっている。
同社は依然として最も収益性の高いステーブルコイン発行会社であり、2024年には140億ドル(約2兆円)の純利益を上げる見込みだ。同社は米ドルをUSDTと交換することで収益を上げ、それを米国債などの高流動性資産に投資している。
今回の動きは、米国下院と上院がSTABLE法案とGENIUS法案という2つの競合する法案を審議している中で行われており、どちらもステーブルコイン発行会社の運営方法、準備金の保有方法、金融機関とのやり取り方法を規定することを目指している。なお、トランプ大統領は、両議員らに対し、8月までに最終版を可決するよう促している。
高まるテザーへの圧力
一方、同社への圧力は高まっており、同CEOは、競合他社と政治勢力の両方がテザーを市場から追い出そうと積極的に動いていると主張。
競合他社が自社製品の改善よりも「Tetherを潰す」取り組みを優先していると非難した。同社はすでに、EU(欧州連合)のMiCA(仮想通貨市場)法の枠組みにおける承認済みステーブルコイン発行者のリストから除外されている。クラーケン(Kraken)やCrypto.comといった大手取引所は、今後数カ月以内にUSDTなどの規制に準拠していないステーブルコインを欧州市場で上場廃止する準備を進めている。