国内外の取引に適用 税収強化と市場規制が狙い
インドネシア政府は8月1日から仮想通貨取引税を大幅に引き上げる事がロイター通信の報道でわかった。
国内取引所で売却する場合は最大0.21%、海外取引所で売却する場合は1%の税率が適用される。登録ユーザー数が2,000万人を超え急成長する仮想通貨市場の税収を強化し、市場の健全性を高める狙いがある。今回の税制改革では、購入者に課されていたVAT(付加価値税)が廃止される一方、マイニング活動には1.1%から2.2%に倍増したVATが課される。さらに、2026年からはマイニング収入に対する特別所得税0.1%も廃止され、標準的な所得税が適用される予定だ。
バイナンス(Binance)が支援する国内取引所Tokocrypto(トコクリプト)は、この税制変更を「仮想通貨を金融資産として位置づける前向きな一歩」と評価しつつ、企業が適応できるよう1カ月の移行期間を設けるべきと提案している。同社は、外国取引の監視や税務執行を強化し、株式市場のキャピタルゲイン税と比べて高負担となる税制を補うための財政的インセンティブも求めた。
急成長する市場への対応
インドネシアの仮想通貨市場は2024年に取引総額が3倍の約397億ドル(約5.9兆円)を超えるなど爆発的に拡大し、登録ユーザー数は2,000万人を超え、株式市場の投資家数を上回っている。
政府は国内取引所の税率を海外取引所より低く設定し、投資家の国内回帰を促している専門家からは取引コスト増による流動性低下や取引量の減少を懸念する声も上がっており、税率引き上げが短期的に市場に与える影響は避けられないとの見方がある。
マイニングや付加価値税の変更
マイニング業界も今回の税制改正で大きな影響を受ける。マイニングに課されるVATは1.1%から2.2%に倍増され、事業者の負担が増す。
一方で、2026年からはマイニング報酬に対する特別所得税(0.1%)が廃止され、一般の所得税が適用される。これにより、規模の小さな新規マイナーにとっては初期コストが相対的に軽減される可能性があり、参入の後押しとなるとの見方もある。
国際的な動きとの比較
インドネシアの増税は、米国やインドの動きと対照的だ。米国ではドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が仮想通貨のキャピタルゲイン税廃止を提案し、利用促進を狙っている。一方インドは仮想通貨税率を30%に据え置き、ビットコインETF(上場投資信託)の承認も当面行わないとしている。
インドネシア政府は税制改革について「市場の透明性と健全性を高めるため」と説明し、今後も仮想通貨市場の適正な管理を進める方針だ。また、インドネシア通信デジタル省(Komdigi)はワールドネットワーク(旧ワールドコイン)とWorld IDサービスについて、疑わしい活動に関する苦情増加を受け登録を一時停止している。