現物償還導入でETFの効率性向上 投資家に新たなメリット
SEC(米国証券取引委員会)は、ビットコイン(Bitcoin/BTC)およびイーサリアム(Ethereum/ETH)のETF(仮想通貨上場投資信託)の現物償還の導入を承認した。
これにより、ETFの株式償還時に現金ではなく現物の仮想通貨でのやり取りが可能になり、運営の効率性と市場の柔軟性が高まると説明している。SECは現物償還の導入により、これまで現金のみを認めていた仕組みを改め、今後は権限のある参加者が株式の発行や償還の際、基礎となるビットコインやイーサリアムを直接授受できる。この措置により発行者と投資家のコスト削減や税務面での効率向上が進むとしている。
ポール・S・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長は
SECにとって新たな時代が到来しました。仮想通貨市場に適した規制枠組みを構築することが私の重要な優先事項です。今回の承認により商品のコストが削減され、効率性が向上し、投資家は恩恵を受けるでしょう。
とコメント。SECのマーク・T・ウエダ(Mark T Uyeda)委員も、従来の現金のみのモデルは不必要なコストや負担を生じさせていたと述べ、今回の決定を評価した。
現物償還の仕組みと投資家への影響
現物償還とは、ETFの投資家が保有株式を現物の仮想通貨と直接引き換えることができる仕組みである。
従来は現金償還が主流だったが、この制度を導入することで発行者が市場で仮想通貨を売却する必要がなくなり、市場価格への影響を抑えられるとされている。ジェイミー・セルウェイ(Jamie Selway)取引・市場部門ディレクターは「現物による発行と償還は、ETF発行者、公認参加者、投資家に柔軟性とコスト削減をもたらし、より効率的な市場を生み出します」と説明。
現物償還は金や石油など他のコモディティETFでは長らく採用されており、今回の承認により仮想通貨ETFも同様の運用手順に沿う形となった。
市場環境の変化と今後の展望
今回の承認は、SECが2024年にビットコインとイーサリアムのスポットETFを認めた際に現金償還のみに限定していた方針からの転換となる。
現物償還を求める声は業界内で高まっており、ヘスター・パース(Hester Peirce)委員も関心の高まりを認めていた。背景には、仮想通貨セクターの成長支援を掲げる政策の後押しや、議会で進む市場構造やステーブルコイン、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)関連法案の可決など規制改革の流れがある。
米国のスポットビットコインETFは直近12日連続で資金流入を記録し、資産残高は66億ドル(約9,871.8億円)に達した。Bitboのデータによると、米国のビットコインETFは現在129万8,000BTC以上を保有し、その評価額は約1,521億ドル(約22.7兆円)となる。
イーサリアムETFも好調で、ブラックロックのiShares Ethereum ETFは運用開始から251日で運用資産100億ドル(約1.5兆円)を突破し、業界3番目の速さでの達成となった。
また、SECは現物償還承認に加え、ビットコインとイーサリアムの混合型ETFやビットコインETFオプションの上場承認、BTC ETFオプションのポジション制限を25万契約に引き上げる措置も発表した。さらに、大型仮想通貨ETFの上場・取引に関する取引所提案についてパブリックコメントを求める新たな命令を出し、仮想通貨ETF市場の規制整備を進めている。
SECは引き続き市場の透明性や不正取引防止を重視しており、発行者にはコンプライアンス体制の強化が求められる。