米政府がトルネードキャッシュ控訴を撤回、TORN価格が上昇

米国政府の制裁撤回を受けて価格上昇したTORNトークンとトルネードキャッシュに関連するビジュアル

Coin Centerの訴訟勝利がもたらす影響と今後の見通し

米国政府が分散型仮想通貨ミキサー「Tornado Cash(トルネードキャッシュ)」に対する控訴を取り下げたことで、同プラットフォームのガバナンストークンであるTORNの価格が急騰した。

今回の動きは、仮想通貨業界にとって一つの節目となり、制裁に対する議論が再燃するきっかけとなっている。
ブロックチェーン擁護団体Coin Centerは、トルネードキャッシュを代表して財務省を提訴。争点となったのは、米財務省が北朝鮮のハッキング集団Lazarus Group(ラザルス・グループ)との関係を理由に、同プラットフォームに制裁を科したことの正当性であった。2024年11月以降、この制裁措置は解除されていたが、再度の制裁の可能性を巡る法的攻防が続いていた。

2022年、OFAC(米財務省外国資産管理局)はトルネードキャッシュ関連の複数のウォレットアドレスを制裁リストに追加。Coin Centerはこれを「法定権限を超えた行為」として提訴し、コインベースが支援するトルネードキャッシュ利用者6名による訴訟も並行して進められていた。

米政府が控訴を断念、再制裁の法的リスクも低下

Coin Centerの主張に対し、テキサス州地方裁判所は制裁の却下を判断。これを不服として政府は控訴していたが、最終的に訴えを取り下げたことで、トルネードキャッシュが再び同様の理由で制裁対象となるリスクは大幅に低下した。

第11巡回控訴裁判所は、Coin Centerと米財務省が共同提出した書類を承認し、下級裁判所の判決を取り消して訴訟棄却を命じる差し戻し命令を出した。これにより、Coin CenterによるOFACへの訴訟は実質的に終結。Coin Centerのエグゼクティブディレクター、ピーター・ヴァン・ヴァルケンバーグ(Peter Van Valkenburgh)氏はXで「これで、制裁の法的根拠をめぐる法廷闘争は正式に終結した。政府は、制裁法の危険なほどに広範に解釈した法廷闘争を前進させ、擁護する意思を示さなかった」とコメントした。

市場では安堵感が広がり、TORNはこのニュースを受けて一時14%以上上昇して10.55ドルに達したが、その後は9.47ドル前後で推移している。

法廷闘争の継続とTornado Cashの行方

プラットフォームは依然として稼働しているものの、共同創業者ローマン・ストーム(Roman Storm)氏はマネーロンダリングや無認可送金業者の運営、制裁違反の共謀などで起訴されており、ニューヨークの連邦裁判所で刑事裁判を控えている。

今回の控訴取り下げが同氏の事件に影響を及ぼすかは明らかになっていない。また、共同創業者のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏はオランダでマネーロンダリング(資金洗浄)罪により有罪判決を受け、5年以上の懲役刑が言い渡されている。さらに、同じ起訴状に名前が記されたローマン・セミョーノフ(Roman Semenov)氏は、現在も逃亡中とされる。

米国政府の対応が今後も注視される中、トルネードキャッシュが信頼を取り戻せるかは不透明だ。監視機関の一部は、将来的な法的リスクが依然として残ると見ており、プラットフォームの地位回復には時間を要する可能性がある。とはいえ、今回のCoin Centerの勝訴は、分散型プロジェクトの法的立場を守るうえでの重要な前例となる可能性を秘めている。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム