グローバル企業が結集しBeacon Network始動 Coinbase・Ripple・Binanceも参画

Coinbase、Ripple、Binanceが参加するTRM LabsのBeacon Networkを象徴する抽象的なビジュアル

業界横断のリアルタイム犯罪対策ネットワークが始動

ブロックチェーン分析企業TRM Labsが、仮想通貨に関わる不正資金をリアルタイムで追跡し現金化前に止める「Beacon Network」の立ち上げを発表した。

Coinbase(コインベース)、Ripple(リップル)、Binance(バイナンス)に加え、PayPal(ペイパル)やRobinhood(ロビンフッド)、Stripe(ストライプ)、Kraken(クラーケン)、Crypto.com(クリプトドットコム)、OKXなど主要企業が創設メンバーとして参画し、法執行機関やセキュリティ研究者と連携する。

Beacon Networkの仕組みと目的

認証済みの捜査官が詐欺やハッキングに関連するウォレットをフラグ付けすると、ネットワークは関連アドレスへリスクラベルを自動で伝播する。フラグ付き資金が参加取引所や発行者に到達した時点で即時アラートが起動し、入金確認から凍結までを現金化前に実行できる。

ZachXBT、Security Alliance(SEAL)、zeroShadow、Hypernativeなどが継続的な脅威監視を担い、Zodia Custody、Anchorage Digital、Bitfinex、HTX、Poloniex、Blockchain.com、1inch、ChangeNow、Rhino.fi、Coinspot、LFJなど多様な事業者もネットワークを支える。

また、法執行機関パートナーと検証済み取引所にはアフィリエイト会員枠が無償提供され、迅速な参加と情報共有を促す設計だ。

参加企業と関係者の声

創設メンバーの広がりは、従来の金融と仮想通貨事業者が一体で防御線を築く枠組みを示す。

Coinbaseのマネーロンダリング(資金洗浄)対策責任者ヴァレリー・レイラ・ジャバー(Valerie-Leila Jaber)氏は「真の早期警告システム」と表現し、KrakenのCJ・リナルディ(CJ Rinaldi)氏も「リアルタイムインテリジェンスで瞬時に行動できる」と評価した。また、PayPalのデビッド・シュクマン(David Szuchman)氏は、業界リーダーと法執行機関が連携する枠組みに参画できた意義を強調する。Robinhoodのメリッサ・バビン(Melissa Babin)氏は、この協力が安全で回復力のあるエコシステムの構築に不可欠だと語った。

米国の政策動向との重なり

発表は、米国財務省がステーブルコイン監督に関する意見募集を開始した直後の時期と重なる。米上院も仮想通貨市場構造法案に犯罪対策条項を盛り込む検討を進めており、規制整備の動きと並走する形で実務の連携網が整い始めた。

拡大する被害と迅速対応の必要性

TRM Labsの推計では、2023年以降に詐欺関連アドレスへ流入した資金は470億ドル(約7兆円)超に達する。

今年(2025年)はすでに23億ドル(約3,421.7億円)以上がハッキング被害で失われ、2月のBybit事件では被害額が15億ドル(※現在レートで約2,231億円)規模にのぼった。攻撃者は1カ月の間に1万件を超える取引で資金を動かし、従来の個別対応では追随が難しい実情を示した。最近ではCoinDCXでも4,400万ドル(約65.5億円)規模の被害が報告されている。

HTXのCISO(Chief Information Security Office:最高セキュリティ責任者)ハイゼン・グオ氏は、単独チームでは対抗できないとしたうえで、業界全体の協調防御の必要性を指摘。RippleやBinanceも、自社の経路を通る不正取引の遮断に協力する姿勢を見せており、ネットワークの即応性と回収可能性の向上に期待がかかる。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム