トランプ・メディアが仮想通貨分野への本格進出に向けた巨額調達案
トランプ前大統領が関与するTMTG(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ)は、仮想通貨業界への参入を見据え、最大30億ドル(約4,300億円)の資金調達を計画している。
同社は保有株式の一部を活用し、仮想通貨関連企業の買収を進める方針だ。TMTGは、20億ドル(約2,878億円)の新規株式発行と10億ドル(約1,439億円)の転換社債の発行によって資金を確保する計画で、株式は市場価格(金曜日の終値で約25.72ドル)で売却される見通しとなっている。これにより、同社の時価総額は約60億ドル(約8,638億円)に達する見込みだ。
調達の発表は、2025年5月27日(火曜日)から29日(木曜日)にラスベガスで開催される「2025年ビットコインカンファレンス」に先立って行われる可能性がある。イベントには、J.D.ヴァンス(JD Vance)副大統領、トランプ氏の息子であるドナルド・ジュニア(Donald Jr)氏、エリック・トランプ(Eric Trump)氏、仮想通貨アドバイザーのデビッド・サックス(David Sacks)氏らが参加予定とされ、マイケル・セイラー(Michael Saylor)氏をはじめとする業界関係者の登壇も報じられている。
この調達スキームは、MicroStrategy社がビットコイン購入において採用している手法と類似しており、株式や社債を通じて仮想通貨への資金流入を図る戦略といえる。
トランプ一族とTMTGの仮想通貨事業展開
TMTGおよびトランプ一族はこれまでも仮想通貨分野に関与しており、NFT(非代替性トークン)トレーディングカードや複数のミームコイン、マイニング事業「American Bitcoin」、ステーブルコイン支援団体「World Liberty Financial」などに関与してきた。
また、Crypto.comと提携し、ビットコインとクロノスを追跡するETFの立ち上げも検討されている。
今回の引受業者としては、Clear StreetとBTIGの名が挙がっており、資金調達の枠組みの中核を担うとされている。TMTGは報道内容に対し肯定も否定もしておらず、情報源に対して批判的な姿勢を示すにとどまっている。
トランプ・ジュニア氏は現在、TMTG株式の53%(約30億ドル相当)を取消可能信託を通じて管理しており、議決権を保有している。
規制強化と利益相反への懸念
この動きは、トランプ氏が「米国を仮想通貨の中心地にする」と公約する中での展開だが、同時に仮想通貨関連事業に対する監視強化を招く可能性も指摘されている。
民主党議員の一部は、トランプ一族の仮想通貨活動に反対しており、5月22日に開催されたミームコイン関連の非公式ディナーに対して抗議活動を行った。トランプ氏の仮想通貨関与に対しては、利益相反の懸念も根強い。自身の影響力が関連事業に及ぶことで、公私の線引きが曖昧になることへの批判が続いており、今後の政治活動と仮想通貨業界との関係性が注目される。