デジタル人民元はすでに試行取引済み
中国人民銀行は、CBDCパイロットの一環として、すでに11億元を送金していることを同銀行の副行長が明かした。
中国人民銀行(People’s Bank of China=PBoC)は、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency=CBDC)パイロットの試行の一環として、300万件を超えるトランザクションを処理した。これは11億元(約171億円)に相当するという。10月6日(月曜)の仮想会議「Sibos2020」で、PBoCのファン・イー・フェイ(Fan Yi Fei) 副行長は、次のように述べた。
8月下旬までに合計113,300件分の個人用デジタルウォレットと8,859件の企業用デジタルウォレットが開かれた。
DCEPはコロナパンデミック貢献者に赤封筒を付与
FinTech Futuresの報告書によると、副行長は内部クローズドパイロットが深セン、蘇州、雄安で開始されたことを確認した。また、PBoCは北京で開催される冬季オリンピックで人民元をテストする予定とのことだ。
Join Fan Yi Fei, Deputy Governor, People’s Bank of China, for the first of this year’s Views from the Top – 15:30 CET. #Sibos https://t.co/rZpK28x4xn pic.twitter.com/FUV1tXjy8m
— Sibos (@Sibos) October 5, 2020
報じられた内容によると、銀行は、請求書の支払い、ケータリングサービス、輸送、ショッピング、政府サービスなどの分野を含む、CBDCの6,700を超えるユースケースを調査しているという。
さらに、深センの羅湖(らこ)区の約5,000人の医療従事者に対し、コロナウイルスパンデミックとの闘いに貢献したとして、デジタル人民元が含まれた“赤封筒”を付与している。これらの資金は、地区内の特定の店舗などで使えるとのことだ。
中国DCEPが与える世界的影響とは
中国人民銀行のフェイ副行長は、デジタル通貨の有効性について、次のように説明している。
「通貨の進化」によって銀行が国境を越えた支払いを改善することを可能にする重要な要素である。デジタル法定通貨を使用することで、相互運用性を実現し、低コスト、低リスク、高効率というトリレンマ(※1)に対処できた。これら仮想通貨資産から法定通貨を保護し、金融の主権を保護するには、中央銀行は、新しいテクノロジーを通じて紙幣をデジタル化します。
(※1) トリレンマとは、国際金融論上の一説であり、一国が対外的な通貨政策を取る時に、「為替相場の安定」、「金融政策の独立性」、「自由な資本移動」の3つの好ましくない状況を言い、この場合、低コスト、低リスク、高効率を指している。
PBoCは、DCEPを将来の重要な金融インフラストラクチャーと見なしていると同氏は説明しており、近年では分散型台帳テクノロジーとビットコインなどの仮想通貨資産の開発により、ステーブルコインが出現し、流通している法定通貨に置き換えることで利益を得ることができルト解説した。
中国は、デジタル人民元のローンチに先立ち、アメリカ財務省債の保有を現在の1兆ドルを超えるレベルから8000億ドル弱に減らす可能性があると指摘されている。中国のCBDCの出現は、世界的な影響を与える可能性があり、米国の議員たちは、中国のDCEPにスポットを当てたデジタルドルの必要性について話し合うためにすでに会合を開いている。一方、アメリカの国家情報局長官は、米ドルが世界的な支配を失うことの影響を調査するために研究者を探していることを公にしている。