デジタル人民元の裁判
世界各国で急速なデジタル通貨が検討および計画が進むなか、ウォールストリートジャーナルによると、中央銀行主導のCBDC(Central Bank Digital Currency=デジタル人民元)裁判の大幅な拡大を計画していると報じている。
中国商務省は14日、デジタル通貨が、最も発展した地域の主要都市で裁判にかけられると発表。
これらには、河北省、揚子江デルタ、広東省、北京、天津、香港、マカオの都市が含まれるという。中国の中心部と西部の一部の貧しい地域も、特定の要件を満たせば、裁判に参加できる可能性があると付け加えており、裁判の内容やいつ始まるかは明らかにされなかったが、厚労省はプロジェクトの設計は今年の終わりまでにまとめられることが望まれると述べている。
デジタル通貨はすでに深セン、蘇州、成都、西安などの地域で勢いをつけており、商業団体もこのイニシアチブを支援している。Tencentが所有するいくつかの企業は、中国の人民銀行の研究部門と協力してデジタル元のテストを実施していると言われている。商務省は、デジタル通貨やAI(人工知能)のような革新的なテクノロジーの使用は、国の経済を後押しし、「より価値の高い」産業を奨励することを目的としていると付け加えている。
デジタル人民元発行の遅れ?
現在中国のデジタル人民元は、発行目前と言われてきたが、ここへきて大幅な遅れが出ている事も海外メディアによって報じられている。2014年から研究に着手したと言われている中国CBDCだが、昨年夏頃より、発行または流通目前という報道が目立っている。
デジタル人民元は、すでに80以上の特許をとり、基本設計を終えており、今年5月からは蘇州、深圳、成都、雄安新区にて、パイロットテストが開始されている。実用化に向けた具体的な実験
には、スターバックスやマクドナルドのほか、サブウェイなど、中国内外の企業が参加している。
当初、2019年中に流通するとみられてきた中国デジタル人民元だが、現時点で報じられている内容を総合すると、今年中に地方レベルのテストを終え、2021年中には、全国的な展開を図り、遅くても北京冬季オリンピックが開催される2022年2月(予定)には使えるようにする予定とのことだ。この時期をあえて選んだのは、世界的にお披露目することで、中国がデジタル通貨市場でリーダーシップを握りたいとの思惑があるとみられる。
アメリカはデジタル人民元に警戒感
一方、貿易・金融戦争真っ只中と言われるアメリカの中央銀行であるFRB(The Federal Reserve Board=連邦準備制度理事会) ラエル・ブレイナード(Lael Brainard)理事が13日、「一国で発行された欠陥のあるデジタル通貨は金融安定の問題を他国にもたらす恐れがある」と述べ、名指しは避けたものの、中国のデジタル人民元に警戒感をあらわにしている。
同理事が警戒感をみせた背景には、個人情報保護、マネーロンダリング(資金洗浄)などの課題が解消されていないことが指摘されており、Libra(リブラ)計画が法、金融、通貨の各役割に対し、根本的な課題を浮き彫りにしたと語っている。
世界をけん引してきた国々を追い抜き、世界2位の経済大国を誇る中国だが、世界初デジタル人民元を流通させることで、世界規模でのインパクトは大きいだけに、早々に流通させたい思惑とは裏腹に、流通のタイミングも重要なのかもしれない。