2020年、ブロックチェーンが次世代フェーズへ

2020年、ブロックチェーンが次世代フェーズへ

2019年が終わりに近づき、来年に向けた整理と準備を行っている。今年も一年間、RegTech及びGovTechソリューションを通じて、世界のブロックチェーン産業がよりコンプライアントでフェアなビジネスができる法的・環境整備に邁進した。活発に活動し続けた実感はあったが、年間フライト移動距離は48万キロ(地球12周分)に達し、1年で150回も国境を跨いだ。計算すると、2. 5日に1度別の国に移動するスケジュールとなった。

成果の一端としては、夏にCIO Outlookの世界トップ10RegTechソリューション・プロバイダーのひとつに選出され、グローバル市場で一定の知名度が出てきたと自認できた(参考:https://regulatory-technology.bankingciooutlook.com/vendor/qrc-group-strengthening-blockchain-through-regulatory-compliance-cid-560-mid-61.html)。来年も引き続き、RegTech及びGovTechを通じて、ブロックチェーン産業を後押しする活動を続けていきたい。

2019年、世界各国のブロックチェーン事情

今年も世界中で様々な出来事があった。ブロックチェーン業界最大のニュースは、6月に米Facebookが、独自の暗号通貨を発行すると発表したことだ。米トランプ大統領がこの動きを痛烈に批判し、欧州の規制当局も厳しい見方を示したため、強い反発の中での船出となってしまった。さらに、プロジェクトの運営評議会であるLibra Associationの初期メンバー28社から、Visa, Master, Paypal, eBayなどの主要メンバーが抜けてしまったことで、プロジェクトの先行きが不安視されている。

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2019.07.12

他方で、デジタル決済の分野において、Libraの発表が与えた影響は大きい。その代表格が中国だ。中央銀行にあたる中国人民銀行が、2014年下旬にデジタル通貨の研究を始めてから5年、今年の下旬まで取り立てて大きなニュースは流れてこなかった。ところが、Libraのプロジェクト発表以降、夏から中国人民銀行による独自デジタル通貨開発強化が推進され、10月には暗号技術に関する法律が議会を通過して、技術開発を後押し。12月には、深センと蘇州で、デジタル通過電子決済のテストの報道まで流れてきた。

中国の年間モバイル決済額はアメリカの10倍

この一連の動きには、中国によるデジタル通貨の覇権掌握の狙いがあるのではないかと見ている。中国のスマホユーザーは7億9千万人、ネットユーザーは8億人である。Forkastの調査によれば、中国のEコマースの世界シェアも、2005年時にはわずか0.4%だったのが、2016年には42.4%まで拡大。この間、Eコマース全体の市場も5000億ドルから、2兆ドルまで増えているので、中国国内における顕著な市場拡大が見て取れる。中国に行けば、もはやAlipayやWeChat Payを通じてデジタルに決済を行うことは当然であり、結果、中国の年間モバイル決済額はアメリカの10倍を超えるほどになった。

米ドルが世界の基軸通貨として覇権を握るなか、これに対抗するかのように、中国主導のデジタル通貨が一帯一路に乗って、世界の機軸デジタル通貨になるかもしれない。1月の退任を控えた英国中央銀行のイングランド銀行のカーニー総裁は、今年8月、「現状維持を思慮なく受け入れるのは誤り」として、より良い選択肢としての世界規模のデジタル通貨体制を提唱し、米ドルの準備通貨としての支配的な影響力の低下につながるとした。この発言自体は、各国政府関係者から歓迎されるものではなかったが、中国による世界通貨の未来を予見しているかもしれない。

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2019.08.27

Union Payのクロス・ボーダー・アプリや、4大銀行の技術開発、500を超える国内ブロックチェーン・プロジェクトなど、中国を支える屋台骨はますます強固になっている。戦略的に優先度の高いものとして、中国人の73%がブロックチェーン を押していることも、国家戦略推進の原動力となっている。2020年も様々な動きがあると予期されるので、引き続きウォッチしていきたい。

STOスペシャリストが注目するIOHKとエチオピア政府

このような動きの中で、著者が気になっているのは、IOHKとエチオピア政府による、国営暗号通貨の発行構想である。ご存知の通り、IOHKは、Cardanoプロジェクトを構成する3つの組織の1つであり、主に開発を担当する法人である。今年4月に、兼ねてから農業プロジェクトや大学での教育を進めてきたエチオピアの政府と、IOHKがMOUに調印。発行された暗号通貨は、同国の首都アディスアベバで、公共料金の支払いなどに使われる予定だ。

エチオピアの法定通貨はBirrと言うが、最も大きい紙幣が100 Birr札で3米ドル程度の価値なので、100米ドル両替すると、大変な量の紙幣を受け取ることになる。かなりくたびれている紙幣も多く、印字が消えてかかっていたりするので、デジタルに置き換わると、支払い時の間違いはなくなり、やりとりはかなり便利になるのではないだろうか。

盛り上がりを見せるIOHKの現状

余談だが、そのIOHKと私自身、2018年夏にアディスアベバでミートアップを行ったことがある。Director of African OperationsのJohn O’Connorと対談形式のものだったが、当日の会場となったカフェには若者を中心に150人程度の人が集まった。質問も多く上がり、その多くは、伝統的な産業に従事する彼らのブロックチェーン化の推進に関するものだったことを記憶している。

同じ東アフリカのRwandaの首都Kigaliのインキュベーション・センターを案内してもらった際にも(この時は、Charles Hoskinsonとも一緒だった)、コーヒー産業などの伝統的なビジネスのブロックチェーン化に向けた取り組みについての説明を受けた。地理的に遠く離れたアフリカにおいても、ブロックチェーン技術の導入は進んでおり、その中心は若者だ。来年もアフリカは2−3ヶ月に一度は行くので、より具体的なプロジェクトも、このコラムから発進していきたい。

ブロクチェーン業界の未来

さて、今後、ブロックチェーンのプロジェクトの将来的な展望としては、SDGsに適応したビジネスであることが重要になってくるのではないかと見ている。SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年までの国際社会における目標だ。17のゴールと、それぞれのゴールを達しするための具体化された目標としての169のターゲットから構成されている。

ゴールの中には、『貧困の撲滅』『飢餓の根絶』『ジェンダー格差の撤廃』といった項目が含まれる。今年、グレタ・トゥンベリ氏の登場で一層注目を集めた『気候変動への対策』も17のゴールに入っている。

「アフリカはビットコインの未来!」=ツイッターCEO

2019.11.29

新技術の課題解決

新しい技術が開発され広く一般化する際に、過去の技術では対応できなかった課題への解を提示することは、人類の進歩において極めて重要だ。SDGsに記載される項目においては、過去と比較し前進しているものは非常に多い。例えば、世界銀行の統計によれば、1981年の貧困ラインを下回る世界人口は19億人であったのに対し、2015年には7.3億人と、著しく進展している。

その上で、開発途上国における農業インフラの整備や、ブロックチェーンを活用した生産能力向上や輸出プロセスの進展は、農家や農業に携わる人々の所得を上げる可能性を持つ。食糧供給のあり方を変える技術は、効率的な生産プロセスを生み飢餓を減らすことに貢献するだろう。我々が携わるプロジェクトにも、こういったSDGsに裨益するものがどんどん出てきている。

こうした視点から、2020年のブロックチェーン業界を見ると、伸び代のあるプロジェクトが見えてくるかもしれない。開発途上国のトレーサビリティに関するブロックチェーン導入のミーティングを、東アフリカで行なっている今年最後の長距離出張で、そう強く感じた。

では、良いお年を。

Shogo Ishida / CEO, QRC HK Ltd.

RegTechやGovTech分野で世界をリードするQRC HKの代表。QRCは、レギュレートリー・コンプライアンスのプロフェッショナル集団として、世界中の法人や公的機関などにアドバイザリーを行う一方、RegTech分野のマーケット・リーダーへの投資も行う。
拠点のあるアジアのみならず、中東、アフリカ、欧州など世界中にクライアントを有し、著者は毎月10か国を訪問する。政官民いずれの勤務経験があり、日本語、英語のみならず、5か国語に精通している。

・公式Twitter:Shogo Mubarak Ishida(@shogo_m_i

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