アフリカの経済大国ナイジェリア|2億人市場の絶大なポテンシャル
新型コロナが猛威を奮っている。株式市場への影響も甚大で、ダウ工業株30種の平均は、2月12日に市場最高値の29,551.42ドルをつけて以降急落の徒を辿り、3月11日には23,553.22ドルへと、下落率2割を超えた。原油価格も、世界重要の鈍化を受け、米国産WTI原油先物価格は、2月12日の終値51.65ドルから、一時30ドル割れを経て3月13日時点で33.25ドルまで下がった。
各国の出入国制限も拡大しているので、移動にも制限がかかる。大幅に出張を見直し、できる限り国境を越えないようにしている。当社QRCのある香港は、SARSの教訓から拡大防止への対応が早く、1月中には全学校の一斉休校通達がなされ、中国からの入境ポイントを次々と遮断した。2月上旬には、あらゆるビルの入り口に消毒液が置かれ、エレベーターボタンにはビニールを設置の上頻繁な消毒がなされる。当時、すでに外出する人は著しく減っていたが、街中でマスクをしていない人を見つける方が困難なほどであった。
政府や民間企業の自衛意識は極めて高く、コロナ拡大を香港全体で一気に制限したため、2月に街中から姿を消した人々は、3月には企業に戻り仕事ができる環境が整っている。とはいえ、2018年に利用客数7400万人で世界第8位の香港国際空港は閑散とし、多くの便がキャンセル、減便となった。
こうした中、3月上旬にナイジェリアに行ってきた。私が関わるプロジェクトの四半期ごとの会議に参加するためだが、普段顔を合わせる人らも消毒液を持参し、こまめに手を洗浄していた。
アフリカのブロックチェーン・仮想通貨の領域は?
アフリカのブロックチェーン/暗号通貨産業については、アジアで報道される機会はまだまだ少ないが、そのポテンシャルは甚大だ。2017年の年間のBTCの全取引量の6%はナイジェリア単体で起こっており、Binanceが発表したリサーチによれば、2011年から2019年の間のGoogleでBitcoinをサーチした国別ランキングで、Nigeriaは圧倒的に一位だ。2億人に迫る人口がサーチ数を後押ししているのだろうが、継続して国内のトレンドの一つになっていることは間違いない。
他方で、ファイナンシャル関係のレギュレーター(SECや中央銀行)からは、BTCのトレードに対するリスクや、資金洗浄、薬物売買、人身売買などに利用される可能性などへの言及がなされ注意喚起はなされている。現時点では、ナイジェリア国内で暗号通貨に関する法的枠組みは整備されていないが、現地法律家の見解は、そう遠くないうちに整備されるのではないかとの見方も多い。
既にナイジェリア進出をしているプロジェクトも
ローカルのプロジェクトはすでにいくつも立ち上がっているが、Nigeriaの進出に対して動きが早かったのはやはり大手で、Binanceは、2019年1月に現地のBinance LabのBD Directorを雇い、投資およびインキュベーション対象のプログラムを開始している。Binanceは、今年3月4日には現地通貨であるナイラとメジャーな暗号通貨の取引が開始された。
ブロックチェーン技術のアダプテーションについては、従来の関心の高さに加え、2016年9月にIsa Ali Pantami博士が、ITを管轄する政府組織NITDA(National Information Technology Development Agency)の長官に就任してから一気に加速した。
Isa博士は、2018年末に”Blockchain in Nigeria”という論文を発表。国内の様々な分野における発展とともに、ブロックチェーンがもたらすであろう可能性と他国に遅れまいとする意思、NITDAが中心となって技術導入に向けた指針の作成に向け議論を牽引することなどが記された。
ブロックチェーン基盤の乗客リストシステムの導入
2019年7月、道路交通従事者の労働組合が、ブロックチェーン企業とパートナーを組み、ブロックチェーン・ベースの乗客リストシステムの導入に向けた取り組みを開始した。ナイジェリアでは国内の移動手段は陸路が主流。一方で、交通事故や移動中の誘拐も頻発しているものの、乗客の管理が適切にされていないことから、当事者の個人特定が困難でああった。結果として事故被害者への適切な治療がなされないという事案が発生しており、こうした状況を改善するために、ブロックチェーン技術を活用しデジタル化への舵を切った形だ。
これからのナイジェリアは?
南アフリカを上回り、アフリカ最大のGDPを誇るナイジェリアは、人口も2億人近くで平均年齢17.9歳と大きな成長力を包含している。Binanceのように現地通貨とペアしている例や、2018年末にブロックチェーン宝くじ会社のQuantaが現地ライセンス企業を買収し、ブロックチェーン宝くじの普及に向けた取り組みを進めていることなどによる海外のプロジェクトによる多分野でのユースケースの登場が今後顕著に起こってくるのではないかと見ている。
なお、Isa博士は昨年9月から、コミュニケーションおよびデジタル経済大臣に就任し、前職の経験を生かして同国内のデジタル経済の推進に力を発揮していくものと思われる。NITDA長官としてIsa博士の後を継いだのは、Kashifu Inuwa Abdullahi氏で1980年生まれと若い。MITやハーバード、ケンブリッジなど海外の名門校のマネージメントやリーダシップコースに参加するなど、欧米の感覚を持っている。中央銀行で技術アーキテクトを務めたあと、NITDAで国内ICT戦略を履行し、2018年Q2にはICTがナイジェリアGDPの13%に達する成長に貢献した。こうしたキャリアを持つ人物が、ブロックチェーンを含むデジタル化を推進しており、規制の枠組み作りやブロックチェーンの導入が進んでいく礎ができているように思う。
実際、国内はまだまだアナログによる商業活動が主流ではあるし、現地に赴けばその実感は一層高まる。他方で、スマートフォンの普及は、2018年の約2500万人から、2025年には1億4000万人まで爆発的に増えると予想されており、デジタル産業が一気に広まっていく未来がある。
Shogo Ishida / CEO, QRC HK Ltd.
RegTechやGovTech分野で世界をリードするQRC HKの代表。QRCは、レギュレートリー・コンプライアンスのプロフェッショナル集団として、世界中の法人や公的機関などにアドバイザリーを行う一方、RegTech分野のマーケット・リーダーへの投資も行う。
拠点のあるアジアのみならず、中東、アフリカ、欧州など世界中にクライアントを有し、著者は毎月10か国を訪問する。政官民いずれの勤務経験があり、日本語、英語のみならず、5か国語に精通している。
・公式Twitter:Shogo Mubarak Ishida(@shogo_m_i)