カカオ豆のトレーサビリティ管理とフェアトレードに、ブロックチェーン技術を活用
国連開発計画(UNDP)とオランダの非政府組織フェアチェーン財団が協力してカカオ豆の生産にブロックチェーンを活用したうえで、生産者と消費者のトークンエコノミクスな関係性を新たに構築するための取り組みを共同で開始した。
現状のカカオ豆の生産背景と需給バランス
現状のカカオ豆の需給バランスは生産者側に大きく傾いており、カカオ豆の供給過多の状態になっている。その為、生産者側と需要家企業の間で価格の折り合いがつかず、近年ではかなり不安定な値動きを見せている。これに対して生産者側はカカオ豆の買取価格の引き上げを要求しており、主な生産国として知られているコートジボワールとガーナでは最低販売価格を企業に対して提示しており、1t当たりの出荷量に対して2600ドル(約28万円)という条件で取引が行われている。
また、それに対して今回の実証実験が行われているエクアドルでは、1t当たりの買取価格が2100ドル(約23万円)と低い水準であることが分かる。実際に農家に支払われる金額は、チョコレート市場全体の920億ドル(約10兆円)の金額に対して3%の還元しか受けることが出来ないのだ。このような市場背景から生産者側の不満は募る一方である。
生産者と消費者の新たな関係性構築へ
今回の実証実験の内容は、エクアドル産のカカオで生産するチョコレート菓子「ジ・アザー・バー」のパッケージにQRコードを記載することで消費者から生産者に対してトークンを通して生産者に寄付できる仕組みになっている。主な特徴は下記の通りである。
- パッケージのQRコードを読み取ることで、購入した商品を生産するのに費やしたコストと、カカオ豆の元となった木の特定が出来る。(生産コストと原料のトレーサビリティ管理)
- チョコレート菓子を4個購入した消費者はカカオ豆一本分の苗木を生産者にトークンを通して送る事が出来る。(選択肢として、次回購入分から25%offを選択することも可能)
- 実際に自分が送った苗木の成長や、消費ルートなどをGPS機能と連動して確認することが出来る
(一般消費者がこれまで関わることの出来なかった経済圏に参加してもらうことで消費意識の変化が期待される)
上記のような事が可能になるメリットとしては、生産者への事業貢献以外にも消費者の意識付けを変える事にも繋がっているとして、フェアトレードの創設者である、ギド・バン・スタベレン氏は下記のように発言している。
「技術を使うことの一番の目的は、消費者の行動に影響を与えることで、原則、すべての製品を資本主義効果の原動力に変えることだ」
今回の取り組みは欧州のみを対象にチョコレートを2万枚限定で販売するようである。この期間で消費者からの反応を伺いながら、市場に対してどれだけのインパクトを残し、購買意欲に変化をもたらすのか精査するようだ。
今後の取り組みと、消費者の求めるのも
近年では、グローバルにおいてエシカル思考が広まり、消費者の購買心理に変化が見られてきたようだが、以前として消費者の選択肢としては、購買という経済活動でしか市場に影響を与えることが出来なかった。しかし、ブロックチェーンベースのトークンエコノミーの世界では商品や生産計画など、ありとあらゆる物がトークンとして見立てる事で自由なマーケットを創出することが可能になる。
近年では、様々ブロックチェーンプラットフォームが確立されており、ユースケースも日を追うごとに増えているので、各団体の今後の取り組みに益々注目していきたい。