ついにブロックチェーンで電力を個人間売買する時代に?トヨタ・東京大学らが実証実験を開始へ
国立大学法人東京大学(以下、東京大学)、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)、TRENDE株式会社(以下、TRENDE)が5月23日、ブロックチェーン技術を活用し、電力網につながる住宅や事業所、PHV(プラグインハイブリッド車)間での電力取引を可能とする次世代電力システムの共同実証実験を開始すると発表した。
3社は2019年6月17日から1年間、トヨタの東富士研究所とその周辺エリアで実証実験を行う。
電力供給は大規模集約から分散型へ
電力は全国津々浦々ほぼ全ての住宅や事業所で使用されるものだが、そこへ供給する電力を生み出す役割は、電力会社が運営する大規模な発電所が担ってきた。
しかし、太陽光パネルや蓄電池などの分散型電源の普及に伴って、国内の電力供給システムは従来の大規模集約型から個人や企業が電源を保有する分散型へ移行しつつあるという。
更に、家庭の電力と接続して大容量の電気を蓄電できるPHVの登場によって、太陽光パネルや蓄電池といった電力専用の設備を購入していない家庭でも、大容量の電力を蓄えることが可能なケースが増えてきた。
そのような分散型電源を保有する人と電力消費者が、需給バランスに応じた市場価格で電力を直接売買できるようになったとしたら、いったいどのような経済性が発揮されるのか。そして、それらは電力供給システムとして有効なのか。
それを検証しようというのが、今回の実証実験なのだという。
分散型電源と電力消費者をつなぐ電力取引所を新設
仕組みとしてはこうだ。
まず、実証実験に参加する家庭や事業所がアクセスできる電力取引所を新設し、各家庭や事業所の側にはAIを活用したエネルギー管理システム(電力売買エージェント)を設置する。
この電力売買エージェントが、各家庭や事業所の電力消費と太陽光パネルの発電量予測などに応じて、電力取引所に対して自動で電力の買い注文・売り注文を出す。電力取引所はそうして集まった注文を一定のアルゴリズムに基づいて自動でマッチングさせ、電力の個人間売買を成立させるのだ。
売買が成立した後は既存の電力網を通じて電力が供給されるわけだが、これらの取引を記録する部分にブロックチェーン技術が活躍しているという。
ブロックチェーンはビットコインの技術として登場したため仮想通貨のイメージが強いが、技術的には仮想通貨以外の分野での活用にも期待が集まっている。台帳情報をネットワーク参加者全員で共有することで、データの改竄耐性が高いデータベースを安価に構築することができるからだ。
なお、トヨタは車両用電力売買エージェントの開発、東京大学は電力取引所の構築と事業所用電力売買エージェントの開発、そしてTRENDEは家庭用電力売買エージェントの開発をそれぞれ担う。
日本国内においても多くの企業がブロックチェーンを用いたプロジェクトを進めているが、いよいよ電力という社会基盤までもが話題に上ってきた。これからブロックチェーンの社会実装が更に加速していきそうだ。