ビットコインをはじめとする仮想通貨の最大の特徴であるブロックチェーン。
ブロックチェーンは取引データを一定ごとのブロックと呼ばれるデータの塊にし、そのブロックを鎖(チェーン)のように繋いでデータを記録する技術です。さらに、第三者によるデータの改ざんを防ぐ強固なシステムを構築することができます。
これにより取引のデータは誰でも閲覧することができ、不正な取引(トランザクション)を見つけることができます。
しかし仮想通貨モネロは、仮想通貨の匿名性という特徴とは逆の、匿名性の取引(トランザクション)を可能にする仮想通貨なのです。匿名性はプライバーシーを守るために安全な使用方法もありますが、取引履歴が分からなくなるという危険な面も持ち合わせています。
今回は、世界中の匿名性通貨の中で最も取引高が多い仮想通貨モネロについて解説をしていきます。
目次
モネロ(Monero/XMR)の最新価格・相場・チャート・評価
モネロ(Monero/XMR)の特徴・詳細とは?|匿名性通貨に優れた仮想通貨とは?コインチェック事件に関わったモネロを徹底解説
匿名性を実現する仮想通貨Moneroとは?
2017年末からのビットコインの高騰により、日本国内では仮想通貨、特にビットコインの知名度は飛躍的に伸びました。しかし2018年に入ってからのビットコイン相場の下落により、仮想通貨やビットコインは詐欺だったのではないかという声が挙がっています。
仮想通貨自体に利用者を特定する機能はありません。しかし利用者1人1人に関連付けられているアドレスによって、誰が何枚の取引や送金を行ったかが明らかにされています。アドレスの履歴を追うことで、利用者の生活スタイルを推測することは可能です。
利用者がどのアドレスを使っているかは、本人にのみ公開されています。ですが何らかの理由でアドレスが特定、あるいは解析されてしまうと、ハッキングなどのサイバー攻撃や物理的な犯罪行為などの標的になる危険性が高まるわけです。
匿名性のある仮想通貨では、誰がどのアドレスを使っているのか特定されないように工夫が施されています。モネロではクリプトナイトと呼ばれる特殊なアルゴリズムを採用し、リング著名やワンタイムアドレスという仕組みが導入されています。
ただし、この仕組みはモネロ独自の工夫というわけではありません。2012年に公開されたバイトコインという仮想通貨で使われていたものです。
バイトコインもモネロと同じく匿名性を目指した仮想通貨になります。モネロは、バイトコインを基に誕生した仮想通貨です。
高速なトランザクションを実現
仮想通貨のトランザクション処理速度は、しばしば問題になります。例えばビットコインのトランザクションは約10分です。これはビットコインを構成しているブロックチェーンの新しいブロックの生成が約10分かかるためです。
トランザクションの速度は送金速度に直結します。ビットコインの場合だと、10分以内の送金を希望することは現実的ではありません。2017年8月のsegwit導入によりビットコインの送金速度は速くなりましたが、それでも送金速度は速くて10分です。
これに対しモネロでは、約2分でトランザクションが完了します。ビットコインの5分の1の速度で取引や送金などの承認を行ってくれるわけです。
特殊アルゴリズム|CryptoNight(クリプトナイト)
仮想通貨ではデータに特殊な暗号を施しています。銘柄ごとに採用している暗号方式(アルゴリズム)は異なり、マイニング難易度にも関わってきます。
例えばビットコインの採用しているアルゴリズムSHA-256は、10年以上前に開発されたこともあり中身はシンプルです。そのためマイニングに特化した回路ASICを利用することが可能となっています。
モネロではクリプトナイトと呼ばれるハッシュ関数を採用しています。モネロの基となっている仮想通貨バイトコインも採用していたハッシュ関数です。
クリプトナイトではトランザクションを追跡が出来なくなっており、トランザクション間も繋がらないようになっています。このようにして高い匿名性を実現しているわけです。
更にクリプトナイトはCPUとGPUの両方でマイニングを行うことができる、ASICでは対応しにくくなどの特徴もあります。
特にGPUでマイニングできることの意味は大きく、高性能のGPUを搭載しなくともミドルスペックのGPUを複数枚搭載することで十分な効果を期待できます。
なお現在のASICはクリプトナイトにも対応しています。そのためモネロ関係者の中にはASIC耐性を上げるべきだという意見も出てきています。
なぜXMRは高い匿名性を実現できるのか?
リング署名とは
ビットコインなどの仮想通貨では利用者が取引や送金などを行った場合、トランザクション情報は加工されることなくマイナーによる承認作業を待つことになります。
これに対してモネロでは、トランザクションが公開される前に一度溜められます。そしてトランザクションとアドレスがランダムに結び付けられネットワーク上に公開されます。これによってどのアドレスが何を行ったのか特定できないようになっているわけです。このような仕組みをリング著名といいます。
リング著名の特徴は完璧な匿名性には繋がっていないという点です。プールされるトランザクションとアドレスは時間である程度限定されるため、総当りすれば正解の結びつきにたどり着くことも可能になります。
そこでモネロではリング著名だけではなく、ワンタイムアドレスという仕組みも導入しています。
ワンタイムアドレスとは
モネロの匿名性をより高めているのがワンタイムアドレスと呼ばれる使い捨てアドレスです。ビットコインではアドレスは1つのものを一生使い続けることになります。
お陰で送金相手の管理には便利ですが、何らかの事情で変更したいと考えた時に対応できないというデメリットもあります。
しかしモネロであれば、アドレスは毎回使い捨てです。送金する時には相手のアドレスを毎回確認する必要がありますが、アドレスによって利用者が特定される心配はなくなります。
またモネロのアドレスは95文字で構成されています。ビットコインのアドレスは27~34文字ですので、約3倍の長さとなっています。
ワンタイムアドレスのアイディアそのものは仮想通貨だけではなく、クレジットカードやオンラインゲームなどの本人認証として使われているワンタイムパスワードと同じものです。
モネロ(Monero/XMR)の将来性は?
2018年10月時点、モネロは時価総額ランキングでも10位前後を位置している仮想通貨です。認知度も高く、以前は日本国内の仮想通貨取引所であるコインチェックでも取引されていました。一方でモネロの匿名性が犯罪行為に加担していることも指摘されています。
近年特に注目を集めているのはダークウェブの存在です。ダークウェブとはインターネットの一部であり、専用のソフトが無ければアクセスすることもできません。そんなアンダーグラウンドな世界の取引でモネロのような匿名性のある仮想通貨が使用されています。
匿名性通貨は仮想通貨市場に必要なのか?
このような状況を回避するために、仮想通貨によるマネーロンダリングへの対策やテロリストへの資金流入を防ぐ方法を検討しています。世界の主要国や新興国によって構成されているG20でも、2018年7月に行われた会議で仮想通貨が議題のひとつに挙がりました。
1989年に設立された政府間機関であるFATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)に対してもG20は、2018年10月までに国際規則の明確化を求めていました。FATFは10月19日に声明を発表し、仮想通貨に対するガイドラインの段階的更新を公言しています。
日本の金融庁でも仮想通貨取引所に対して、自動車免許や公共料金の支払い書などによる利用者の本人確認を義務付けています。これまで本人確認不要としていた海外の仮想通貨取引所の中にも本人確認の義務化、あるいは本人確認がなければ送金できないなどの厳格化を進めているところもあります。
一方でまだ本人確認を不要としている取引所も存在します。特に多くの仮想通貨のウォレットでも送金なしで機能しているShapeshiftやChangellyといった両替所は、今でも本人確認を不要としています。
中でもChapeshiftは、マネーロンダリングに利用されているという指摘もあります。実際に2017年に国内最大の仮想通貨取引所であったCoinchack(コインチェック)のNEM大量ハッキング事件。
このハッキング事件ではコインチェック取引所で仮想通貨NEMがハッキングされた後、いくつかの取引所を経由する際に仮想通貨Monero(XMR)にトークンが交換され、アドレスの追跡ができなくなる自体が発生しています。
匿名性通貨の今後は、マネーロンダリングへの対策やテロリストへの資金流入を防ぐことが条件となっています。
しかしその反面、インターネットが普及している世の中でマネーロンダリングや違法な商品を販売しているダークウェブサイトとは切れない縁にあります。ダークウェブサイトがあり続ける限り仮想通貨モネロはそれに伴って存在し続けることになるでしょう。
匿名性通貨のメリットとは?
匿名性通貨の最大のメリットは個人情報の漏洩防止です。特に近年はビットコインを始めとする仮想通貨で決済を行える店も増えてきました。
このような店で仮想通貨による決済を行うことで、利用者の行動範囲を大きく絞ることが出来ます。最悪物理的に狙うことさえ可能です。
特にビットコインのような通常の仮想通貨のアドレスは一生使い続けることになります。直接犯罪行為に巻き込まれることがなくとも、単純に気持ち悪いという感情を持つ人もいるでしょう。
モネロのような匿名性の高い仮想通貨ならば、このような不安を解消することが可能になるわけです。
モネロ(Monero/XMR)の評価まとめ
Monaroは匿名性通貨として仮想通貨市場で生き残れるのか?
モネロが今後も生き残るためには、大きく2つの障害を抱えています。1つは匿名性通貨全体が抱えている問題、2つ目は匿名性通貨の中での生存競争です。
匿名性通貨全体が抱えている問題は、マネーロンダリングに利用されるという危険性です。G20、FATFといった国際機関、政府間機関が本腰を入れています。
匿名性通貨に個人情報漏洩防止というメリットがあることは事実ですが、匿名性通貨全体で犯罪を排除する仕組みつくりに乗り出さなければならないでしょう。実際日本でもかつてはコインチェックが、モネロ・ダッシュ・ジーキャッシュ・オーガといった匿名性通貨を取り扱っていました。
しかしコインチェックは金融庁からの認可を受けることが出来ず、2018年1月の資金流出及びその後の金融庁調査などから取り扱い中止を決断しています。
加えてモネロが生き残るためには、ダッシュ・ジーキャッシュ・オーガといった他の匿名性通貨とは異なる独自性を生み出さなければなりません。時価総額ランキングでいうとモネロ・ダッシュ・ジーキャッシュの間に大きな差はありません。トランザクションの速さやマイニングのしやすさという特徴も、モネロ・ダッシュ・ジーキャッシュ全てに言える共通点となっています。
そこでモネロは、Bulletproofs(バレットプルーフ)というプロジェクトを計画しています。プライバシー機能を改善することで、より高度な個人情報の保護と取引手数料の削減を目指すというものです。
更にASIC耐性の上昇を掲げており、マイニングの集中化防止もプロジェクトに含まれています。バレットプルーフ が今後のモネロの行く末を占うことになるでしょう。