IoTとは、「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳されます。スマホやPCはもちろん、自動車や家電、ウェアラブルデバイスなど身の回りのあらゆるモノがインターネットに接続され情報交換がされる仕組みのことです。2020年から実用化される第五世代移動通信システム5Gによるインターネット回線の高速化などと関連して、新しい技術インフラの根幹となる概念として多く語られています。
IOTA(アイオタ/MIOTA)は、そんなIoTの世界を見越し、デバイス間での流通に焦点をあてて開発された仮想通貨です。
IOTAについて、データの送受信を手数料無料で行うことを実現した分散型台帳である「DAG/Tangle」についての詳細から問題点、今後どうなっていくのかなどについて、詳しく解説していきます。
目次
アイオタ(IOTA/MIOTA)の最新価格・相場・チャート・評価
アイオタ(IOTA/MIOTA)の特徴・詳細とは?|モノのインターネットを繋ぐIoT技術の仮想通貨
IOTAは、2015年のICOで3億円を集め、2017年6月にリリースされたドイツを拠点とする仮想通貨トークンです。上場したその日に仮想通貨の時価総額ランキング6位まで昇りつめるという衝撃的なデビューがニュースになりました。通貨略号はMIOTAで、発行上限は約2,800兆MIOTAとなっています。
発行上限が他の仮想通貨と比べてものすごい数なのは、IOTAがIoTでの利用を促進しているため、ほんの数秒間に何百、何千ものトランザクションをさばくのに、単位が細かすぎると不便になるからというのが理由だそうです。取引所によっては、100万枚を1単価というような株の単元のような扱いで取引されているようです。
IOTA(アイオタ/MIOTA)とは?
前述のとおりIOTAはIoTで活用されることを目的に開発されました。IoTでの利用とは、ざっくり言うと個人(と個人に付随する、モノやデバイス)の間でのマイクロペイメントおよびマイクロトランザクションのことですが、IoTで創り出される未来については詳しい説明が必要なので、これについては後述します。
また、これらIoT利用の実現のため、IOTAの大きな特徴として、仮想通貨でありながらブロックチェーン技術を使用していないことと、手数料が無料であることが挙げられます。この2つについても、追って解説をしていきます。
IoTが創り出す未来
まず一つ目、IoTで創り出される未来について。IoTが実現することとは、「労力の削減」と「社会保障の増大」です。デバイス間の通信で、今まで人が行っていたり、通信でつながっていない複数の道具で対応していたものを繋げ、一気に活動の効率性を上げます。さらに身体のデータをリアルタイムで解析することで、より健康的で保証のされた生活が実現されるでしょう。
例えば、リビングのソファーに寝っ転がっているだけで、心拍数や体温から健康状態、さらに疲労やストレスの状態から空腹感までを感知し、より快適に過ごせるソリューションを全自動で提案したり、身に着けたウェアラブルデバイスで睡眠時間や摂取・消費カロリーを記録し、健全な生活をする手助けを行います。取得された健康データは保険や社会保障制度とも連携し、より社会的であろうとする人が功利的に生きることができる世の中になると考えられます(ディストピアな感じもしますが。。)。また、デバイスを介して照明の明るさや鍵の開け閉め、空調を整えたり湯を沸かしたり、必要なアイテムの注文から情報の受け取りまで、自動化された生活空間で便利に過ごすことができるようになります。最近の商品でいうとGoogle Homeのイメージです。
独立系のITコンサルティング会社であるアイ・ティ・アールの報告では、IoTをビジネス活用している組織や会社は増加傾向にあり、その適用文化も多様性を増しているそうです、また、IoT市場は2017年に約4,850億円を記録しましたが、2020年には1兆3,800億円へと急速に成長すると予想しています。
IOTAは、このバズワードの提案する流れに乗ろうと画策しています。そしてその切り札として、Tangleというトランザクション処理機能を実装しています。
送金手数料無料で優秀なトランザクション処理
先に、マイクロペイメントおよびマイクロトランザクションについて触れました。実はIoTには大きな課題があります。それが、ごく小さなやり取りにかかる利益とコストが見合わない可能性があることです。
例えば、AさんがBさんへ0.01円の報酬を渡した時に、Bさんがその報酬を受け取るために第3者へ支払う手数料が0.01円よりも大きかった場合、Bさんは報酬をもらったはずなのに損をしてしまうことになります。これではやりとりが成立しません。細かいやりとりを頻繁に行うIoTでは、この問題は致命的なものです。
【DAG】ブロックチェーン技術を使っていない!?
ブロックチェーン技術は、取引承認に多少なりともコストがかかってしまう構造であるため、この問題への解決には多くの試行錯誤がなされてきました。前述のとおりIOTAはブロックチェーン技術を採用していません。代わりに、DAG(Directed acyclic graphの略/有向非巡回グラフ)と呼ばれる技術を採用し(IOTAはこれをTangleと呼びます)、手数料の無料化と効率的なトランザクション処理を実現しています。
ブロックチェーン技術では、取引情報がブロックにまとまり、線的に一方向でつながって鎖のようなものを形成するイメージです。これに対しDAGは、ブロックを作らずにトランザクションを一つずつ処理していきます。そして、一つの取引情報に対して複数の取引情報がぶら下がっていくイメージです。このイメージを糸に例える人もいます。
このトランザクション処理は、取引を行った人が過去に行われた複数の取引を承認する格好になるため(取引者がノードになるため)、承認に体制を組むマイニングのような概念がありません。つまり、DAGでの承認には報酬は発生しません。DAGを採用している仮想通貨にはマイナーがいないのです。このことでIOTAは取引承認のコストをゼロにし、送金手数料無料を実現しました。
また、取引者が承認者であるということで、ユーザーが取引を行うだけ承認がされ、トランザクション遅延が解消されるという構造になっています。このことでいくらトランザクションが増えても重くなることはなく、高速なトランザクション処理を可能としています。さらに、取引の承認は1度ではなく不特定多数のユーザーに複数回される必要があるため、改ざんも難しい仕組みになっています。
アイオタ(IOTA/MIOTA)の評価まとめ
IoTに特化した仮想通貨であるIOTAは、IoTというバズワードとともに未来を拓いていくと考えられます。向こう数年の技術的流行がどうなっていくかに着目しながら今後を見定めるのが有効だと言えるでしょう。
IoTやマイクロペイメントに特化した仮想通貨はIOTAだけではありません。有名どころではイーサリアムクラシック(Ethereum Classic/ETC)やQtum(クアンタム/QTUM)があり、これらがIOTAと比較されることもよくあります。IoTの未来が実現し、仮想通貨が多く流通されるとしても、そこで流通するコインがIOTAである確証はありません。そのような意味で、今後の動向には注目する必要があります。
アイオタ(IOTA/MIOTA)のこれまでの実績
IOTAは、IoT関連企業との業務連携をいくつも結んでいます。大きなところでは、ITネットワーク企業であるCisco Systems社、ドイツを代表する自動車会社のVolkswagen AG社、ドイツの自動車部品会社Robert Bosch GmbH、韓国のIT企業Samsung Groupなどです。日本の企業としては、富士通がIOTAを標準プロトコルとして採用すると発表しました。富士通の工場での監査証跡やサプライチェーンなどで利用していくとのことです。
IoTのデバイスとして主要なものはやはりスマホと自動車だと考えられます。そのどちらも手堅く抑えており、目的がぶれていない印象です。
アイオタ(IOTA/MIOTA)の今後
繰り返しですが、IOTAはIoTと一蓮托生。しかも同業の仮想通貨にライバルが多くいる状況です。Tangleによる手数料無料化は大きなアドバンテージとなりうるかもしれませんが、さらなる技術革新でこれらが過去のものになる可能性がないとは言えません。
なお、IOTAはまだメインネットをローンチしておらず、発展途上のコインだとも言えます。複数の最先端技術系企業とのパートナーシップの中で揉まれ、さらによいソリューションを展開していくこともありえます。また、IOTAは取引ができる仮想通貨取引所がまだまだ少ない状況です。そのなかでも多くの信頼を勝ち取り時価総額ランキング上位に名を残していることに、ポテンシャルの高さが伺えます。
IOTAの前途はまだまだ未知数だと言えるでしょう。今後も注目していきたい仮想通貨トークンです。