全額喪失?カナダ最大の仮想通貨取引所、CEO死去でウォレットにアクセスできなくなる

全額喪失?カナダ最大の仮想通貨取引所、CEO死去でウォレットにアクセスできなくなる

カナダ最大の仮想通貨取引所QuadrigaCXが31日、顧客から預かる仮想通貨約1億4,700万ドル(約160億円)のほぼ全額を喪失し、破産による債権者保護を裁判所に申請したことが明らかになった。

理由は同取引所のコールドウォレットを管理していたCEOが死去したことで、誰もコールドウォレットへのアクセスができなくなってしまった為だという。海外仮想通貨メディアcoindeskが報じた。

CEO妻が宣誓供述書を提出。驚きの管理実態が明らかに

QuadrigaCXはGerald Cotten CEOによって2013年11月に創設されて以来、カナダ最大の仮想通貨取引所としての地位を確立してきた。しかし今回、同取引所が裁判所に提出した宣誓供述書の提出者はGerald Cotten氏ではなく、その妻であるJennifer Robertson氏だったという。宣誓供述書にはGerald Cotten氏の死亡証明書が添付されており、同取引所のCEOはインドで急逝し、もはやこの世にいないことが記されていた。

問題は、同取引所が顧客から預かる仮想通貨の大部分がセキュリティのためコールドウォレットに保管されており、そのコールドウォレットを管理する唯一の人物がCEOだったことだ。そしてそのCEOが死去したことで、そのコールドウォレットがどのようなもので、一体どこに存在するのかさえ分からなくなってしまったというのだ。

用語解説:コールドウォレット

コールドウォレットとは仮想通貨の秘密鍵をオフラインで管理するタイプのウォレットのこと。オンラインのウォレットはハッキング攻撃されるリスクに常時曝されるの対し、物理的にネットワークから遮断されたコールドウォレットはその心配がない。反面、紛失したり破損するリスクがある。ポケットに入るような小型の端末のような形状をしている場合が多い。

通常、仮想通貨取引所では、外部からのハッキング等の被害から顧客資産を守るためにコールドウォレットを使用するのに加えて、ウォレットの秘密鍵を複数人が所有する「マルチ・シグネチャ」と呼ばれる技術を採用した分散管理の仕組みを導入することが一般的になりつつあるが、QuadrigaCXは違ったようだ。

こうなってしまってはコールドウォレットを見つけない限り、中身の残高は永久に失われたままとなってしまう。コールドウォレットに繋がるかもしれない唯一の手掛かりがCotten氏のノートPCであるが、暗号化されていてRobertson氏にも中身を閲覧することはできなかったという。専門家によるロック解除の試みも、現時点ではまだ成功していないようだ。

取引所事業の売却も検討

コールドウォレットの発見に一縷の望みを託す試みとは別に、Robertson氏は顧客への返金のためのより現実的な対応として取引所事業の売却も検討しているようだ。同氏はすでに複数のアプローチを受けているとしつつも、それらがどこの誰であるかは明言していない。

加えてRobertson氏は宣誓供述書の中で裁判所に対し、以降に起こるであろう訴訟の停止を求めた。取引所が訴訟を多数抱えてしまうと売却における価値を損なうかもしれないというのがその理由だという。

QuadrigaCXのサイトはすでに閉鎖されており、現在はトップページに取締役会からのメッセージが掲載されているのみになっている。果たして顧客は資産を取り戻すことができるのだろうか。先行きは見通せない。

ABOUTこの記事をかいた人

仮想通貨投機の熱気に陰りが見え始めた2017年の暮れ頃から仮想通貨に関わり始め、投機よりも実用面に高い関心を持つ。国産仮想通貨プロジェクトやWebサービスの運営に携わりつつ現在に至る。