韓国議会は暗号資産課税制度をめぐって4度目の延期に向けた議会審査へ
韓国議会は、2027年1月1日の導入に向けて議論が進む中、投資家や業界関係者からは制度設計の不備や市場への悪影響を懸念する声が上がっており、4度目の延期を求める請願が国会での審査に付されることになった。
韓国政府はこれまで、暗号資産に対する所得税の導入時期を3回にわたり延期してきた。現在の予定では、2027年1月1日からデジタル資産の売却、譲渡、貸付によって得られた利益を“その他所得”として扱い、22%の税率(国税20%および地方税2%)を課すことになっている。課税対象となるのは年間250万ウォン(約286,000円)を超える利益であり、2027年に発生した所得については、翌年の2028年5月に最初の申告および納税が行われるスケジュールとなっている。
政府は当初からのスケジュールを維持する姿勢を示しており、次期財務相に指名されたイ・ヒョンイル(李炯日:Lee Hyoung-il)氏らは、予定通りの課税実施が望ましいとの見解を強調している。
また、国税庁が年内にも取得原価の計算方法や報告義務、法令遵守上の責任といった詳細な基準を公表する予定であることも明らかにされている。
5万人の署名が到達、請願に込められた市民と投資家の懸念
こうした政府の動きに対して市民や投資家らは強く反発。8月21日に国会の電子請願ポータルを通じて提出された、課税の2年間延期を求める請願は、約3週間で5万1,004人の有効な署名を集めた。
韓国の制度では、30日以内に5万人以上の署名が集まった請願は自動的に所管の常任委員会(国会企画財政委員会)へ付託されることになっており、今回の件も新たな議会審査の対象となる。もっとも、この付託によって議員側が必ず法改正を受け入れなければならないわけではない。
請願者や業界関係者が延期を強く訴える背景には、以下のような複数の深刻な懸念が存在する。
インフラの未整備と計算の複雑さ:
韓国国内には、公正かつ正確な課税を行うための十分なシステムが整っていないと指摘されている。DAXA(デジタル資産取引所協会)なども、規制当局と連携するための標準化されたデータネットワークが取引所間で未整備である点を訴えており、取得原価の計算、取引の監視、海外取引、さらには異なる報告期間にまたがる損失の繰越などの課題に対処するにはさらなる時間が必要だ。
若年層の資産形成への打撃:
暗号資産は、従来の投資機会へのアクセスが限られている若年層にとって重要な資産形成の手段となっている。請願者は、経済的に厳しい状況にある若年投資家に対する即時課税は不公平な機会格差を生むだけでなく、約半数を占める若年層から「富を築くための梯子(はしご)」を奪うことになると批判している。
資本流出と市場の低迷:
すでに国内の複数の仮想通貨関連企業が営業利益の減少に直面しており、過度な課税はさらなる経営圧迫要因となります。また、過去5年間で約700兆ウォン(約80兆円)相当の関連資金が国外に流出しているとの指摘もあり、即時課税の導入は海外プラットフォームへの資本流出を加速させ、国内取引所の取引高減少や政府が期待する税収効果の減退を招く恐れが懸念されている。
過去の動向と国会における今後の見通し
実は、課税制度を巡る同様の動きは今回が初めてではない。今年(2026年)5月にも、課税の延期ではなく「完全撤廃」を求める別の請願がわずか8日で5万人の署名を集めて委員会に付託されたが、それ以上の法制化に向けた具体的な進展はなかった。
しかし、政治の場でも動きは見られており、野党国民の力の議員らからは、課税実施に異を唱える法案が相次いで提出されており、ソン・オンソク (宋彦錫:Song Eon-seog)議員による課税条項の削除案、チョン・ソングク(Jung Sung-kook:丁成国)議員による2030年への延期案、キム・サンフン(金相勳:Kim Sang-hoon)議員による2029年開始とする改正案など、多様なアプローチが示されている。
今回の新たな議会審査は、法案の施行に向けた準備状況、投資家間の公平性、そして国内の暗号資産業界が受ける中長期的な影響を改めて検証する重要な機会となる。政府が予定通りの導入を強行するのか、あるいは世論や国会からの圧力に押されてさらなる見直しや猶予へと舵(かじ)を切るのか、今後の動向から目が離せない。























