元FBI捜査官、捜査対象のデジタルウォレットから仮想通貨窃盗の罪を認める

元FBI捜査官が捜査対象の仮想通貨を盗んだ罪を認める

元FBI(米国連邦捜査局)特別捜査官が、捜査対象である外国の「敵対国」に関連するデジタルウォレットから、約100万ドル(約1.57億円)相当の暗号資産を自らの管理下に不正送金した罪で起訴され、その容疑を認めたことが明らかになった。

法執行機関の内部におけるデジタル資産の管理体制や、犯行発覚時の意外なツール利用など、多様な側面で波紋を呼んでいる。捜査当局が提出した宣誓供述書によると、元FBI特別捜査官のパトリック・スティーブン・ヤロッチ(Patrick Steven Yaroch)容疑者は、2024年末から2025年初頭にかけての捜査活動の中で、敵対勢力のウォレットにアクセスするための認証情報=ウォレットキーを入手。同容疑者は約12回にわたって資金移動を実行。捜査官に対して「敵対国の関係者が資産を利用するのを防ぎたかった」と供述しており、制裁や差押えといった正当な法的手段を経ずに個人的な判断で強行したとしている。

事件の発覚後、自ら当局へ連絡を入れた同容疑者は、司法省の職員に対し「非常にまずい判断を下してしまった。大失敗(しくじった)した」と語り、自身の不正行為を全面的に認めたとのことだ。

生成AI「ChatGPT」で資産運用と海外逃亡を相談

本事件で際立っているのが、盗み出した暗号資産の使い道について、ヤロッチ容疑者が対話型AI「ChatGPT」を活用していた点だ。

携帯電話の解析結果によると、同容疑者はAIに対して「100万ドルの資金をどう投資・運用すべきか」「米国を離れて欧州に居住権を得るにはどこがいいか」といった質問を投げかけている。これに対してAI側は、同容疑者の家族構成や趣味(広い邸宅やワイン収集など)の条件を考慮し、移住先としてポルトガルを提案。実際に同容疑者は9月出発予定のポルトガル行き往復航空券を購入していたことが突き止められ、一連の会話履歴は犯行後の計画性を裏付ける有力な証拠となった。

内部統制とブロックチェーン捜査の課題

ヤロッチ容疑者は盗んだ資金を暗号資産取引所Kraken(クラーケン)やDeFi(分散型金融)プロトコルSuilend(スイレンド)などへ移動させていた。自宅捜索の過程で一時はウォレットの復元フレーズ(キーフレーズ)の提示に同意したものの、直後に撤回するなど混迷した対応も見せている。

今回の件は、従来の銀行口座とは異なり「秘密鍵さえ知っていれば単独で莫大な資金を移動できる」という暗号資産特有のリスクを改めて浮き彫りにした。どれほど厳重な技術的セキュリティを敷いていても、内部の人員に対するアクセス権限の分散や複数人承認プロセスの義務化といったガバナンスが欠かせないことを示している。

暗号資産取引の匿名性に頼ろうとした事件であるものの、最終的には公開ブロックチェーン上の追跡データと、AIの利用履歴や渡航記録といった従来の証拠が組み合わされたことで、不正行為が立証される結果となった。

 

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