YZYインサイダーが巨額利益、5万1千人のトレーダーが損失

カニエ・ウェストとYZYコインのイラスト、背景に下落チャートと群衆

カニエ・ウェスト発のミームコイン騒動で投資家の大半が損失

カニエ・ウェスト(Kanye West)氏が2025年8月21日(木曜日)にローンチしたミームコイン「YZY」は、Solana(ソラナ)上で初動の熱狂に包まれた。

価格は最初の1時間で一時1,400%上昇したが、その後は80%以上下落し、多くの投資家が損失を抱えた。ブロックチェーン分析のBubblemaps(バブルマップス)によると、YZYを取引した約7万のウォレットのうちおよそ74%が損失を計上し、5万1,000超のウォレットで合計約7,480万ドル(約109.8億円)の損失が発生した。一方で早期参入者の一部は巨額の利益を得ており、市場の不均衡があらわになった。

インサイダーが得た巨額の利益

Bubblemapsは、YZYのローンチで11のウォレットが100万ドル(約1.46億円)超の利益を得たと示している。

過去に物議を醸したトークンローンチに関与してきたヘイデン・デイビス(Hayden Davies)氏は、発表直後から買い集めて売却し、約1,200万ドルを得たと指摘された。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米国大統領関連トークンで多額の利益を上げてきた匿名トレーダー「ナシーム(Naseem)」も初期購入者に含まれる。

Bubblemapsは、注目度の高いローンチに初期から入り込み短期間で多額の利益を抜く同一人物らの反復的行動を問題視している。

価格推移と周辺事例

YZYは急騰後に急落し、ボラティリティの高さが際立った。ブロックチェーン情報プラットフォームNansen(ナンセン)のデータでは、価格は高値から80%以上下落し、保有者は約1万9,500人まで減少している。元キックボクシング王者のアンドリュー・テイト(Andrew Tate)は、YZYの3倍ショートで約70万ドルの損失を計上した。

多数派の損失と分布

Bubblemapsの内訳では、70,201人のトレーダーのうち51,862のウォレットが損失を出した。損失の多くは1ドルから1,000ドルの範囲に集中し、さらに5,269のウォレットが1,000〜1万ドル、1,000超のウォレットが1万〜10万ドルの損失を記録した。

六桁の損失を計上したウォレットは108あり、3つのウォレットでは100万ドル超の損失が発生。一方、利益側は18,333のウォレットが計約6,664万ドル(約97.8億円)を獲得したものの、その多くは少額で、15,792のウォレットは1,000ドル(約147,000円)未満の利益にとどまる。総利益の約3割がわずか11のウォレットに集中し、少数の勝者と多数の敗者という構図が際立つ。

早期配分と公平性への疑義

初期の配分で一部のアドレスに利益が集中したことは、注目を集めるミームコインのローンチにおける公平性や透明性への疑問を強めた。スナイピングボット(Sniping Bots)の(※1)の関与や特定人物の繰り返しの行動も指摘され、個人投資家の不利が浮き彫りになっている。

(※1)スナイピングボット(Sniping Bots)とは…
新規上場トークンの流動性追加をミリ秒単位で検知し、開発者よりも早く買い注文を執行し、獲得することを目的とした自動売買プログラムの事

著名人トークンに広がる懸念

YZYの一件は、著名人が関与する仮想通貨に内在するリスクを再確認させた。カニエ・ウェスト氏本人は、YZYの急落や操作疑惑について現時点で公にコメントしていない。

Solana上では2024年6月以降、50セントやケイトリン・ジェンナー(Caitlyn Jenner)氏、イギー・アゼリア(Iggy Azalea)氏、ロナウジーニョ(Ronaldinho)氏らの関与で30以上のセレブコインが相次いで登場したが、多くがローンチ後に大幅下落している。

YZYで顕在化した不均衡やインサイダー疑惑は、ミームコイン市場の脆弱性を示す材料であり、投資家保護や不正行為への対処を巡る議論を一段と加速させている。

 

ABOUTこの記事をかいた人

2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム