指名撤回と当事者の声明
ホワイトハウスは、CFTC(商品先物取引委員会)委員長に指名していた元CFTC委員のブライアン・クインテンツ(Brian Quintenz)氏の指名を取り下げた。
同氏は「CFTC委員長に指名され、承認手続きを経たことは人生の栄誉」と述べ、大統領および上院農業委員会に謝意を示したうえで、「我が国のイノベーションが活況のこの時期に、民間部門での活動に復帰する」と明言した。
ウィンクルボス兄弟との確執が表面化
7月、仮想通貨取引所ジェミニ(Gemini)の共同創業者であるタイラー・ウィンクルボス(Tyler Winklevoss)氏とキャメロン・ウィンクルボス(Cameron Winklevoss)氏が、クインテンツ氏の起用を見直すよう大統領に働きかけた経緯があった。
クインテンツ氏はXで兄弟とのメッセージの一部を公開し、兄弟がCFTCに対する「文化改革」や仮想通貨企業への「法戦」の終結を求めていたと指摘。自身は「公正かつ合理的な検討」を約したが、その後に承認手続きが停止されたとの認識を示していた。なお、ジェミニとCFTCの係争は1月に500万ドル(約7.3億円)で和解している。
ホワイトハウスの当局者は、クインテンツ氏を「引き続き信頼できる同盟者」と評価し、他の役割での協業に前向きな姿勢を示した。大統領は近く新たなCFTC委員長候補を発表する見通し。
CFTCの空席問題と今後の規制動向
CFTCは法定5人体制だが、現時点で在任は1人にとどまり、仮に共和党のキャロライン・ファム(Caroline Pham)暫定委員長が退任すれば、規制当局の機能低下が懸念される。
ファム氏は、クインテンツ氏の指名を受けて同庁を去る意向を示しており、トップ不在の長期化は、仮想通貨市場に関わる監督・執行やルール形成の機動性にも影響しうる。
米議会では、CFTCやSEC(米国証券取引委員会)を含む複数の規制当局の役割分担を巡る議論が続いている。特に、ビットコイン(Bitcoin/BTC)やイーサリアム(Ethereum/ETH)のように十分に分散化された資産を「デジタル商品」としてCFTCの監督下に置く構想が注目されている。今後の人事と体制整備は、こうした枠組みの実現に直結する可能性がある。