テザー、制裁関連でトロン上のUSDT1,230万ドルを凍結

テザーによるUSDT凍結の象徴的なビジュアル。ブロックチェーンと監視のイメージを組み合わせた画像。

米国規制当局の監視強化の中、USDTの悪用防止策が再び注目に

テザー(Tether/USDT)は、マネーロンダリング(資金洗浄)や制裁対象団体によるUSDTの悪用を防ぐため、トロン(Tron)ブロックチェーン上で1,230万ドル(約17.8億円)以上に相当するUSDTを凍結した。

Tronscanのデータによると、この凍結措置は6月15日に実行された。テザーはこれまでも、OFAC(米国財務省外国資産管理局)の特別指定国民(SDN)リストに基づき、対象ウォレットの凍結措置を実施。これは犯罪資金の流通阻止や制裁対象国への資金流入防止を目的としたものである。

2024年3月には、ロシア系仮想通貨取引所Garantexに関連するウォレットに保管されていた約2,700万ドル(約39億円)相当のUSDTを凍結。Garantex(ガランテックス)は2022年にAML(マネーロンダリング対策)基準違反により制裁指定を受けており、米当局の監視対象とされている。

ブロックチェーン分析企業グローバル・レジャーの報告では、Garantex関連のウォレットには6月5日時点でなお1,500万ドル(約21.7億円)以上の準備金が残存していた。また、Ellipticの推定によれば、Garantexは制裁指定後も600億ドル(約8.7兆円)規模の取引を継続していたとされる。

T3ユニット設立と規制強化に対するテザーの姿勢

テザーはトロン財団およびTRMラボと協力し、2024年に「T3(Tether、Tron、TRM Labs)」と呼ばれる金融犯罪対策ユニットを設立。国際的な法執行機関と連携し、2024年上半期だけで1億2,600万ドル相当の不正と判断されたUSDTを凍結する成果を挙げている。

こうした取り組みは、テザーの法令順守姿勢と、ステーブルコイン発行体としての社会的責任を示すものとされる。今回の凍結措置について公式なコメントは出されていないが、AMLリスクへの対応強化として理解されており、仮想通貨業界内でも一定の波紋を呼んでいる。

分散型の理念を重視する仮想通貨コミュニティにおいても、違法利用の抑制とユーザー保護を両立させる必要性が高まっており、テザーの動向は他のステーブルコイン発行体にも影響を与えつつある。

北朝鮮ハッカーによる資金洗浄と対応

こうした対策の背景には、北朝鮮の国家支援型ハッカー集団Lazarus(ラザルス)グループによる継続的な資金洗浄の脅威がある。

2020~2023年にかけて、Lazarusは2億ドル(約289.5億円ん)以上の仮想通貨を不正取得・洗浄したとされており、テザーは2023年11月に関連ウォレットをブラックリストに登録。他のステーブルコイン発行体と協調し、計340万ドル(約5億円)を凍結した。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム