ナイジェリア中央銀行による仮想通貨禁止の影響と代替案

ナイジェリアの仮想通貨禁止が呼び起こす国内の混乱

ナイジェリア中央銀行(CBN)は、仮想通貨取引禁止を発表。この決断が、以前より繰り広げられていたEndSARS抗議活動に影響を与える恐れがある事が分かった。

NEXTMONEYの特集記事「ナイジェリア、仮想通貨の禁止と規制の保留で国会および業界が揺れる」で報じたように、2020年2月5日から同国内全金融機関に対して仮想通貨取引関連のサービス提供が禁止された。仮想通貨は世界的な法定通貨として受け入れられていないものの、世界の100カ国以上がその可能性とリスクを理解しつつ容認しており、米国、英国、欧州連合などの強力な金融センターを持つすべての国が仮想通貨へと歩み寄りを見せている。また、これらの国々では、中央銀行も仮想通貨と既存金融間の競争に足を踏み入れ、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)を模索している。

ナイジェリア中央銀行の仮想通貨取引困難へと決定させた件についてCBN総裁は、次のように語っている。

現時点で仮想通貨は私たちの通貨システムに存在しないため、ナイジェリアの銀行システムを介して仮想通貨取引を実行するべきではありません。

ナイジェリアにおける仮想通貨取引き禁止に関する地元の金融機関へのCBNからの通達に続き、同国民による騒動が発生。副大統領と国会が全面禁止ではなく合理的な決定を要求する人々の擁護に加わったため、反発を止められなかったとみられる。

仮想通貨は、マネーロンダリング、テロ資金供与、およびその他の犯罪活動に使用されていると考えられている。国境を越えたお金の移動が数年前よりも容易になり、ナイジェリア国民の間でも仮想通貨が受け入れられたこと、さらに仮想通貨の禁止によって、EndSARS抗議運動(※1)のような政治運動への資金提供も制限される可能性がある事がより騒動を大きくしたとみられている。
(※1)EndSARS抗議運動とは、2020年10月初め頃から、SNSを中心に拡散され、多くのナイジェリアの若者の支持を集めると共に海外やメディアの注目を浴び、大きな動きが展開されるようになった抗議活動である。EndSARSは、若者が中心になって繰り広げられている大規模デモ運動で、1992年に武装強盗と対峙するために設置された組織でああるSARS(対強盗特殊部隊)と呼ばれる警察の特殊部隊の廃止を訴えている。

仮想通貨は国内経済活動を向上させる可能性

仮想通貨にはデメリットだけがあるわけではなく、もちろんメリットもある。

従来のお金とは異なり、仮想通貨は銀行の様な仲介者を使用しないことが大半である。トランザクションはより簡単かつ高速で、輸入依存型経済として、ドル不足という既存の問題を考えると、より迅速な国際取引が発生する可能性がある。国としての外貨準備への圧力を低くすることが好ましく、国際取引に仮想通貨を使用すると、経済活動を促進することも可能だ。

ナイジェリアはインフレ率と失業率が高く、政策立案者は、人々の生活を改善するためにすべてのリソースを組み合わせる必要がある。銀行や他の外貨両替システムよりも多くの人々がインターネットにアクセスできるようになると、恵まれない人々が信用を確立する機会が開かれ、より高い経済活動の機会が提供されるとみられる。

通貨切り下げが仮想通貨へと向かう要因

昨年実施されたドイツを拠点に市場および消費者データを専門とするStatistaの調査によると、ナイジェリア人の32%が仮想通貨を使用または所有していることが分かった。

ナイジェリア、仮想通貨ウォレット使用量が60%増加=Blockchain.comレポート」で報じたように、現在使用量が急増している国の一つである。現在ナイジェリア国民は、ビットコイン(Bitcoin/BTC)やイーサリアム(Ethereum/ETH)のような仮想通貨を、法定通貨であるNaira(ナイラ)よりも優れた通貨と見なしている。現在、ナイジェリアはアフリカ経済の1/4を占めるアフリカ切手の経済大国だが、GDPは世界平均の30%ほどにとどまっている。そのため、Nairaは2020年に24%切り下げられ、2021年には10%の切り下げの可能性が示唆されていることから、国民が仮想通貨へ目を向けているという国内事情がある。

しかし仮想通貨は現在、非常に投機的な性質が色濃く出ており、経済立て直しを図るナイジェリアの国内事情から見ると、大きな懸念事項である。これらを踏まえたうえで、仮想通貨の禁止へ踏みきるのではなく、商品またはセキュリティと見なす人々に投資リスクについて教育する方がはるかに良いとの声も上がっており、世界的にも規制やデジタル通貨との競争の導入など、可能な代替案を検討している。

ナイジェリア中央銀行が目を向けるCBDC

ナイジェリア中央銀行は、CBDC発行へ期待をかける声も上がっている。

CBDCの利点に、現金管理のコストが高いナイジェリアのような国内事情に、より効率的な支払いシステムの可能性が含まれる点が挙げられている。CBDCは、消費者がCBDCを保持するために銀行口座を保有する必要がなく、企業が金融サービスを組み込むのに役立つ。

ナイジェリアの場合、インフレ率が高く、為替レートが変動し、輸入に依存している国内の経済情勢から、ドル化のリスクが存在するものの、他国と同様に、実証実験はよい研究方法になるとみられている。

ナイジェリア、仮想通貨の禁止と規制の保留で国会および業界が揺れる

2021.02.22

ナイジェリア、仮想通貨ウォレット使用量が60%増加=Blockchain.comレポート

2020.08.07

ABOUTこの記事をかいた人

NEXT MONEY運営です。 「話題性・独自性・健全性」をモットーに情報発信しています。 読者の皆様が本当に望んでいる情報を 日々リサーチし「痒いところに手が届く」 そんなメディアを目指しています。