仮想通貨取引所BiteBTC、分散データセンターに1,000万ドル投資へ
シンガポールの仮想通貨取引所であるBiteBTCが、今後分散データセンターの構築に1,000万ドルを投資する計画を発表した。基幹システムの信頼性を高めることで、取引所の信頼回復に繋げたい狙いがあるものと見られる。
BiteBTCはシンガポールを拠点とした新興の仮想通貨取引所で、2018年1月の開設以来、他の取引所と比べて割安な上場手数料を掲げることで数多くのアルトコインが上場してきた。特に2018年後半にかけては、8月にNANJCOIN、11月にSproutsが上場すると、12月にはBellcoin、SanDeGo、KizunaCoinが立て続けに上場するなど、一部の国産仮想通貨トレーダーからは注目を集める取引所となりつつある。
そのような中、2019年1月1日にBiteBTCのデータセンターで火災が発生し、全体の7%にあたるユーザーの顧客情報が消失する事故が発生した。該当するユーザーはアカウントにアクセスできなくなった他、取引履歴や残高情報も失われた為、多くのユーザーから不安と批難の声が挙がる事態となった。
BiteBTCは該当ユーザーへ入出金トランザクションの提示を求め、その情報から返還額を算出する方針を発表するなどして事態の収拾に努めているが、正確な金額での補償は困難と見られ火災事故の影響を引きずりつつの営業を余儀なくされている。
分散データセンターとは
このような状況下で発表された今回の分散データセンターへの投資であるが、いったいどのような内容なのだろうか。
BiteBTC VC Invests $10M in Distributed Data Center
The BiteBTC Venture Fund allocated $10M for the construction of a new distributed infrastructure of data centers to host BiteBTC Exchange servers, including a system of distributed cold storage of crypto assets based on multi-signatures.
The updated infrastructure will include data centers in Singapore, Zurich (Switzerland) and Boston (USA). All processed data (trading operations, deposits, orders, etc.) will be mirrored in three data centers in real time to avoid even the minimal threat of data loss. Additionally, it is supposed to reduce the latency in processing orders to 10-15 ms.
All data centers will meet the latest fire safety requirements and standards for reliable information storage.…
BiteBTC発表より引用 全文はこちら
発表内容をひとつひとつひも解いていきたい。
- データセンターを世界3ヵ所に分散構築
BiteBTCは1,000万ドルを投じて世界3ヵ所に分散するインフラ構築を実施するとしており、構築されるデータセンターはシンガポール、チューリッヒ(スイス)、ボストン(アメリカ)に位置する模様だ。処理される取引データは全てリアルタイムで3つのデータセンターにミラーリングされることになるほか、これらのデータセンターは最新の防火要件および規格を満たすという。
- マルチシグによるセキュリティ向上
更に、新しいインフラはマルチシグを導入するとしている。マルチシグ(Multi Signature)とは取引の承認に複数の署名(秘密鍵)を必要とすることでセキュリティを高める仕組みのこと。今回のケースでは、送金の際には3つのデータセンター全てからの署名を必要とすることで、仮想通貨資産の安全性を高めることを意味している。
- 各コンポーネントのリアルタイム監視
こうして構築する新しいインフラの各コンポーネントの状態について、リアルタイムで監視できるようにするサービスについても、近い将来に開始することを予定しているという。
以上のような対策で、基幹システムの信頼性を高めようとしているようだ。
仮想通貨取引所における信頼とは何か
今回発表された内容は、国内の認可済み仮想通貨取引所や世界の大手取引所の基準に照らしてみれば、決して目新しい内容ではないだろう。むしろ、安全性を語る上では前提事項に過ぎないともいえるかもしれない。しかしながら、BiteBTCとしてはこれまではこうした対策すら十分にとられていなかった実態を踏まえると、少なからず前進と言えるのではないだろうか。
世界には安全性に不安がある仮想通貨取引所が依然として数多く存在する。ひとたび資産を預ける以上は信頼するしかないという側面もあるものの、特にアルトコインを取扱うような中小取引所を利用する際には、リスクがあることを十分に認識した上で必要最小限な残高のみを置くなど、自分で自分の身を守る対策をとることも肝要だ。
ともあれ、BiteBTCは事故を起こらなくする対策もさることながら、起きた事故にしっかり対応することこそが信頼回復における最も重要な要素であると、肝に銘じて対応にあたる必要があるだろう。