フランス、2027年度予算案の採決を延期 暗号資産への課税・出金税案を撤回

フランス2027年度予算案、混迷深まる審議と暗号資産課税の攻防

フランスでは2027年度国家予算案の成立をめぐる議論が、凄まじい波乱と難航を極めており、政府が打ち出す巨大な財政赤字削減策に対し、国民議会(下院)では異例の数の修正案が次々と提出され、審議の進展を大きく阻害。その結果、歳入部分の採決は異例となる2度目の延期へと追い込まれた。

さらに、財政補填の切り札として浮上していた有料テレビ放送への増税や、注目を集めていた暗号資産に対する新たな課税強化案についても、議会内で相次いで見送りや否決の判断がくだされている。

採決は異例の再延期へ:山積する修正案と迫る審議期限

国民議会は当初予定していた予算案の歳入に関する採決を見送り、継続して審議を行うことを余儀なくされた。審議が停滞する最大の要因は、議員らから出された圧倒的な数の修正案だ。前回の審議期日でも2,000件を超える修正案によって最初の延期が決まったが、今回も依然として758件もの修正案が審査を待つ異例の展開が続いている。

政府は11月17日深夜という厳格な第1次審議の期限を前に、厳しい舵(かじ)取りを迫られている。憲法第49条3項(Article 49.3)を行使すれば、議会の承認を経ずに強行採決することも法的には可能だが、政治的反発や不信任案の発議といったリスクを伴う。期限内に歳入案が否決された場合、政府がもともと提出していた修正なしの原案がそのまま上院へ送致される運用となるため、議会内の与野党による格闘と駆け引きは極限に達している。

縮小を目指す財政赤字と重くのしかかる国内経済の悪化

政府が今回提示している予算案の根幹は、430億ユーロ(約7.6兆円)規模におよぶ大幅な歳出削減で、目的は、拡大した財政赤字を対GDP(国内総生産)比5%という目標水準まで圧縮することにある。

しかし、足元の国内経済環境はこの財政健全化目標に対して極めて冷淡だ。第3四半期のフランス経済は0.1%のマイナス成長に転じており、景気後退の足音が現実に近づいている。それに加え、燃料価格の高騰や深刻な生活費負担の上昇を受けた国民の抗議活動が連日激化しており、財政引き締めを進めたい政府に対する国民からの強い圧力が一層高まっている。

有料放送への増税見送りと経済界からの反発

増税による歳入確保策の一環として検討されていた「有料テレビ放送の購読料に対する付加価値税(VAT)の増税案」も、最終的に議会で撤回される結果となった。政府はこの2倍増税の導入によって約4億ユーロ(約709.6億円)の追加財政収入を見込んでいた。

しかし、国内有料テレビ最大手であるカナル・プリュス(Canal+)をはじめとするメディア業界が、強い懸念を表明。増税分はユーザーの月額購読料へ直結せざるを得ず、視聴者の離脱や関連産業への打撃が避けられないとの強い警告が行われたためだ。

この指摘を受けた議員らは急遽修正案を提出し、該当する増税措置を取り下げる決定を下した。

否決された暗号資産の出国税と今後の規制動向

今回の予算案審議において特に世界的な関心を集めていたのが、暗号資産を対象とした新たな課税強化の動向だ。特に、高額資産保有者が国外へ移住する際の未実現利益に課税する、いわゆる“出国税”の導入案については、国民議会で激しい議論の末に否決された。

具体的には以下の2つの提案が審議にかけられ、いずれも反対多数で退けられている。

既存制度への包括組み込み案:
既存の出国税枠組みに暗号資産をそのまま含める提案(賛成27票、反対55票で否決)
80万ユーロ超の暗号資産への課税案:
過去10年間のうち6年以上フランスに住んでいた納税者を対象とし、80万ユーロ(約1.4億円)相当を超える保有暗号資産の未実現利益に課税する提案(賛成31票、反対60票で否決)

一方で、暗号資産をめぐる税制改革の議論は完全に収束したわけではなく、現在も以下のような複数の規制案や優遇案が継続して審議・検討されている。

自己管理(セルフカストディ)の報告義務:
年末時点で10万ユーロ(約1,800万円)相当以上の暗号資産を自ら管理・保有している場合、その詳細を税務当局に申告させる案
小額決済における非課税枠:
商品やサービスの決済に暗号資産を利用した際、年間総額が1,000ユーロ(約18万円)を超えなければ、取引利益を非課税とする案
ステーブルコイン交換への課税:
法定通貨連動型ステーブルコインへ交換した際に生じる利確部分への課税案(過去に承認済だが法制化は未完了)

膨大な修正案の山と失速する経済状況の中で、フランス政府が財政再建と経済の安定をどのように両立させるのか、予算案成立に向けた攻防は土壇場の局面を迎えている。

 

ABOUTこの記事をかいた人

NEXT MONEY運営です。 「話題性・独自性・健全性」をモットーに情報発信しています。 読者の皆様が本当に望んでいる情報を 日々リサーチし「痒いところに手が届く」 そんなメディアを目指しています。