HTXがFCAとの訴訟和解を受け英国から撤退、顧客には48時間の出金猶予期間

英国市場からの完全撤退と高等裁判所での和解合意

暗号資産取引所HTX(旧Huobi)は、FCA(英国金融行動監視機構)との長期にわたる法的な対立を経て、英国市場から全面的に撤退することで合意した。

今回の終結は、高等裁判所を通じた判決および秘密保持条約に基づく和解契約によるものであり、FCAが金融プロモーション規制を根拠に暗号資産企業へ実施した初の本格的な執行措置となる。

FCAは、同社が英国の法域外に拠点を置いていることを理由に規制を回避しようとした姿勢を厳しく批判。海外に拠点を置く暗号資産事業者であっても、英国の消費者を対象に無許可でサービスをプロモーションした場合は厳格な法的責任が問われるという強力な先例を確立させた。

違法マーケティング規制と2031年までの厳格な誓約

今回の件の背景には、2023年10月に英国で導入された金融プロモーション規制がある。この法枠組みでは、認可企業による事前承認や適切なリスク警告の掲載がない暗号資産の宣伝行為を厳格に禁止している。HTXはこれらの事前警告を繰り返し無視し、自社ウェブサイトやX、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなど、主要SNSを介してプロモーション活動を継続していたとされる。

これに対しFCAは、2025年10月に高等裁判所へ法的手続きを申請。2026年の協議を経て成立した命令により、HTX側の運営主体であるパナマ法人Huobi Global S.A.は、2031年10月21日までの7年間にわたり、直接的・間接的を問わず英国の消費者に向けた違法な宣伝活動を自発的に行わないことを誓約した。なお、この和解においてHTX側は法的責任や不当行為の認容を行っていない。

既存顧客に対する48時間の限時出金手続きと消費者保護の限界

現在、HTXへの英国からの新規ユーザー登録や資金の入金機能は完全に遮断されている。プラットフォーム上に残置された資産を持つ既存顧客に対しては、アカウントが恒久的に閉鎖される前の救済措置として、一時的なアクセス権限限度となる「48時間限定の出金猶予期間」が設定された。

該当する顧客は、以下の要件を満たした上で手続きを進める必要がある。

一度限りの申請:
登録メールアドレスからカスタマーサポートへ連絡し、個人利用確認情報を送付する。
承認審査:
本人確認(KYC)、口座所有権の検証、マネーロンダリング対策(AML)、および国際制裁措置のスクリーニングを通過する。
資産の引出:
承認後、付与された48時間のタイムウィンドウ内にユーザー自らが送金手続きを完了させる。全額出金後にアカウントは閉鎖される。

なお、HTXはFCAの認可を受けていない無許可企業として警告リストに指定されたままであるため、破綻時のFSCS(金融サービス補償機構)による資産補償やFOS(金融オンブズマンサービス)の苦情調停制度は適用されない。

国際的な制裁問題とグローバルにおける規制網の包囲

HTXの撤退劇は、単なるプロモーション違反にとどまらず、国際的な金融制裁や他国の規制当局による追及とも複雑に交錯している。

英仏・欧州での制裁指名:
英国当局は、Huobi Global S.A.がロシア関連の制裁対象組織(Garantex等)へ金融サービスを提供したとして金融制裁を発動。EU(欧州連合)も第21次対ロシア制裁パッケージにて同社を指定した。HTX側は「オンライン取引所HTXとHuobi Global S.A.は法的に別個である」と異議を唱えたが、金融制裁実施局(OFSI)は実質的な支配関係を認めている。

外部プロトコル・プロジェクトからの隔離:
関連ウォレットがDeFiプロトコルのHyperliquidによりブロックされたほか、トランプ氏関連の「World Liberty Financial」との間でも資金凍結を巡るトラブルが発生。
他国での無許可営業差し止め:
カザフスタンの裁判所においても、HTXは無許可営業を理由に同国内でのサービス提供を禁止される判断を下されている。