潜入捜査で判明した実態と13件の重罪容疑
米国ユタ州の検察当局は、予測市場プラットフォームを運営するKalshi(カルシ)社、同社のタレク・マンスール(Tarek Mansour)CEO(最高経営責任者)、およびルアナ・ロペス・ララ(Luana Lopes Lara)COO(最高執行責任者)に対し、違法なスポーツ賭博を助長した疑いで刑事訴訴に踏み切った。
単なる法人への追及にとどまらず、経営幹部個人に対しても実刑判決の可能性がある重罪容疑が適用されたことで、急速に拡大する予測市場に対する規制のあり方を揺るがす重大な法的局目を迎えている。
今回の刑事告発の決定打となったのは、ユタ州捜査局の特別捜査官による潜入捜査だった。捜査官は州内のIPアドレス、電話番号、地元銀行口座を用いてユタ州住民になりすましたアカウントを開設。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、MLB(メジャーリーグ)、NHL(プロアイスホッケー)、大学フットボールなど多岐にわたる試合の勝敗やスコアに対して計12回の賭けを実施した。
提出された起訴状によると、同社はこれらの取引から1回あたり0.03ドルから0.78ドルの手数料を徴収し、違法行為から得た資金を事業運営に充てていたとされている。これを受け、デレク・ブラウン(Derek Brown)司法長官はソルトレイク郡の地方裁判所に対し、以下の罪状で訴追した。
第2級重罪(1件):違法行為の常習的実行(Pattern of Unlawful Activity)
第3級重罪(12件):オンライン賭博の助長(賭け行為1回につき1件)
クラスA軽罪(1件):賭博全般の助長
州憲法でギャンブルを全面禁止しているユタ州のブラウン司法長官は、「どれほど予測市場やイベント契約と呼称を変えようと、本質が賭博であることに変わりはない」と強調している。
連邦デリバティブ対州の賭博規制:法解釈の根深い対立
この件の背景には、プラットフォーム側と連邦・州当局間での激しい管轄権争いがある。
Kalshi社は、自社が提供する商品はCFTC(米国商品先物取引委員会)の監督下にある連邦規制対象のデリバティブ(金融派生商品)であり、各州のギャンブル関連法は適用されないと反論。「政治的な思惑による過剰な介入だ」として、アリゾナ州での先例と同様に法廷で争う姿勢を示している。
CFTC自体もKalshi側の立場を支持しており、議会からデリバティブ市場に対する専属的管轄権を与えられていることを理由に、ユタ州を含む少なくとも10の州に対して執行措置を阻止するための法的措置を講じている。
しかし、ユタ州側は過去の裁判ですでに有利な判断を得ている。連邦地方裁判所のロバート・J・シェルビー(Robert J. Shelby)判事は8月、同社の差し止め請求を棄却し、「連邦法は州による賭博規制の執行権限を打ち消すものではない」との判断を下した。続く9月には第10巡回区控訴裁判所もKalshi側の控訴中の緊急申し立てを退けており、州側は法令違反が継続しているとして刑事起訴へ踏み切った経緯がある。
全米へ広がる規制の波と今後の展望
予測市場をめぐる法的判断は現在、全米の各連邦控訴裁判所で分かれている。第3巡回区控訴裁判所がニュージャージー州の規制権限を否定した一方、第6および第9巡回区控訴裁判所はオハイオ州やネバダ州などの主張を支持しており、司法の判断が一貫していない。
専門家の間では、ニュージャージー州をはじめとする多くの州が最終的な決着を求めていることから、この問題は最高裁判所まで持ち込まれる可能性が高いと見られている。今回ユタ州が踏み切った幹部個人への刑事起訴と重罪追及の手法は、他の州が同様の予測市場プラットフォームへ対峙する際の新たなモデルケースとして、業界全体に大きな影響を与えている。
























