アイルランド中央銀行、顧客資金保護違反でコインベースアイルランドに325万ユーロの罰金

アイルランド中央銀行がコインベースアイルランドに罰金を科す

アイルランド中央銀行は、暗号資産取引大手コインベース(Coinbase)の現地法人コインベース・アイルランド(Coinbase Ireland)に対し、顧客資金の保護不備および外部委託業務の監督怠慢を理由に、325万2,618ユーロ(約5.7億円)の罰金と正式な譴責(けんせき)処分を科した。

同社が早期和解に応じたことで当初の算定額から30%減額されたものの、高等裁判所の確認を経て正式確定する見通しだ。コインベースの欧州関連法人がアイルランド規制当局から処分を受けるのは、この1年未満で2度目となる。

顧客資金の混在と最大520万ユーロの保護不足

規制当局の調査によると、違反行為は2020年11月から2025年8月にかけて行われていた。主な要因として、本来は明確に分離管理されるべき顧客資金が、コインベースグループの他法人の口座へ入金・混在されていた点が挙げられる。

具体的出来事として、2023年3月の米銀行危機時に一部顧客の預金を米国法人の口座へ入金させた事例や、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う顧客移管時に旧英国口座への入金が継続していた事例が確認された。

さらに内部ダッシュボードのエラーも重なり、2024年を通じて日常的に最大520万ユーロ(約9億円)規模の保護資金不足が生じていた。仮に同社が破綻した場合、顧客への資金返還が極めて困難になるリスクが存在していたと当局は警告している。

親会社への過度な依存と現地ガバナンスの欠如

もう一つの重大な不備として指摘されたのが、外部委託業務に関する管理体制だ。同社は資金保護プロセスの運営や資産管理を米国の親会社に過度に依存しており、現地アイルランドにそれを監視・監督するための専門人材や体制を整えていなかった。

また、認可取得時に強固な自動化保護体制を構築すると誓約していたにもかかわらず、実際にはそこから逸脱した運用を行っており、その重要な変更内容を規制当局へ報告していなかった。アイルランド中央銀行の執行担当ディレクターであるカレン・オリアリー(Karen O’Leary)氏は、約束の不履行と無報告での運用変更を強く批判し、「顧客資金の完全な保護は基本的な義務であり、体制の不備は一切容認しない」と厳しく言及した。

コインベース側の釈明と欧州における規制リスク

一連の指摘に対し、コインベースは2024年1月に自ら一部不備を報告し、すでに是正措置を実施済みであると発表した。

日次のリバランス処理により資金は正常な口座へ戻されていたため、「顧客の資産損失やアクセス障害は一切発生していない」と強調。さらに資産計算手法の再設計や2,500万ユーロ(約44億円)の保証金供託、専任責任者の配置などを終えたとしている。

なお、同グループの別法人であるコインベース・ヨーロッパも、マネーロンダリング(資金洗浄)防止体制の不備(3,000万件以上の取引監視漏れなど)により、2025年11月に2,150万ユーロの罰金処分を受けたばかりだ。EU(欧州連合)のMiCA(暗号資産市場規制)施行に伴い同地域での事業展開が拡大する中、単一の管轄区域に依存する運用リスクと、規制当局による厳格なコンプライアンス追求姿勢が改めて浮き彫りとなっている。

 

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