中国当局、詐欺師からビットコイン没収へ
中国・天津市第二中級人民法院は検察当局からの没収請求を受け、法的な取り立て処理に着手した。
対象となる暗号資産の規模は、現在の市場価値で50億ドル(約7,853億円以上)を超え、世界的な注目を集めている。事件の主謀者とされる銭志敏(Qian Zhimin)は、天津藍天格鋭電子科技有限公司を実質的に支配。2014年から2017年にかけて無許可で架空の投資商品を販売し、高利回りと元本保証を謳って資金を集め、その規模は403億元(約9,481.5億円)に達したという。
しかし、集めた資金の大部分は正当な事業には使われず、初期投資家への配当に充てる典型的なポンジ・スキームの維持や、自身の個人的な贅沢品、そして大量の暗号資産購入へと流用された。結果として10万2,000人を超える出資者が巻き込まれ、約200億元(約4,704億円)という極めて甚大な被害が発生した。
破綻が決定的となった2017年7月、銭は暗号資産ウォレットの入ったPCを手に中国を密出国し、偽名を用いて英国へ逃亡した。
差し押さえられた多様な暗号資産と巨額資産
主犯格の逃亡先である英国において、現地当局は調査を進め、銭が保有していた大量のデジタル資産や財産を押収・換金。今回、中国検察側が司法裁判所に没収を申し立てている主要な資産の明細は以下の通りである。
ビットコイン(BTC):約61,896枚
主要ハードフォーク系通貨:BCH、BTG、BSV(各約7万2700枚)
その他アルトコイン:DOGE(約7000万枚)、XRP(約360万枚)
実体財産:複数通貨の現金、宝石類、銀行預金、投資ポートフォリオなど
主犯の銭は英国においてマネーロンダリング(資金洗浄)等の罪を認め、2025年に禁錮11年8カ月の有罪判決を受けている。容疑者不在でも資産没収を認める中国の法制度に基づき、司法当局はこれら犯罪収益の法的没収と被害者救済への充当を目的として動きを強めている。
英高等法院の判断と適用法を巡る国際的対立
この件を一層複雑にしているのが、英国と中国の間で繰り広げられる所有権および国際私法上の争いだ。逃亡期間中にビットコインをはじめとする暗号資産の市場価値が急高騰したため、膨れ上がった評価益を誰が享受すべきかという点について法的な見解が分かれている。
英国高等法院は10月、被害者による請求権の判断には「英国法ではなく中国法を適用すべき」との決定を下した。これにより、英国政府が押収資産をそのまま保有し続ける可能性が高まったとされる一方、英国検察庁は「中国の補償手続きを通じて被害者が救済を受ける道がある」と説明している。
これに対し、被害者側の弁護団は決定を不服として控訴する意向を表明しており、司法判断の決着にはまだ時間がかかる見通しだ。
救済手続きの開始と今後の展望
天津の裁判所は、被害者や利害関係者が権利を主張するための登録・申請期間として6カ月間の公告期間を設定。被害者はWeChat(微信)内の専用ミニプログラム等を通じて手続きに参加することが可能となっている。
公告期間終了後に本格的な審理が開始される予定だが、手続きの開始=即座の資金返還を意味するわけではない。国際的な管轄権の壁や裁判の長期化が予想されるなか、押収された巨額のビットコインが最終的にどのように換金され、被害者へ分配されるのか、今後の法的手続きの推移に世界中の金融・司法関係者からの視線が集まっている。
























