ヴィタリック・ブテリン氏、AIによる仮想通貨の脅威を警告「性急なウォレット移行は不要」

ブテリン氏がAIによる仮想通貨の脅威を警告

暗号資産界のオピニオンリーダーであり、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、AI(人工知能)の急速な進化がもたらす暗号技術へのリスクについての見解を示した。

日本語訳:
今日、誰にも資金を新しいウォレットに急いで移すことをお勧めしません。でも、AI加速の数学が暗号学にもたらすリスクを真剣に受け止め、量子脆弱な暗号だけでなく、潜在的にAI脆弱な暗号へのエクスポージャーを最小限に…

同氏は、AIによる数学的進歩が従来のセキュリティ基盤に影響を与える可能性を指摘する一方で、保有者に向けて性急なウォレット移行(送金)を行わないよう強く注意を促している。

AIによる暗号技術への深刻なリスク

近年のAI技術の発展は、人間が何十年もかけて見落としてきた数学的な近道(ショートカット)やブレイクスルーを短期間で発見する可能性を秘めている。ブテリン氏は、ビットコイン(Bitcoin/BTC)やイーサリアム(Ethereum/ETH)などの多くの暗号資産ウォレットを保護している楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)のような複雑な代数構造が、AIを活用した解析によって脅かされるリスクを深刻に捉えるべきだと主張している。

また、量子コンピューター時代への備えとして有力視されてきた格子暗号(Lattice-based cryptography)システム(ML-DSAや完全準同型暗号など)についても、今後のAIの進歩によってセキュリティが弱体化する恐れがあると言及されている。こうした動向の背景には、OpenAIが内部モデルによる数学的成果の発表を行うなど、自動化された研究が急速に進展している実態がある。

バンカーモードの提言と専門家の見解

イーサリアム財団の研究者であるジャスティン・ドレイク(Justin Drake)氏は、最悪の場合、数カ月以内にECDSAが侵害される恐れがあるとして、大口保有者や業界全体に対して防衛態勢(バンカーモード)への備えを呼びかけた。彼は、公開鍵がハッシュ値の背後に隠された新しいアドレスへ慎重に資金を移動することを推奨していた。

日本語訳:
本日、私はブロックチェーン業界に対し、冷静に「バンカーモード」への準備を始めるよう呼びかけます。私個人の推奨は、資産の制御された大量移行を新たなアドレスへ…

しかし、この主張に対しては反対の声も上がっています。コインベースの暗号技術部門を統括するイェフダ・リンデル(Yehuda Lindell)氏は、楕円曲線暗号の根底にある前提が急激に崩壊するという根拠や証拠は存在しないと反論。暗号技術者たちの間でも、今回の脅威の深刻度や緊急性については慎重な議論が続いている。

ブテリン氏が警鐘を鳴らすパニック的な移行の罠

ドレイク氏らが一部で推奨する動きに対し、ブテリン氏はAIによる脅威自体は真剣に受け止めるべきとしながらも、「今日すぐに新しいウォレットへ資金を移動しようと慌てるべきではない」と警鐘を鳴らしている。

彼は、十分な準備がないまま慌ただしくセキュリティ・アップグレードやウォレット移行を行うと、設定ミスや不適切な手順によって甚大な経済的損失を招く恐れがあると指摘。自身の過去の経験としても、ハッキング被害そのものよりも、移行時のトラブルや失敗によって失った資金の方が大きかったと語っており、パニックに陥った拙速な行動を戒めている。

今後の対策と求められるアプローチ

この状況を受け、ブロックチェーン開発や運用の現場では、変化するリスクに対処するための具体的な対策が見直されている。

ハッシュベース暗号の優先:
イーサリアムの簡素化されたロードマップでは、AIや格子暗号に対する脆弱性を避けるため、可能な限り「ハッシュベース」の署名方式(WOTSやSPHINCS-など)を優先する方針が示されている。
慎重なウォレット運用:
資金を移動させる必要が生じた場合でも、慌ただしい緊急対応ではなく、公開鍵の露出を防ぎつつ着実かつ慎重な準備を進めることが重要。
プライバシーとオフチェーンの活用:
プライバシー保護のプロトコルにおいては、暗号化された情報をオンチェーンに直接記録することを避け、第三者システムを介したオフチェーン送信を活用することが推奨されている。

AI技術の進化は暗号セキュリティの前提に新たな問いを投げかけているが、過剰な焦りや性急な行動はかえって資産を危険にさらす原因となる。暗号資産の利用者や開発者は、過度なパニックを避けつつ、堅実で長期的な視点に基づいたセキュリティ対策を講じることが求められている。

 

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