TetherとShigaがアフリカ・GCC諸国で自己管理型ウォレット計画を始動
デジタル資産業界の最大手であるTether(テザー)社は、フィンテック企業のShigaとの提携を新たに発表した。
この計画では、アフリカおよびGCC(湾岸協力会議)諸国の個人、企業、機関投資家を対象に、テザー(Tether/USDT)、ビットコイン(Bitcoin/BTC)、テザーゴールド(Tether Gold/XAUT)に対応したセルフカストディ型=自己管理型の金融サービスが展開される。両社の取り組みは、2025年6月にTetherがShiga Digital(シガ・デジタル)へ行った戦略的出資を起点とする関係をさらに発展させたものであり、同地域におけるオープンで強固な金融インフラの構築を目指している。
高まる送金コストの課題とセルフカストディの重要性
Shigaが国境を越えた送金や資産管理に注力する背景には、対象地域における根深い経済的課題がある。
世界銀行の報告によると、サブサハラ・アフリカ(サハラ以南のアフリカ)への送金コストは2025年第3四半期時点で平均8.46%に達しており、調査対象地域の中で最も高い水準を記録。また、多くの市場では通貨の変動が人々の購買力を低下させ続けている。
従来のデジタル資産プラットフォームは利便性を提供する一方で、ユーザーの資金を第三者が管理するカストディ型に依存しているケースが多く、セキュリティや管理権の面で新たな課題を生んでいた。
こうした中、Tetherのパオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)CEO(最高経営責任者)は、同社のオープンソースの次世代ウォレット開発ツールキットWDK(Wallet Development Kit:ウォレット・デベロップメント・キット)を活用することで、ユーザーが自身の資産を完全に自ら管理できる製品を企業が構築できるようになると強調している。
個人・法人向けウォレット「ENTA」の展開
新たな計画の下で提供される個人・法人向けサービスENTAは、個人、富裕層、および企業をターゲットにしている。ユーザーは現地通貨、米ドル、ビットコインを使用して資金を入金し、セルフカストディ型ウォレット内でUSDT、ビットコイン、XAUTを保有・送金することが可能だ。
入金手段とウォレット内の保有資産はそれぞれ明確な役割を担っており、例えば現地通貨で入金した場合、それはデジタル資産を利用するための原資として機能し、ENTAが現地通貨そのものをウォレット内で保有するわけではない。この3つの資産を扱うアプローチにより、米ドル連動型トークン、ビットコイン、トークン化された金を組み合わせた強固な資産管理が可能となる。
なお、TetherとShigaはこれまでに、Opera(オペラ)のMiniPay(ミニペイ)など、アフリカ市場向けにUSDTやトークン化された金へのアクセスを拡張する取り組みも進めている。
機関投資家向けプラットフォーム「Pulse」の柔軟なインフラ
一方で、銀行やフィンテック企業などの機関投資家向けには、決済ルートや財務管理業務、決済フローに合わせて最適化可能なプラットフォームPulseが提供される。
Shigaのアビオラ・ショグベニ(Abiola Shogbeni)CEOが述べるように、すべてのクライアントに画一的なウォレットインターフェースを提供するのではなく、各機関の業務特性に合わせて製品が調整される。
機関投資家は、Shigaが管理するWDKインフラを利用する方法と、秘密鍵、データ、資金の管理権を保持したまま自社の環境で運用する方法の2つから導入形態を選択できる。このモデルは、データの保管場所や取引の署名システムに関する厳格な要件を持つ大規模組織の運用ニーズに対応。また、湾岸地域においては、XAUTがADGM(アブダビ・グローバル・マーケット)で「承認済み現物コモディティ」として認定を受けており、規制面での環境整備も進みつつある。
地域における規制対応と今後の展望
Shigaのダミ・エトミ(Dami Etomi)COO(Chief Operating Officer:日本語で最高執行責任者)は、ナイジェリアにおける「デジタル資産仲介ライセンス」の承認プロセスが最終段階にあることを明らかにしている。
承認が得られれば、国内の個人や機関投資家に対し、規制に準拠したデジタル資産の売買、仲介、カストディサービスを提供することが可能となる。さらに、同社は外部クライアント向けの基盤上でENTAを運用し、将来のパートナーに向けて実際の稼働事例を提示していく方針だ。
今回の発表はアフリカおよびGCC諸国を対象としており、仲介業者を排除して人々の資金管理の自由度を高めるTetherのミッションを大きく前進させるものだ。モジュール式で拡張性の高いWDK by Tetherを基盤に、消費者向け製品から金融機関向けプラットフォームまでを網羅する両社の取り組みは、同地域におけるセルフカストディ型金融の実用的なエコシステムを形作ろうとしている。
























