IBMがトークン化預金向けSwift Ledgerリンクのベータ版公開
IBMは、自社の機関投資家向けデジタル資産プラットフォームDigital Asset Haven(デジタル・アセット・ヘイブン)において、24時間365日の稼働を可能にする新たな機能を発表した。
今回、Swift(国際銀行間通信協会)のブロックチェーンベースの共有台帳へ接続するベータ版リンクの公開と、ISO 20022メッセージング・アダプターの導入が行われたことが明らかになっている。これにより、金融機関は従来の決済メッセージやコンプライアンス体制を維持しながら、トークン化預金の円滑な移動を実現できるようになる。
ISO 20022がもたらすブロックチェーン活用のハードル低減
金融業界において、ブロックチェーン技術の導入には既存のメッセージ規格や厳格なコンプライアンス管理体制をゼロから作り直す必要が生じるという大きなコストと手間の壁が存在していた。
しかし、今回のIBMとSwiftの連携により、業界標準であるISO 20022のメッセージング・アダプター(ベータ版)を介した取引指示が可能となった。
銀行などの規制対象機関は、ブロックチェーン特有の複雑なワークフローを個別に構築する必要がなくなり、日頃から使い慣れた決済フォーマットを利用してSwift台帳上のトークン化預金取引を動かすことができる。IBMのメインネットであるIBM ZおよびLinuxONE(リナックス・ワン)担当ゼネラル・マネージャーであるトム・マクファーソン(Tom McPherson)氏は、金融業界が従来の資産とトークン化資産が並行して流通する新たな時代へ突入しつつあると指摘している。
既存インフラと連携するオーケストレーション層としてのSwift台帳
重要なポイントとして、Swiftは従来の基盤銀行システムをブロックチェーン決済ネットワークに完全に置き換えるわけではない。Swiftの共有台帳は、銀行とトークン化預金システムの間を仲介するオーケストレーション層(調整・連携の層)として機能する。
実際の最終決済は依然として既存の銀行インフラや決済レールを通じて処理される仕組みだが、この共有台帳の活用により、参加銀行は曜日や時間を問わず24時間体制でのデジタル資産移動が可能になる。すでにHSBCやスタンダードチャータード(Standard Chartered)、DBS、シティ(Citi)といった大手金融機関がこのインフラを利用して実際のクロスボーダー(国境を越える)取引や週末決済の実証を完了させており、概念実証の段階から実際の運用フェーズへと移行しつつある。
オンプレミス環境への対応とセキュリティ強化
さらにIBMは、パブリッククラウド環境への依存を懸念する金融機関や政府機関などの規制対象組織に向けて、Digital Asset Havenのオンプレミス版ベータ展開も発表した。
この新しい展開モデルでは、各組織のデータセンター内にあるIBM ZまたはLinuxONEのインフラ上でプラットフォームが稼働する。プラットフォーム層や暗号鍵管理を自社環境内で完結させることが可能であり、秘密鍵の保護にはIBM Crypto Expressハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)が活用される。SaaS版やハイブリッド版と同一のAPIやアーキテクチャ、運用ワークフローを採用しているため、展開モデルを移行する際にも再開発の規模を最小限に抑えられる設計となっている。
機関投資家向けデジタル資産の今後の展望
Swiftが有する200以上の市場、約12,500の金融機関を結ぶネットワークと、IBMのセキュアなオンプレミス技術、そしてISO 20022による親和性の高いメッセージング環境の組み合わせは、個人向けの暗号資産とは異なるアプローチで機関投資家向けのトークン化が発展していることを示している。
商業銀行は、自社のバランスシートや顧客との信頼関係、コンプライアンス体制を損なうことなく、プログラム可能な取引フローや常時稼働といったブロックチェーンのメリットを取り入れることが可能になった。今後は、個別のネットワーク間で流動性が分断されることなく、デジタルによる指示から最終的な決済に至るまでの全プロセスにおいて、いかに規模を拡大(スケーラビリティを確保)し真の24時間365日稼働を実現していくかが長期的な課題となる。
























