香港金融管理局がデジタル資産および決済インフラの刷新へ
香港の金融当局によるデジタル資産および決済インフラの刷新に向けた動きが加速しています。HKMA(香港金融管理局)とSFC(香港証券先物委員会)は、銀行間決済や市場インフラの高度化を目指し、新たな中核施策を相次いで打ち出した。
HKMAは、Project EnsembleTX(プロジェクト・アンサンブルTX)の一環として、2026年末までに銀行間決済向けのホールセール型中央銀行デジタル通貨(wCBDC)を導入する方針を固めた。この次世代デジタル通貨は、金融機関同士の間で行われるトークン化預金取引の24時間決済を支える基盤として期待されているものである。
これまでの実証実験では、香港の従来のRTGS(即時グロス決済)システムを利用していたが、同システムは平日の営業時間内しか稼働しないという物理的な制約があった。銀行間の残高精算や顧客代理の決済業務を円滑に進める上で、この時間的制限は大きな課題となっていた。しかし、金融機関同士の取引に特化したホールセール型CBDCの導入により、時間や曜日に縛られないシームレスな連続決済が実現される見込みだ。
さらに、このwCBDCの活用領域は銀行間送金に留まらない。HKEX(香港取引所)で成立した時間外デリバティブ取引の決済インフラとしても採用が予定されており、2026年中には実資金を用いた取引テストが計画されている。これにより、通常の取引時間外に行われる取引についても、リアルタイムかつ安全な決済が可能になる。
決済インフラの完全オンチェーン化とSFCの新戦略
HKMAは決済システムの抜本的な近代化も進めており、運営する債券決済プラットフォームCMU(Central Moneymarkets Unit:中央マネー・マーケット・ユニット)を24時間365日稼働するブロックチェーンベースのシステムへ刷新する計画だ。
HKMAのエディ・ユエ(余偉文:Eddie YUE)総裁によると、新プラットフォームはデジタル香港ドルやCBDCへの対応を視野に入れているほか、トークン化預金や規制に準拠したステーブルコインの決済可否についても検証が進められているという。
一方のSFCは、香港初の5カ年計画および2026年施政方針演説を受けた新たな戦略を公表。SFCは中国本土と国際市場との連携強化を掲げ、短期から中長期にわたる規制枠組みの策定を進めている。特に、長期的にはトークン化された金(ゴールド)をはじめとするRWA(現実資産)の投資商品を対象とした包括的な規制整備に注力する方針だ。
また、市場の安全性を高めるため、SFCは独自の市場監視ツールCrypTech(クリプテック)を活用した不審取引の検知や、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化、段階的なAI監視システムの導入を表明している。
ステーブルコインの商用化と商品拡充の展開
香港におけるステーブルコインの活用も本格化しており、HKMAは2026年4月に初の発行ライセンスを交付し、Anchorpoint(アンカーポイント)社やHSBCがその動向をリードしている。Anchorpoint社が発行する香港ドル連動型ステーブルコイン「HKDAP」は先行して運用が開始されており、スタンダードチャータード銀行(Standard Chartered Bank)を最初の発行銀行として、今後はトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)の決済への応用が予定されている。
加えて、HKEXの市場部門責任者であるグレゴリー・ユー(余學勤:Gregory Yu)氏は、来年(2027年)初頭に人民元建て金先物を上場させる方針を明らかにした。これは、国有企業が試験運用を開始した金の中央清算システムを土台としており、オフショア人民元建ての貴金属やコモディティ市場の厚みを増すための重要な布石となる。
このように、ホールセール型CBDCの実装、決済システムのオンチェーン化、そしてステーブルコインやトークン化資産を取り巻く法制度・インフラの整備が一体となって進むことで、香港は国際的なデジタル金融の中心地としての地位をさらに確実なものにしようとしている。























